様々なご事情から、大切なお住まいである「中古住宅」の売却を検討し始める方は少なくありません。しかし、多くの方にとって不動産の売却は、人生で一度あるかないかの、まったくの未知の経験です。
「一体、何から手をつければ良いのか分からない…」
「うちの家って、いくらくらいで売れるんだろう?」
「売却には、どんな費用や税金がかかるの?」
「信頼できる不動産会社って、どう選べばいいの?」
売却前には、価格の目安に加え、費用、住宅ローン、契約条件、税金を確認しておくと進めやすくなります。分からない点は内容に応じて不動産会社や専門家へ相談し、売却後に残るお金と必要な手続を整理しましょう。
この記事では、不動産会社に仲介を依頼する場合の流れと、各段階で確認したい費用・契約・手続のポイントを紹介します。
売却を決める前の準備や、担当者に確認する項目を整理する際にご活用ください。

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹(株式会社土地未来)
中古住宅売却の流れ
以下は、仲介による中古住宅売却の一般的な7つのステップです。不動産会社による直接買取では、媒介契約や買主を探す活動が不要になる場合があります。
引渡しの希望時期、名義・共有の状況、住宅ローン残高を早めに確認し、無理のない日程と資金計画を立てます。相続登記や境界確認などが必要な場合は、その準備期間も見込みましょう。
①物件の相場を調べる
国土交通省の不動産情報ライブラリなどで、近いエリア・広さ・築年数の取引価格や成約価格を参考にします。ポータルサイトの売出価格は、実際に売れた価格とは異なります。建物の状態や土地の条件による違いもあるため、そのまま自宅の価格には当てはめないようにしましょう。
②不動産仲介会社を探して査定を依頼する
不動産会社に物件の査定を依頼します。資料をもとにした机上査定と、現地の状態も確認する訪問査定では、確認できる情報が異なります。いずれも売却見込み額の目安であり、提示価格での成約を保証するものではありません。
必要に応じて複数社の提案を比較し、査定額の根拠、販売方法、費用、連絡体制を確認します。一括査定サービスの利用は必須ではなく、会社へ直接相談する方法もあります。サービスを使う場合は、情報提供先や連絡方法を確認してから申し込みましょう。
関連記事:不動産の売買に仲介業者はいらない?利用すべき理由を解説
③不動産仲介会社と媒介契約を締結する
査定の根拠、販売方針、費用、担当者との相談のしやすさを比べて依頼先を選びます。専任媒介・専属専任媒介は1社に依頼しますが、一般媒介では複数社への依頼が可能です。
そして、その会社と正式に売却の仲介を依頼するための「媒介契約」を結びます。
主な違いは次の表のとおりです。一般媒介でも、活動報告やレインズ登録を契約で取り決めることがあります。専任・専属専任の登録期限は媒介契約締結日の翌日から数え、不動産会社の休業日とレインズ休止日を除きます。契約期間や更新・解除の条件、手数料の支払時期も確認してください。
| 契約の種類 | 複数社との契約 | 自己発見取引の可否 | レインズへの登録義務 | 業務報告の義務 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介契約 | 可能 | 可能 | なし | なし |
| 専任媒介契約 | 不可 | 可能 | 7日以内 | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介契約 | 不可 | 不可 | 5日以内 | 1週間に1回以上 |
- 一般媒介契約:複数社へ依頼でき、自分で見つけた買主との直接取引も可能です。会社間の情報や内覧日程を整理し、活動報告の方法、他社へ依頼したことを知らせる取り決めなどを確認します。契約の種類だけで販売活動の熱意を判断することはできません。
- 専任媒介契約:仲介を1社に依頼しますが、自分で見つけた買主との直接取引は可能です。2週間に1回以上の業務報告とレインズ登録の義務があります。自己発見取引時の費用など、個別の取り決めも確認しましょう。
