④不動産相続

土地を相続したくないときの選択肢|相続放棄・売却・国庫帰属

遠方にある土地や、使う予定のない実家の土地を、相続するか迷うことがあります。まずは土地の状況だけでなく、預貯金や借入金など相続財産の全体と、手続きの期限を確認しましょう。

「管理を続けるのが難しい」「税金や草刈りの費用が気になる」「家族で方針が決まらない」といった事情によって、検討する方法は異なります。

相続しないための相続放棄と、土地を引き継いでから売却・活用・国庫帰属を検討する方法は、要件や費用が異なります。土地だけを選んで相続放棄することはできません。

この記事では、相続放棄の基本と、土地を引き継ぐ場合の負担・選択肢を整理します。放棄を検討している間に財産を処分すると判断に影響する場合があるため、先に家庭裁判所や弁護士等へ手続きと期限を確認してください。

監修者
宮原海斗

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹

横田大樹(株式会社土地未来)

土地だけを選んで相続放棄できる?

結論から言うと、土地を含めた財産を相続しないことを選択する「相続放棄」という手続きは法律で認められています。

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の相続について、初めから相続人ではなかったものとみなされる手続きです。家庭裁判所に申述し、預貯金・不動産などの資産も借金などの負債も相続しないことになります。ただし、放棄した時点で相続財産を現に占有している場合は、相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで、その財産を保存する義務が残ります(民法第940条)。「放棄すれば管理に関する責任がすべてなくなる」とは限りません。

相続放棄では、特定の財産だけを選ぶことはできません。「預貯金は相続し、土地だけを放棄する」という選択はできないため、資産と負債の全体を調べて判断する必要があります。

関連記事:相続した土地の売却時期|所有期間・税金・特例の確認点

土地を引き継ぐ場合に検討できること

土地を引き継ぐかは、利用の見込み、売却価格の目安、管理費用、相続する財産・債務全体を確認して判断します。価値がある・ないと決めつけず、資料や現地の状況を整理しましょう。

資産として保有する

土地は保有・利用・売却を検討できる資産ですが、市場価格や換金のしやすさは物件ごとに異なります。地盤・擁壁・境界等の状態や、保有中に必要となる費用も確認します。土地を持つだけで資産価値や収益が安定するとは限りません。

取得時の税金・費用を確認する

相続による取得では不動産取得税は課税されませんが、相続税、登記の登録免許税、証明書代や専門家へ依頼する報酬等は別に確認します。相続による所有権移転登記の登録免許税は原則として課税標準となる不動産の価額の0.4%で、一定の土地には免税措置もあります。取得の方法・財産の状況によって負担が異なり、相続なら必ず低い総費用で済むとはいえません。

将来の利用計画や周辺環境を確認する

周辺の開発や交通整備の計画がある場合は、公表資料で予定や対象範囲を確認します。計画があっても、土地の価格が上がることを保証するものではありません。保有を続ける間の費用や資金需要、計画変更の可能性も含めて判断しましょう。

自宅や賃貸などに活用する

自宅、駐車場、賃貸用の施設などへの活用を考える場合は、用途地域・接道等の制限、需要、工事費、維持管理費を確認します。初期費用や空き区画等のリスクを含めた収支を考え、保有・売却した場合と比較してください。

自分で使う庭や菜園等を検討する場合も、土地の区分や利用制限、利用に必要な整備、近隣への影響を確認します。所有していればどの用途にも自由に使えるというわけではありません。

土地の保有に伴う負担と確認事項

引き継いだ後の負担を見込むために、税金・管理作業・将来の引継ぎを整理します。必要な負担は土地の状態や所在地によって異なります。

固定資産税などの負担を確認する

土地を保有すると、利用や収益の有無にかかわらず、固定資産税などの負担が生じることがあります。固定資産税は原則として毎年1月1日を基準に課税されるため、「相続した瞬間から必ず課税される」という仕組みではありません。都市計画税の対象区域、免税点、軽減措置なども関係するので、納税通知書や土地の所在地の自治体で確認しましょう。

関連記事:土地の相続|手続き・分け方・費用と税金の確認点

立地・形状・法令によって利用に制限がある

立地、接道、形状、傾斜、法令上の制限などによっては、建築や賃貸が難しくなることがあります。不整形地や遠方の土地でも一律に活用・売却できないわけではありません。現地の状況、需要、整備費用を確認し、維持費と見込める収益・売却代金を比較して検討しましょう。

