マイホームの購入は、多くの方にとって一生に一度の大きな買い物です。しかし、そのプロセスは複雑で、何から始めれば良いのか、どのような流れで進むのか分からず、不安を感じる方も少なくありません。
不動産の購入は、物件探しから契約、ローンの手続き、引き渡しまで、数多くのステップを踏む必要があります。全体の流れを事前に把握し、各段階でやるべきことを理解しておくことが、理想の住まいをスムーズに、そして安心して手に入れるための鍵となります。
この記事では、住宅ローンを利用する不動産購入の一例を11のステップで説明します。実際の手順や日程は物件・融資・契約条件によって異なるため、各段階で担当者と確認しながら進めましょう。

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹(株式会社土地未来)
不動産を購入する際の流れ
以下は情報収集から引渡しまでの進め方の一例です。現金購入、新築・中古、注文住宅などによって不要な手続きや並行する工程があります。資金計画と入居希望日を踏まえ、具体的な日程を調整します。
STEP 1.資金計画を立てる
物件探しの前に、購入に充てる自己資金と、毎月無理なく返せる金額を整理します。金融機関の借入可能額だけで購入予算を決めず、生活費や将来の支出、修繕費、手元に残す資金も考慮しましょう。
金融機関のシミュレーションは金利や返済期間ごとの負担を比較する参考になります。表示された借入可能額は融資の承認を意味しません。収入、既存借入れ、物件などの審査条件を金融機関へ確認します。
また、物件価格以外にも、仲介手数料や登記費用、税金などの「諸費用」が必要になることを忘れてはいけません。
諸費用は、新築・中古の区分だけで一定の割合に決まるものではありません。仲介の有無、融資手数料、登記、税金の軽減、保険などにより変わります。項目別の見積りと支払時期を確認し、引越し・改修費や購入後の維持費も予算に含めましょう。
STEP 2.情報収集を行う
資金計画で予算が決まったら、次は物件の情報収集を始めます。どのような住まいにしたいのか、家族構成やライフスタイルに合わせて希望条件を整理しましょう。エリア、広さ、間取り、駅からの距離、周辺環境など、譲れない条件と妥協できる条件に優先順位をつけておくと、効率的に物件を探すことができます。
情報収集の方法としては、不動産情報サイトやアプリの活用が一般的です。SUUMOやHOME’Sといったポータルサイトでは、膨大な物件情報の中から希望条件で絞り込んで検索できます。
希望エリアが決まっている場合は、不動産会社へ条件を伝えて相談する方法もあります。紹介可能な物件は時期や取扱いによって異なるため、募集状況や情報の更新日も確認します。
STEP 3.内見する
インターネットやチラシで気になる物件を見つけたら、不動産会社に連絡して実際に物件を見学する「内見」に行きます。写真や間取り図だけでは分からない、室内の雰囲気や日当たり、風通し、眺望などを自分の目で直接確認することが目的です。
内見は、理想の住まいを見つけるための非常に重要なステップです。後悔しないためにも、チェックリストを準備するなどして、細部まで確認しましょう。
内見で注目すべき主なポイントは以下の通りです。
- 日当たりと風通し: 時間帯による日の入り方や、窓を開けた際の風の流れを確認します。
- 部屋の広さと天井高: 家具の配置をイメージしながら、実際の広さや圧迫感の有無を感じ取ります。
- 収納スペース: クローゼットや押し入れの広さ、奥行き、使い勝手を確認します。
- コンセントの位置と数: 生活動線をイメージし、必要な場所に十分な数のコンセントがあるか確認します。
- 水回りの設備: キッチン、浴室、トイレの使い勝手や、水圧、劣化状況をチェックします。
- 共用部分(マンションの場合): エントランス、廊下、ゴミ置き場などが清潔に保たれているか確認します。
- 周辺環境: 駅からの実際の距離、坂道の有無、スーパーや学校、病院などの生活施設の場所、騒音や臭いの有無などを歩いて確認します。
STEP 4.物件の申し込みを行う
購入を希望する物件が見つかったら、購入申込書など、売主・仲介会社が指定する方法で意思と条件を伝えます。購入申込みと売買契約の違いを説明してもらい、記載内容を確認してから提出しましょう。
購入申込書には、購入希望価格、支払い方法(住宅ローンの利用の有無)、手付金の額、引き渡しの希望時期などの条件を記載します。この書類をもって、売主との具体的な交渉がスタートします。
申込みの優先順位や交渉の進め方は売主・物件によって異なり、常に先着順とは限りません。購入申込書を出しただけで通常直ちに契約が成立するものではありませんが、合意内容や交渉経緯によって判断が変わるため、「いつでも無条件に撤回できる」とは考えないようにします。申込預り金を支払う場合は、目的・返還条件を確認し、預り証を受け取りましょう。
STEP 5.住宅ローンの事前審査を受ける
購入の申し込みと並行して、住宅ローンの「事前審査(仮審査)」を金融機関に申し込みます。売買契約を結んだ後にローンが借りられないという事態を防ぐため、契約前に借入可能かどうかを打診しておくのが一般的です。