- 専属専任媒介契約:仲介を1社に依頼し、自分で見つけた買主ともその会社を通して取引します。1週間に1回以上の業務報告とレインズ登録の義務があります。報告頻度の違いが、売却価格や対応品質を保証するわけではありません。
④売却活動をする
媒介契約で合意した方針に沿って広告掲載や購入希望者への案内を進めます。掲載内容、室内写真、住所などの公開範囲、居住中の内覧対応を事前に担当者と確認しましょう。
内覧では整理整頓や清掃を行い、間取り・日当たり・設備などを確認してもらいます。良い点だけでなく、分かっている不具合や修繕履歴も正確に伝えます。内覧後の反応を聞き、価格や案内方法を見直す材料にしましょう。
関連記事:不動産を売却する際に必要な書類と準備するタイミングを解説
⑤購入希望者と条件を交渉する
購入希望者から、価格や引渡し日などを記した購入申込書(買付証明書)が提示されることがあります。申込書の提出と売買契約の締結は区別し、合意した内容や書類の扱いを担当者と確認します。
希望価格、手付金、融資の利用、引渡し日などに加え、修繕・残置物・契約不適合責任などの条件も調整します。
価格だけでなく、資金計画や引渡し条件が実行可能かを確認し、合意した内容を契約書へ反映します。内容が不明確なまま署名や入金を進めないようにしましょう。
認識の違いが残る場合は、契約前に不動産会社や内容に応じた専門家へ相談します。
⑥不動産売買契約を締結する
価格や引き渡し条件など、全ての条件について売主と買主の双方が合意に至ったら、正式な「不動産売買契約」を締結します。
仲介による売買では、契約前に宅地建物取引士が買主へ重要事項を説明します。売主も売買契約書の内容を十分に確認しましょう。手続は対面に限らず、必要な条件を満たしてオンラインでの重要事項説明や書面の電子交付・電子契約を利用できる場合があります。
手付金の額・支払方法・時期は契約条件として合意します。個人が自宅を売る場合に「売買価格の5~10%」と法律で一律に決まっているわけではありません。解除時の扱いも確認してから受け取ります。
契約が履行される場合、通常は手付金を売買代金の一部に充当します。解除時の返還・放棄等の扱いは、解除の理由と契約内容によって異なります。
⑦残代金を受領し、不動産を引き渡す
決済・引渡しの時期や場所は、融資、引越し、登記書類の準備などを踏まえて調整します。残代金の入金を確認し、合意した費用の精算、住宅ローン返済・抵当権抹消、所有権移転の登記申請、鍵と関係資料の引渡しを関係者と進めます。登記申請と登記完了は同じ時点ではなく、後日、完了も確認します。売却後の確定申告が必要な場合は、引渡しで全手続が終わるわけではありません。
中古住宅売却にかかる費用
中古住宅の売却では、売却代金がまるまる手元に残るわけではありません。売却に伴う、いくつかの費用や、税金がかかることをあらかじめ理解しておく必要があります。
①仲介手数料
通常の売買仲介手数料は価格帯ごとに上限が異なり、売買価格400万円超の場合の速算式は「(売買価格×3%+6万円)+消費税」です。計算対象の価格から建物にかかる消費税相当額は除きます。この価格が3,000万円なら、消費税率10%の場合の上限は105万6,000円です。800万円以下の宅地・建物には、媒介費用を勘案して依頼者一方につき税込33万円までとなる特例があります。手数料は自動的に上限額となるものではなく、金額と支払時期を媒介契約時に説明を受けて合意します。
②税金
売却に伴い、いくつかの税金が発生します。
- 印紙税:課税対象となる紙の不動産売買契約書を作成する場合にかかり、記載金額等によって税額が変わります。電子契約の電磁的記録には印紙税はかかりませんが、別に課税文書を紙で作る場合は扱いを確認します。
- 登録免許税:抵当権抹消、所有権移転などの登記にかかる税金です。売主・買主のどちらがどの費用を負担するか、司法書士報酬と分けて契約・見積もりで確認します。
