②不動産売却

不動産売却の税金|計算・特例・確定申告の確認点

不動産を売却したときに思ったよりも手元に残るお金が少なかった、という話を耳にしたことはないでしょうか。その大きな要因となるのが「税金」です。

売却益にかかる所得税・住民税のほか、契約書の印紙税や事業用建物の消費税など、取引の内容によって確認すべき税金が異なります。売却代金と手取り額を分け、使える特例と申告の要否を早めに確認しましょう。

この記事は、日本国内の土地・建物を売却する個人の方向けに、譲渡所得の計算、主な特例、申告の流れをまとめたものです。税率の例は2026年分を前提とし、2027年からの特別所得税の変更も補足します。法人や非居住者の取扱い、個別の申告判断は税理士・税務署へご確認ください。

監修者
宮原海斗

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹

横田大樹(株式会社土地未来)

不動産売却にかかる税金とは?

まずは、不動産売却時にかかる税金と、売却益との関係を整理します。

不動産売却時に発生する主な税金

土地・建物の課税譲渡所得には、給与などとは分けて所得税と住民税がかかります。この記事では、これらをまとめて「譲渡所得にかかる税金」と説明します。2026年分は、所得税額を基礎として復興特別所得税も計算します。

土地の売却は消費税が非課税ですが、賃貸していた建物などの売却は、個人であっても消費税の課税対象となります。実際の納税義務は課税売上高やインボイス登録等で判定するため、「個人の投資用物件なら消費税はかからない」とは限りません。紙で作成する不動産売買契約書の印紙税も別に確認します。

所有期間、居住・賃貸の状況、取得費、適用する特例によって税額が変わります。売却価格だけでは判断できません。

売却益と税金の関係

譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を引いて計算します。さらに、要件を満たす特別控除があれば差し引き、課税される譲渡所得を求めます。購入額より高く売れたかどうかだけで判断せず、建物の減価償却も反映します。

譲渡損失となる場合、その取引の譲渡益に対する所得税・住民税は生じません。ただし、契約書の印紙税や事業用建物の消費税などは別の仕組みで判定するため、「損失なら税金が一切かからない」という意味ではありません。

土地・建物の譲渡損失は、他の土地・建物の譲渡所得から控除できますが、給与所得などとの損益通算は原則できません。一定のマイホームの売却には例外となる特例があるため、後述の条件と申告手続きを確認します。

譲渡所得税の計算方法とポイント

譲渡所得から適用可能な特別控除を差し引いた課税譲渡所得に、所有期間に応じた税率を適用します。ここでは基本的な計算を紹介します。

譲渡所得の基本計算式

特別控除前の譲渡所得は、次の式で計算します。

譲渡所得=譲渡価格−(取得費+譲渡費用)

課税譲渡所得は、この金額から適用できる特別控除額を差し引いて求めます。取得費や譲渡費用を実際の資料で確認し、特例の要件を満たすかどうかを別に判断します。

取得費とは?

取得費には購入代金・建築代金や購入時の仲介手数料、設備費・改良費などが含まれます。非業務用不動産の登録免許税や不動産取得税なども対象になりますが、業務用として必要経費になる費用や、すでに経費に算入した費用を二重に加えることはできません。修繕費と資本的支出も区別します。

建物の取得費は、購入代金等から減価償却費相当額を差し引いて計算します。自宅などの非業務用建物も対象で、業務用とは計算方法が異なります。土地は減価償却しません。取得費が不明な場合などには売却代金の5%を概算取得費とする取扱いもありますが、まず契約書等の資料を確認しましょう。

譲渡費用とは?

譲渡費用は、その土地・建物を売るために直接かかった費用です。売却時の仲介手数料、売主が負担した契約書の印紙税、売却のための測量費、土地を売るための建物取壊し費用、貸家を売るための立退料などが該当します。

同じ名称の支出でも、売却との直接の関係によって扱いが変わります。修繕費や固定資産税などの維持管理費は譲渡費用に含めず、領収書と支出目的を確認して区分します。

所有期間による税率の違い

売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年以下なら短期譲渡所得、5年を超えれば長期譲渡所得です。以下は、居住用の軽減税率などを使わない2026年分の基本税率です。

  • 短期譲渡所得:所得税30%+住民税9%+復興特別所得税(所得税額の2.1%)。合計39.63%。
  • 長期譲渡所得:所得税15%+住民税5%+復興特別所得税(所得税額の2.1%)。合計20.315%。

売却日までに満5年が経過していても、その年の1月1日時点で5年以下なら短期扱いです。2027年1月1日以後に生ずる所得については、防衛特別所得税が所得税額の1%、復興特別所得税が1.1%となり、両者の合計は2.1%です。売却時期は税率だけでなく、維持費や売却条件も含めて検討しましょう。