維持管理の方法と費用を決める

土地を使っていなくても、草刈り、樹木の手入れ、境界や擁壁の状況確認などが必要になることがあります。遠方の場合は現地へ行く交通費や管理委託費も見込んでおきましょう。必要な作業は土地の状態によって異なるため、近隣への影響も含めて定期的に状況を確認することが大切です。

将来の引継ぎを考える

土地を引き継いだ後に活用や処分の方針が決まらないと、管理や費用の課題が次の世代にも残ることがあります。保有を続ける場合も、誰が管理するか、費用をどう負担するか、将来どう引き継ぐかを家族で話し合っておきましょう。

関連記事:相続不動産の相談先|専門家の役割・期限・準備資料

相続しない場合・引き継いだ後の選択肢

相続放棄、相続後の売却、国庫帰属、生前の所有者による売却は、行う人や時期、要件が異なります。使える方法と費用を比較し、相続放棄を検討している場合は処分を先に進めないよう注意してください。

相続放棄

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述します。原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。財産調査が終わらず判断できない場合は、期間内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります。土地だけの放棄はできず、現に占有する財産には引渡しまでの保存義務が残る場合があります。また、放棄によって次の順位の親族が相続人になることもあるため、関係者への説明も考えておきましょう。

売却

土地を相続した上で売却する方法もあります。ただし、相続財産を売却・処分すると、単純承認をしたものとみなされ、相続放棄ができなくなる場合があります。放棄を検討中の方は、売却契約や財産の処分をする前に、弁護士などへ確認してください。売却を選ぶ場合は、不動産会社に価格や需要、必要な費用を確認し、管理を続ける場合と比較しましょう。買い手や条件によっては売却できないこともあります。

自治体に寄付・売却

自治体への寄付や売却は、土地の公共利用の必要性や受入条件などによって判断されます。不要になった土地を必ず引き取ってもらえる制度ではありません。希望する場合は、土地の所在地の自治体に、受入れの可否と条件を確認しましょう。

親が健在のうちに売却する

相続が発生する前に、土地の所有者本人の意向を確認し、ご家族で今後の利用や売却について話し合う方法もあります。生前売却を選ぶかどうかは、本人の住まい、生活資金、税金、売却費用などを踏まえて判断します。家族の希望だけで所有者の土地を売却することはできないため、本人の意思と必要な手続きを確認して進めましょう。

相続土地国庫帰属制度を活用する

相続土地国庫帰属制度は、2023年4月27日に始まりました。相続・相続人への遺贈で取得した土地について、審査・承認と負担金の納付を経て国へ所有権を移す制度です。相続放棄とは異なり、他の相続財産まで手放す必要はありません。共有地は、対象となる相続等で持分を取得した人を含め、共有者全員で共同申請します。
申請時の審査手数料は土地1筆につき14,000円。承認後の負担金は10年分の標準的な管理費用を考慮するもので、原則20万円を基本としつつ、土地の種類・場所・面積等で算定が異なります。

申請できない土地や、審査で承認されない土地があります。次は主な例です。細かな要件は法務局で確認してください。

  • 建物がある土地、または通常の管理・処分を妨げる工作物などがある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 通路など、他人による使用が予定される土地として法令の要件に該当する土地
  • 法令の基準を超える特定有害物質により土壌が汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地、または所有権の範囲に争いがある土地
  • 一定の崖があり通常の管理に過分の費用・労力を要するなど、法令の不承認要件に該当する土地

解体や境界確認など、申請前の準備にも費用がかかる場合があります。審査手数料は、取下げや却下・不承認でも返還されません。承認後は負担金の額の通知を受けた日の翌日から30日以内に納付し、納付時に国庫へ帰属します。期限内に納付しなければ承認は失効します。
申請や事前相談だけで引取りが確約されるわけではありません。土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局へ、条件・資料・見込まれる費用を確認してから他の方法と比較しましょう。

相談内容に応じて専門家と確認する

相続放棄を選ぶか、土地を引き継いで利用・売却等を考えるかは、相続財産と債務の全体、手続きの期限、土地の状況を踏まえて判断します。

相続放棄や紛争は弁護士・家庭裁判所の手続案内、登記は司法書士・法務局、税金は税理士・税務署等、売却価格や活用方法は不動産会社へ、相談内容を整理して確認しましょう。

確認日・参考資料

公的資料との照合日:2026年9月26日。一般的な制度の説明です。個別の事情に応じた手続き・判断は、家庭裁判所や弁護士などに確認してください。

取得時の税金・国庫帰属の追加資料

2026年9月27日確認。取得時の課税、申請者、費用・納付期限と相談の扱いを確認した資料です。

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