事前審査では、収入、勤務状況、既存の借入れなどを確認します。所要日数は金融機関や提出資料によって異なるため、結果の予定日を確認してください。
事前審査の承認は借入れの見通しを確認する材料ですが、本審査の承認や融資実行を保証するものではありません。金利だけでなく、手数料、団信、返済条件も比較し、必要な資金と日程を確認します。
STEP 6.契約内容の確認を行う
購入条件がまとまったら、売買契約書と重要事項説明書を確認します。宅建業者が売主や仲介として関わる、一般の方への売買では、原則として契約前に宅建士による重要事項説明を受けます。
重要事項説明書には、登記簿に記載された権利関係、法令上の制限、インフラの整備状況、建物の状態、契約解除に関する規定など、専門的で非常に重要な内容が記載されています。
重要事項説明書と契約書は可能なら事前に受け取り、疑問点を整理しておきます。代金・引渡し日・契約不適合責任・解除条件など、不明点は説明を受け、理解したうえで契約へ進みましょう。
STEP 7.売買契約を結ぶ
売買契約書の内容を双方で確認し、書面または電子契約など合意した方法で契約します。口頭の説明と契約書の記載が食い違っていないかも確認してください。
手付金を支払う場合は、金額・方法・期限を契約前に確認します。一律に物件価格の5〜10%と決まっているわけではありません。通常は売買代金の一部に充当するため、代金に加えて二重に予算計上しないよう注意します。契約前の申込預り金とは区別します。
契約後の解除は、手付解除、ローン特約、債務不履行などの理由と条件によって、返還される金銭や費用が変わります。解約手付による買主の解除は、原則として相手方の履行着手前に手付を放棄して行います。期限や例外もあるため、契約前に説明を受けておきましょう。
STEP 8.住宅ローンの本審査・契約を進める
売買契約や金融機関の案内に沿って、住宅ローンの本申込みを行います。ローン特約で金融機関・借入額・期限等を定めている場合、勝手に申込先を変えると特約の適用に影響することがあります。変更が必要なら、期限前に売主・仲介会社・金融機関へ相談してください。
本申込みでは、売買契約書・重要事項説明書の写し、収入資料、住民票などを求められる場合があります。必要書類・記載事項・発行期限は商品や申込者によって異なります。全員に同じ書類が必要とは限らないため、提出先の指定を確認します。
本審査では返済能力や担保評価などを確認します。審査期間は一律ではありません。承認後はローン契約と融資実行に必要な条件を確認し、実行日を残代金決済・引渡しの日程と合わせます。ローン特約の承認期限・解除期限を過ぎないよう管理しましょう。
STEP 9.内覧チェックを行う
引渡し前に、売主や不動産会社などと日程を調整し、物件の状態を確認します。新築では内覧会等を行うことがありますが、名称・参加者・実施方法は取引によって異なります。
この内覧チェックの目的は、売買契約を締結した時点の状態と物件の状態に相違がないか、修繕箇所がきちんと直っているか、付帯設備表に記載されたエアコンや照明などの設備が問題なく作動するかなどを確認することです。
不具合や契約との相違を見つけたら、写真などで記録し、対応の要否・担当・期限を売主等と確認します。引渡し前に指摘しなかったことだけで全ての請求ができなくなるわけではありませんが、契約不適合責任やアフターサービスには条件と期限があります。把握した時点で早めに相談しましょう。
STEP 10.残金決済を行う
残代金決済の前に、融資の実行条件と登記に必要な資料を確認します。決済場所や立会いの方法は、金融機関・売主・買主・司法書士・仲介会社などと事前に調整します。
売買代金から支払済みの手付金・中間金などを差し引いた残額を支払います。仲介手数料などの諸費用や固定資産税等の精算金も、契約に応じて準備します。融資金の受取口座、送金方法、振込限度額は金融機関へ確認してください。
残代金の支払い、必要書類や鍵の受渡し、登記申請を関係者で段取りを合わせて進めます。所有権が移る時期は契約内容で確認します。所有権移転登記は第三者に権利を主張するために重要であり、登記完了によって初めて所有者になるとは一律に説明できません。
STEP 11.引き渡しを行う
引渡しでは、鍵、合意した設備や書類、物件の状態を確認します。残代金決済と登記申請との関係も含め、契約上の日程と条件に沿って進めましょう。
確認済証・検査済証、図面、設備の説明書や保証書など、受け取る書類と保管状況を事前に確認します。古い物件では書類が残っていない場合もあります。入居日は鍵の受領だけでなく、補修や清掃、ライフラインの利用開始日なども踏まえて決めます。
電気・ガス・水道の開始手続きは入居日に間に合うよう事前に準備し、立会いの要否も確認します。転居に伴う役所・金融機関・保険・免許証等の住所変更や、郵便物の転送も忘れずに行いましょう。
購入から入居までの期間
不動産の購入を考え始めてから、実際に新しい住まいに入居するまでには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。物件の種類によって、その期間は大きく異なります。
新築物件の場合
新築物件の場合、建物がすでに完成しているか、まだ建築中かによって期間が変わります。