実際の税金シミュレーション

2026年に3,000万円で売却し、同年1月1日時点の所有期間が5年を超えているとします。建物の減価償却を反映した取得費が2,000万円、譲渡費用が50万円で、特別控除・軽減税率を使わない場合の概算です。

譲渡所得 = 3,000万円 -(2,000万円 + 50万円)= 950万円
この例では特別控除がないため、課税長期譲渡所得も950万円です。

所得控除・税額控除等による個別の調整を考慮しない単純計算では、次のとおりです。

  • 所得税:950万円 × 15% = 142.5万円
  • 復興特別所得税:142万5,000円 × 2.1% = 2万9,925円
  • 住民税:950万円 × 5% = 47.5万円

合計は約193万円です。これは申告・納付時の端数処理等を反映する前の概算で、実際の納税額とは異なることがあります。

マイホームの3,000万円特別控除などを利用できる場合は計算が変わります。控除によって納税額がゼロとなる場合でも、特例のための確定申告が必要です。

不動産売却時に活用できる節税対策

主な特例の概要を紹介します。どの制度も条件を満たすことが必要で、併用できない組合せもあります。売却・解体・買い換えの前に、適用条件と申告書類を確認しましょう。

3,000万円特別控除の特例

自分が住むマイホームを売ったときなどに、一定の条件で譲渡所得から最高3,000万円を差し引く制度です。税額そのものから3,000万円を引く制度ではありません。

所有期間の長短は問いませんが、自分が住んでいる家屋、または住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家屋などが対象です。「売却年の1月1日に住んでいたこと」が一律の条件ではありません。親子・夫婦等への売却の除外、前年・前々年の特例利用、解体後の土地の期限なども確認します。

この控除を使うには確定申告が必要です。住宅ローン控除とは入居年や売却年の関係によって併用できないため、買い換え先の住宅ローン控除も含めて比較します。

10年超所有の軽減税率の特例

国内のマイホームを売り、売却年の1月1日時点で家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えている場合などに利用できる軽減税率です。「10年以上」ではなく「10年超」で判定します。

要件を満たせば、マイホームの3,000万円特別控除と併用できます。控除後の課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は所得税10%、超える部分は15%となり、別に住民税と特別所得税を計算します。前年・前々年の利用や他の特例との併用制限も確認してください。

空き家売却時の特例

被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地等を相続した人が、一定の条件で売る場合の特例です。1981年5月31日以前の建築で区分所有登記がないこと、相続後に居住・賃貸・事業利用していないことなどが必要です。老人ホーム入所等には別途条件があります。控除は最高3,000万円ですが、2024年以後の売却で対象家屋・敷地等を取得した相続人が3人以上の場合は最高2,000万円です。

2027年12月31日まで、かつ相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が対象です。売却代金1億円以下(他の相続人の売却分等も合算して判定)、耐震性または全部取壊し、買主との関係などの条件があります。2024年以後は売却翌年2月15日までに耐震改修・全部取壊しを行う一定の場合も対象です。取得費加算との同一資産での併用はできず、確認書等を添えた申告が必要です。

関連記事:空き家の売却方法とは?売却する際の注意点も解説

買い替え特例の活用

一定のマイホームを買い換える場合に、譲渡益への課税を将来へ繰り延べる制度です。税金が免除されるわけではありません。2027年12月31日までの売却で、居住期間10年以上、売却年の1月1日時点の所有期間が家屋・敷地ともに10年超、売却代金1億円以下などが条件です。新居の取得・入居期限、面積等の条件があり、3,000万円特別控除などとは選択になります。

譲渡損失が出た場合の特例

給与などとの損益通算・翌年以後3年内の繰越控除には、一定のマイホームの特例が必要です。買い換えの場合と、売却代金が住宅ローン残高を下回る場合では条件が異なります。いずれも2027年12月31日までの売却が対象で、売却年の1月1日時点の所有期間5年超、所定の住宅ローン・申告等の要件があります。残債型は契約前日のローン残高と売却代金の差額が限度となり、繰越控除は合計所得金額3,000万円以下の年に限られるなどの制限があります。

相続した不動産の売却と税金

相続した不動産では、原則として被相続人の取得費と取得時期を引き継ぎます。相続税評価額をそのまま取得費にするものではありません。建物の減価償却や相続税の取得費加算などを確認して譲渡所得を計算します。

関連記事:土地相続をしたくない!相続放棄の方法を紹介

相続税の取得費加算の特例

相続や遺贈で取得した不動産を一定期間内に売る場合、本人に課された相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。

加算額は売却した資産に対応する相続税額を所定の計算で求めます。相続税の全額を自由に加算できるわけではなく、加算前の譲渡益が上限です。相続税を課されていない人には適用されません。

対象期間は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。一般に「相続開始から3年10か月以内」と案内されますが、個別の申告期限を基準に確認し、計算明細書等を添えて申告します。

