親が亡くなり、住んでいたマンションを相続することになったものの、何から手をつければ良いのか分からず、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。マンションの相続は、預貯金などとは異なり、手続きが複雑で専門的な知識も必要になるため、戸惑うのは当然のことです。
必要な手続きと期限を整理すると、資料集めや専門家への相談を進めやすくなります。相続人・遺言・ローンなどの状況によって、必要な対応は異なります。
本記事では、親のマンションを相続するときに確認したい手続き、税金、管理上の注意点と、相続後の利用方法を整理します。
ご自身の状況に当てはめる際の確認項目としてお役立てください。相続放棄や申告など期限のある判断は、早めに対応する専門家へ相談しましょう。

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹(株式会社土地未来)
親のマンションを相続する際の流れ
マンションの相続では、以下の6項目を確認します。必ずこの順番で終える手続きではなく、税務申告・登記・管理の準備などを並行して進める場合があります。
相続税の申告・納付だけでなく、相続放棄等の検討にも期限があります。財産と負債を早めに調べ、それぞれの期限を確認してください。
STEP 1.遺言書の有無を確認する
遺言書の有無と内容を確認します。有効な遺言で承継先が決められている財産は、その内容に沿って手続きを進めるのが基本です。主な遺言の方式には、公正証書・自筆証書・秘密証書があり、方式や保管先によって確認方法が異なります。
1989年以後に作成された公正証書遺言は、相続開始後、相続人等の利害関係人が最寄りの公証役場で検索を申し出ることができます。死亡と相続関係を示す書類、本人確認資料等が必要です。自宅等に保管された遺言書も確認しますが、封印のあるものはその場で開封しないでください。
法務局の自筆証書遺言書保管制度については、遺言者の死亡後、相続人等が「遺言書保管事実証明書」を請求して保管の有無を確認できます。内容の確認には「遺言書情報証明書」や閲覧の手続きを使います。請求できる立場・必要書類・窓口を法務局の案内で確認しましょう。
自宅等で保管された自筆証書遺言や秘密証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。公正証書遺言と、法務局の保管制度に基づく自筆証書遺言は検認不要です。検認は遺言書の状態を確認して偽造・変造を防ぐための手続きで、有効・無効を確定する手続きではありません。封印のある遺言書は家庭裁判所で開封します。
STEP 2.法定相続人を確認する
複数の相続人がいて、遺言で承継先が決まっていない財産などを分ける場合は、対象となる相続人全員で協議します。遺言がある場合も、相続関係や遺留分などの確認に相続人の調査が必要になります。
法律上の配偶者は原則として常に相続人となり、配偶者以外は子、直系尊属、兄弟姉妹の順で相続します。先に亡くなった子や兄弟姉妹がいる場合の代襲相続、養子、相続放棄等にも注意が必要です。戸籍・除籍・改製原戸籍など、家族関係に応じた資料で対象者を確認します。
2024年3月から、戸籍証明書等の広域交付を利用し、本籍地以外の市区町村窓口でも本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍等を請求できるようになりました。兄弟姉妹の戸籍等は対象外で、郵送・代理人請求はできません。未コンピュータ化の戸籍等は別途取り寄せが必要なため、窓口へ確認しましょう。
STEP 3.遺産分割協議を行う
協議が必要な遺産について、相続人全員で取得者や分け方を話し合います。未成年者や判断能力の低下した相続人などがいる場合は、代理の方法や利益相反の確認が必要になることもあります。
マンションの分割方法には、主に以下の4つの方法があります。
- 現物分割: 特定の相続人がマンションそのものを相続する方法です。
- 代償分割: 特定の相続人がマンションを相続する代わりに、他の相続人に対して代償金(現金など)を支払う方法です。
- 換価分割: マンションを売却して現金化し、その現金を相続人間で分割する方法です。
- 共有にする方法:複数人が持分を定めて所有します。利用・管理・費用負担や将来の売却の方針を確認し、他の分割方法と比較して検討します。
遺産分割協議は、相続人全員の合意が得られるまで続きます。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになります。