完成済みでも、融資審査、契約条件、登記や引渡し準備などによって日程は異なります。完成していることだけで入居までの期間を確定できないため、希望日を伝えて具体的な工程を確認します。
未完成の物件は、建築工事と必要な検査・引渡し準備を待つ必要があります。完成予定、工事が遅れた場合の対応、支払時期を確認し、現在の住まいの退去や引越しの手配には余裕を持たせましょう。
中古物件の場合
中古住宅でも、空室か居住中か、補修や改修が必要かによって入居までの期間が変わります。
融資審査、売主の退去、既存ローンや登記関係の整理、修繕などの日程を踏まえ、売主・買主で引渡し日を合意します。「中古なら2〜4か月」と一律に見込まず、物件ごとの工程を確認しましょう。
空き家でも、残置物の処分や設備点検・改修、書類の準備などに時間がかかる場合があります。現況と必要な作業を確認します。
関連記事:中古住宅を売却するには?売却までの流れや注意点を解説
注文住宅の場合
注文住宅は、土地探しから始めるか、すでに土地を所有しているかによって期間が大きく異なります。
土地探しから始める場合は、土地の条件確認・購入、設計、建築確認、工事、検査、引渡しなどを計画します。工程の順序や所要期間は土地と建築計画によるため、施工会社等から具体的な工程表を受け取り、土地代・工事代の支払いと融資の実行時期も確認しましょう。
間取りや仕様は、予算、法令、土地の条件、構造などの制約内で検討します。希望どおりに変更できる範囲、追加費用、工期への影響を確認してください。
不動産を購入する際の注意点
不動産購入という大きな決断で後悔しないためには、流れを理解するだけでなく、いくつかの重要な注意点を押さえておく必要があります。
注意点①希望の物件には複数回内見に行く
可能であれば時間帯や曜日を変えて現地を確認すると、1回では分からない違いに気づきやすくなります。遠方などで複数回の訪問が難しい場合は、追加の写真や動画、オンライン内見、専門家の調査も検討しましょう。
例えば、通勤時間帯の交通量、夜間の明るさ、雨天時の水はけや周囲の音などは、時間や天候で変わります。ご自身の生活時間に近い条件で確認すると判断材料になります。
現地確認や資料によって分かったことと、未確認の点を分けて記録しましょう。見学だけで建物の内部や地盤の状態まで分かるわけではないため、必要に応じて専門家へ相談します。
注意点②資金計画を立てる際は税金も考慮する
資金計画を立てる際、多くの人は物件価格と住宅ローンの返済額に注目しがちですが、不動産に関わる「税金」を見落としてはいけません。
購入に伴う税金には、不動産取得税、登記にかかる登録免許税、紙の課税文書にかかる印紙税などがあります。物件・取得日・軽減制度によって税額や申告が異なります。電子契約の電磁的記録自体は印紙税の課税文書に当たりません。
固定資産税は原則として毎年1月1日の所有者が納税義務者です。都市計画税は原則として市街化区域内の土地・家屋が対象です。非課税・免税点・軽減等もあるため、所在地の自治体へ確認します。売主・買主間の日割り等の精算は、税の納税義務とは別の契約上の取り決めです。
資金計画の段階で、これらの維持費が年間でどのくらいかかるのかを不動産会社に確認し、毎月のローン返済額と合わせて長期的な視点で収支をシミュレーションしておくことが不可欠です。
関連記事:不動産売却にかかる税金のすべて|計算方法・節税対策・確定申告の流れを解説
注意点③災害リスクも考慮する
近年、地震や豪雨による水害など、自然災害が頻発しています。そのため、購入を検討している物件が、災害に対してどの程度安全な立地であるかを確認することは、非常に重要な注意点となっています。
自治体が公表する最新のハザードマップで、洪水・内水・土砂災害・高潮・津波など、地域に関わる情報と避難経路を確認しましょう。想定区域の外や色のない場所でも、災害が起きない保証はありません。図の対象災害、想定条件、作成・更新時期も確認します。
国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、災害リスクや土地の成り立ちなどの情報を重ねて見ることができます。掲載データには未整備・更新待ちのものもあるため、自治体の最新資料と合わせて確認します。地図だけで個別の土地の地盤の強さや建物の安全性を判断せず、必要に応じて専門家の調査を検討してください。
不動産購入の流れを把握し計画的に行おう
資金計画、物件探し、契約、融資、引渡しの流れを把握し、それぞれの期限と担当者を確認しましょう。手順を一律に当てはめるのではなく、物件や取引条件に合わせて日程を調整することが大切です。
物件探しから入居までの期間は、新築、中古、注文住宅といった物件の種類によって大きく異なります。ご自身のライフプランに合わせて、どのくらいの期間を見込んでおくべきかを把握しておくことも重要です。
諸費用と維持費を含む資金計画、現地や建物資料の確認、ハザードマップによる災害情報の把握などを進めます。判断できない点はそのままにせず、関係者へ確認しましょう。
不動産購入は、人生における大きな節目です。この記事でご紹介した流れとポイントを参考に、しっかりと準備を進め、信頼できる不動産会社のパートナーと共に、理想の住まいを実現してください。