関連記事:土地の相続に関する完全ガイド|手続き・費用・税金・注意点を徹底解説

相続した不動産の売却シミュレーション

相続した土地を4,000万円で売却し、被相続人から引き継ぐ取得費と譲渡費用の合計が3,000万円なら、取得費加算前の譲渡所得は1,000万円です。

特例の要件を満たし、所定の計算による相続税の加算額が200万円だった場合、取得費加算後の譲渡所得は800万円になります。加算額は任意に決めるものではなく、相続税の申告内容等から計算します。

同じ資産について、相続税の取得費加算と相続空き家の特別控除は併用できません。期限・税額・必要書類を税理士に確認し、適用可能な制度を比較しましょう。

関連記事:相続した土地は3年以内に売却するべき?節税方法や売却の注意点を徹底解説

確定申告の流れと注意点

売却後は、翌年の申告に向けて譲渡所得と適用する特例を確認します。売却した人全員に一律の申告義務があるわけではなく、他の所得や控除、申告不要制度の条件も関係します。

確定申告が必要なケース

課税される譲渡所得がある場合は、原則として確定申告が必要です。ただし、所得控除や給与所得者の申告不要制度などによって異なるため、売却益の有無だけで判断せず、税務署・税理士に確認してください。所得税の申告が不要でも、住民税の申告は別に確認します。

マイホームの3,000万円特別控除などを使って税額がゼロとなる場合も、特例を受けるための確定申告が必要です。譲渡損失の損益通算・繰越控除を使う場合も、必要書類と期限内申告・継続申告の条件を確認します。

申告手続きの流れ

申告手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 書類準備:購入時・売却時の契約書、取得費・譲渡費用の領収書、登記情報などを確認。相続税の取得費加算や空き家特例を使う場合は、それぞれの計算明細書・確認書等も準備
  2. 申告書の作成:譲渡所得の内訳書と申告書第三表(分離課税用)などを作成。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、入力内容に応じて必要な書類を作成できます
  3. 提出・納付:所得税等の申告期間は原則翌年2月16日〜3月15日、納付期限は原則3月15日。土日・祝日や災害による延長等を含め、その年の国税庁の案内を確認します。提出と納付は別の手続きです

関連記事:不動産を売却する際に必要な書類と準備するタイミングを解説

よくある失敗と対策

次に、確定申告で確認しておきたい点を紹介します。

  • 取得費・譲渡費用の確認漏れ:契約書や領収書を確認し、改良費と修繕費を区分。建物の減価償却や、過去に経費とした金額との二重計上にも注意
  • 特例の誤適用:適用要件を満たさないのに3,000万円控除などを使ってしまうと、後で追徴課税のリスク
  • 申告・納付の遅れ:無申告加算税や延滞税が生じることがあります。期限を過ぎた場合は放置せず、税務署・税理士へ相談

【FAQ】不動産売却の税金に関するよくある質問

次に、不動産売却時の税金に関して寄せられることの多い質問と回答を紹介します。

不動産の売却に消費税はかかる?

土地の売却は消費税が非課税です。個人が事業と関係なく自宅を売る場合も消費税の対象外ですが、住宅賃貸用・店舗賃貸用の建物の売却は個人でも課税対象となります。住宅の家賃が非課税であることと、建物売却時の扱いは別です。実際の納税義務は、基準期間・特定期間の課税売上高、インボイス登録、課税事業者の選択などを確認して判定します。

譲渡所得が年収に影響する?

土地・建物の譲渡所得は、給与などと分けて税額を計算する分離課税です。ただし、各種控除の所得要件などを判定する「合計所得金額」には関係します。売却代金そのものが給与収入に加わるわけではなく、制度ごとの判定方法を税理士や自治体に確認してください。

確定申告しないとどうなる?

申告義務があるのに申告・納付しなかった場合は、無申告加算税や延滞税が生じることがあります。3,000万円特別控除なども申告手続きが必要です。未申告や期限超過に気付いたら、適用できる手続きと必要書類を税務署・税理士に確認しましょう。

【まとめ】不動産売却にかかる税金

不動産売却にかかる税金は、取得費・譲渡費用、売却年の1月1日時点の所有期間、利用状況、特例の適用によって変わります。

自宅の3,000万円特別控除、10年超所有の軽減税率、買換えや譲渡損失の特例は、それぞれ条件と併用制限が異なります。売却や解体の前に、期限・必要書類を確認しましょう。

相続した不動産は、被相続人の取得費・取得時期を引き継ぐ点が基本です。取得費加算や相続空き家の控除は、相続税の課税状況、建物の状態、売却期限などに応じて判断します。

土地未来では、売却方法や不動産の状況整理などのご相談を承ります。個別の税額計算、特例の適用判断、税務申告は税理士・税務署へ確認し、役割を分けて準備を進めましょう。

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