STEP 4.遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で相続人全員の合意が得られたら、その内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書は、後のトラブルを防ぐだけでなく、マンションの相続登記(名義変更)や預貯金の解約手続きなど、様々な場面で必要となる重要な書類です。
誰がどの財産を取得するかを明確にし、マンションの専有部分と敷地権等を登記記録に沿って特定します。相続登記に使う協議書は相続人全員の実印による押印等を整え、必要な印鑑証明書などを確認します。海外在住者等がいる場合も、署名証明等の取扱いを含め提出先へ相談してください。
作成した遺産分割協議書は、相続人の人数分作成し、それぞれが1通ずつ保管するのが一般的です。
STEP 5.相続税の申告と納付を行う
相続税の申告要否は、マンション以外の財産や加算対象となる生前贈与、債務なども含めて判定します。申告が必要な場合の期限は、通常、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割がまとまらなくても、原則として期限は延びません。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。ただし、小規模宅地等の特例を使って基礎控除額以下になる場合や、配偶者の税額軽減で納税額がゼロになる場合でも、特例の適用には申告が必要です。相続放棄や養子がいる場合の人数の数え方にも税法上のルールがあります。
期限内に申告・納付ができなかった場合、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課される可能性があります。相続財産の調査や評価には時間がかかるため、早めに税理士などの専門家に相談し、準備を進めることが賢明です。
STEP 6.相続登記を行う
相続登記は、相続で取得した不動産の権利関係を登記記録に反映する手続きです。分割がまとまらない場合は、相続人申告登記などで期限内に義務を履行する方法があります。ただし、相続人申告登記だけで持分や権利関係が確定するわけではなく、売却等の前には必要な相続登記を別途整えます。
これまで相続登記は任意でしたが、2024年4月1日から義務化されました。正当な理由なく相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
原則として、自分のために相続が開始したことと、その不動産の所有権を取得したことの両方を知った日から3年以内に申請します。2024年4月1日より前から取得を知っていた未登記の相続不動産は、原則2027年3月31日までが期限です。遺産分割が成立した場合は、その日から3年以内に分割内容に沿った登記をする義務もあります。
相続登記は司法書士に依頼するのが一般的ですが、ご自身で手続きを行うことも可能です。
親のマンションの相続にかかる税金
マンションの相続では、相続税の申告要否と、相続登記に伴う登録免許税等を確認します。相続税はすべての相続で発生するわけではありません。
相続税
マンションの相続税評価は、売却査定額や固定資産税評価額だけで判断できません。2024年1月1日以後の相続・遺贈・贈与で取得した対象の分譲マンションは、従来の家屋部分・敷地利用権の評価額に「区分所有補正率」を適用して計算します。補正の要否や率は築年数、総階数、所在階、敷地持分などにより異なり、低層の建物等には適用対象外となる場合もあります。
【計算方法】
相続税の計算は、以下のステップで行われます。
- 課税遺産総額の算出:相続財産や一定の贈与財産について、非課税財産、控除できる債務・葬式費用等を考慮して各人の課税価格を求めます。その合計から基礎控除額を引き、課税遺産総額を計算します。
- 相続税の総額の計算:課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定して各人の金額を求め、相続税の速算表等で税額を計算して合計します。速算表を使う場合は、税率だけでなく各区分の控除額も反映します。
- 各人の納付税額の計算:相続税の総額を各人の課税価格に応じて割り振り、対象者の2割加算や配偶者の税額軽減など、適用される加算・控除を反映します。単に取得割合で按分した金額が最終的な納税額とは限りません。
自宅マンションの敷地利用権は、「小規模宅地等の特例」の対象となる場合があります。特定居住用宅地等の要件を満たすと、対象となる土地等のうち330㎡までの部分について相続税評価額を80%減額できます。建物部分が80%減額される制度ではありません。取得者や同居・保有等の条件、分割・申告手続きを税理士へ確認しましょう。
関連記事:相続した土地は3年以内に売却するべき?節税方法や売却の注意点を徹底解説
登録免許税
登録免許税は、不動産の所有権移転登記(名義変更)など、登記手続きを行う際に課される税金です。相続によってマンションの名義を変更する「相続登記」の際に、法務局へ納付します。
登録免許税は、登記する不動産の課税標準と税率に基づいて計算します。対象の持分や免税措置、端数処理も確認します。
登録免許税額 = 固定資産税評価額 × 税率
相続による所有権移転登記の通常税率は0.4%です。課税標準が2,000万円で免税措置等を使わない例では、2,000万円×0.4%=8万円となります。土地部分には、要件を満たす相続登記等について2027年3月31日までの免税措置もあるため、家屋部分と分けて適用を確認してください。
固定資産税評価額は、納税通知書に付属する課税明細書や評価証明書などで確認します。「課税標準額」とは異なることがあるため、登記に用いる評価額・年度・持分を確認してください。
親のマンションを相続する際の注意点
親のマンションを相続する際には、手続きをスムーズに進め、将来的なトラブルを避けるために、いくつか注意すべき点があります。
注意点①共有する場合の利用・管理・売却方針を確認する
共有名義には、利用方法や費用負担について複数人の調整が必要になる面があります。マンション全体を通常の売買で処分する場合は原則として共有者全員の合意が必要です。一方、賃貸は契約の種類・期間等により必要な同意が異なるため、売却と一律に同じ条件と考えず、契約前に専門家へ確認しましょう。
共有不動産全体の売却について意見がまとまらない場合や、相続で共有者が増える場合には、方針の調整が難しくなることがあります。自分の持分だけの処分とは区別し、将来の利用・売却方針を話し合っておきましょう。
共有にする場合と、代償分割・換価分割などを選ぶ場合の負担を比較し、相続人の希望や資金の状況に合う方法を検討してください。
注意点②生前の準備として遺言書を検討する
遺言書は、本人の希望する財産の承継を明らかにする方法です。ただし、作成すれば必ず争いを防げるわけではありません。本人の意思、方式、財産の記載内容や遺留分等を確認します。
有効な遺言で財産の承継先が定められていれば、その範囲で遺産分割協議を経ずに手続きを進められる場合があります。ただし、遺言に記載のない財産や遺言の有効性など、別途確認が必要なこともあります。
特定の人へ財産を遺したい場合も、本人の意思を尊重しながら、実現方法と他の相続人への影響を確認します。遺言の内容や有効性に関する相談は、弁護士・公証人等へ相談してください。
注意点③住宅ローンの残債を確認する
相続するマンションに、親が組んでいた住宅ローンが残っている場合があります。住宅ローンなどの債務も、相続財産として引き継がれることになります。これを「マイナスの財産」と呼びます。
相続が開始されたら、まず住宅ローンの契約書や返済予定表などを探し、残債がいくらあるのかを正確に把握しましょう。
団体信用生命保険(団信)によって、死亡時に対象となる住宅ローンが弁済される場合があります。ただし、加入しているだけで必ず全債務がなくなるわけではありません。加入内容、対象となる債務、支払条件、必要な請求手続きを借入先に確認しましょう。
団信の対象外となる債務も調べ、相続放棄等を検討する場合は、遺産を売却・処分する前に弁護士等へ相談してください。相続放棄の申述は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。調査が間に合わない場合は、家庭裁判所への期間伸長の申立てを期限内に検討します。
注意点④公共料金の名義変更も同時に行う
マンションを相続したら、電気、ガス、水道といった公共料金の名義変更手続きも忘れずに行いましょう。これらの契約は被相続人の名義のままになっているため、相続人の名義に変更するか、解約する必要があります。
空室にする場合は、清掃・給排水設備の維持に必要な使用と、漏水等のリスクを考えて契約の扱いを決めます。水道を一律に継続・停止すると決めず、管理会社等に設備の状態や点検方法を確認しましょう。
電話やインターネット回線の契約も同様に、名義変更または解約の手続きが必要です。
注意点⑤マンションの管理組合へ連絡する
マンションを相続したら、そのマンションの管理組合や管理会社へ連絡し、所有者が変更になった旨を届け出る必要があります。
管理費や修繕積立金は、相続人が支払義務を引き継ぐため、支払いの手続きについても確認が必要です。
連絡を怠ると、管理組合からの重要なお知らせが届かなかったり、管理費の督促状が前の住所に送られ続けたりといった問題が生じる可能性があります。
また、管理組合への連絡の際に、マンションの管理規約も確認しておくと良いでしょう。特に将来的に賃貸に出すことを考えている場合、規約によっては賃貸が制限されているケースもあるため、事前の確認が不可欠です。
注意点⑥空き家のまま放置しない
誰も住まない場合も、専有部分の点検・連絡先・費用負担を決めておきます。管理費や修繕積立金、課税される固定資産税・都市計画税など、保有中に必要な支出を確認しましょう。
また、適切な管理が行われていないと、建物の劣化が進んだり、放火や不法侵入といった防犯上のリスクが高まったりします。近隣住民とのトラブルに発展する可能性も否定できません。
マンションの一住戸が空室になっただけで、直ちに空家法上の特定空家等への措置や解体の対象となるわけではありません。建物の使用実態や状態、自治体の判断などによります。専有部分と共用部分の管理を区別し、管理組合・管理会社と連絡を取りながら適切に維持しましょう。
相続放棄の検討、相続人の確認、必要な同意や登記の準備と併せて、当面の管理と今後の利用方針を検討します。権利関係が整理できていない段階で処分を急がないようにしましょう。
親のマンションを相続したあとの活用方法
親から相続したマンションは、大切な資産です。ご自身のライフプランやマンションの状況に合わせて、最適な活用方法を検討しましょう。主な活用方法としては、「住む」「貸す」「売る」の3つが挙げられます。
親のマンションに引っ越す
一つ目は、相続したマンションに自分で住む方法です。現在の住居費、通勤・通学、建物や設備の状態を比較して検討します。
賃料の支払いがなくなる場合も、管理費・修繕積立金・税金・修繕費等は見込む必要があります。家族の暮らしや将来の住み替えも踏まえ、必要な支出を比較しましょう。
また、リフォームやリノベーションが必要な場合は、その費用も見積もっておきましょう。
賃貸経営を行う
二つ目の選択肢は、マンションを第三者へ貸して賃料収入を得る方法です。収入に加え、空室期間、管理費・修繕積立金、修繕費、税金などの支出も含めて収支を見込みましょう。
ただし、賃貸経営には空室リスクや家賃滞納リスクが伴います。また、入居者の募集や契約手続き、クレーム対応、建物のメンテナンスといった管理業務も発生します。これらの業務は不動産管理会社に委託することも可能ですが、その場合は管理委託手数料がかかります。
賃料の見込みだけでなく、空室期間・募集費用・管理範囲・修繕計画を確認します。近隣の募集・成約事例と物件条件を比べ、借入れが残る場合は賃貸利用について金融機関にも確認しましょう。
売却する
三つ目は、売却して現金化する方法です。住む・貸す場合の収支や負担と、売却価格・時期・費用を比較して判断します。
売却後に残る資金は、売却代金からローン返済・仲介手数料・税金等を考慮して見込みます。管理費等の精算や負担の終了時期は、契約・引渡し条件に沿って確認しましょう。
また、相続人で遺産を分ける「換価分割」を行う場合にも、売却は有効な手段です。
仲介や不動産会社による買取などの方法があります。査定を比べるときは、提示額だけでなく、その根拠・売却条件・費用・対応範囲を確認してください。査定額は成約価格の保証ではありません。
親のマンション相続は計画的に行い専門家の力も借りよう
マンションの相続は、財産や相続人の状況によって必要な手続きが異なります。遺言、権利関係、税金、ローン、管理の状況を一つずつ確認し、判断が難しい点は専門家へ相談しましょう。
相続税の申告が必要な場合は、通常、死亡を知った日の翌日から10か月以内です。相続登記の期限は別に確認します。共有する場合の方針やローンの保障内容も整理し、住む・貸す・売るの選択肢を比較してください。
そして、相続したマンションを「住む」「貸す」「売る」の中からどのように活用するかは、ご自身のライフプランを大きく左右する重要な決断です。それぞれのメリット・デメリットを十分に比較検討し、ご自身にとって最適な選択をしてください。
相談内容に合わせて、不動産登記は司法書士、税務は税理士、紛争や法律上の判断は弁護士、不動産の利用・売却は不動産会社などへ確認します。分かっている資料と未確認の点を整理して相談しましょう。
制度説明の確認日:2026年9月26日
主な参照先です。個別の税務・法律判断は、税理士・弁護士・司法書士等へご確認ください。
遺言・戸籍・登記等の追加確認資料
追加確認日:2026年9月27日。制度の対象・書類・申立先は各公式案内をご確認ください。