- 所得税・復興特別所得税・住民税:土地・建物の譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。建物の取得費は減価償却を考慮するため、購入価格より安く売っても課税されることがあります。マイホームの特別控除などは要件を満たして申告する必要があり、税額がゼロになると決めつけず、個別に確認しましょう。
③抵当権抹消費用
住宅ローンの繰上返済手数料は金融機関や返済方法によって異なります。抵当権抹消登記の登録免許税・司法書士へ依頼する場合の報酬と合わせて見積もり、支払時期を確認します。完済済みでも抵当権の登記が残っている場合は、抹消の手続が必要です。引越し、測量、残置物処分、必要な修繕なども、発生する項目だけ資金計画に加えましょう。
関連記事:親の家はどうやって売る?売却の流れや税金についても解説
中古住宅売却の注意点
最後に、中古住宅の売却プロセスにおいて特に注意すべき点を4つご紹介します。
これらを、事前に理解しておくことが、後のトラブルを未然に防ぐための鍵となります。
売却に必要な書類の準備
必要書類は物件、名義、融資の有無、紙・電子の手続などで異なります。契約や決済を担当する不動産会社・司法書士に一覧と有効期限を確認し、登記上の氏名・住所と現在の情報の違いも早めに伝えましょう。
- 登記済権利証・登記識別情報通知:登記手続で本人確認に用いる重要な情報です。現在の権利関係は登記事項証明書等でも確認します。紛失していても別の本人確認手続が用いられる場合があるため、早めに司法書士へ相談し、識別情報をむやみに第三者へ見せないようにします。
- 物件の資料:確認済証・検査済証、設計図、測量図、境界に関する資料、設備の説明書、修繕・改修履歴など、保管している資料を整理します。マンションでは管理規約や管理費・修繕積立金等の資料も確認します。
- 税額・取得費等の資料:固定資産税等の納税通知書・課税明細、取得時の売買契約書や費用の領収書などを確認します。決済時の費用・送金方法は必要書類とは別に整理しましょう。
- 本人確認書類・印鑑証明書等:手続に応じて必要な実印、印鑑証明書、住所を確認できる書類等を準備します。必要部数や発行からの期限は担当者に確認してください。
住宅ローンの完済手続き
住宅ローンが残っていても売却の相談や活動はできますが、抵当権を外して引き渡す条件では、金融機関と返済・抹消の段取りを調整する必要があります。売却代金で完済できない場合も、自己資金で不足分を補えるかなどを確認します。売却価格が残高を下回ること自体を「任意売却」と呼ぶわけではありません。返済が困難で完済できないまま売却する場合には、債権者の同意を得て担保の解除条件を調整する任意売却などが検討されます。残った債務が自動的になくなる制度ではないため、契約前に金融機関や専門家へ相談してください。
契約不適合責任の確認
契約不適合責任は、引き渡された物件が種類・品質・数量について契約内容に適合しない場合の責任です。「隠れた欠陥」に限る説明ではありません。追完、代金減額、損害賠償、解除にはそれぞれ要件があり、契約での責任範囲や期間も確認します。分かっている不具合・修繕履歴を伝え、物件状況の書面と契約内容を揃えましょう。建物状況調査は劣化事象等を確認する手段ですが、調べられる範囲に限界があり、すべての不具合や耐震性を保証するものではありません。
解約の条件や特約の内容を確認
解約手付の場合、原則として相手方が履行に着手するまで、買主は手付金を放棄し、売主は受け取った手付金の倍額を現実に提供して解除する仕組みです。特約による期限や、宅建業者が売主の場合の規律もあるため、実際の契約で確認します。住宅ローン特約も、審査に通らなければ必ず自動で解除されるわけではありません。対象の融資、申込・承認・解除通知の期限、買主の手続義務、手付金や仲介手数料の扱いを確認しましょう。
中古住宅売却の流れや費用、注意点を把握しておこう
中古住宅の売却では、相場・査定、媒介契約、売買契約、決済・引渡しに加え、税務申告まで見据えた準備が必要です。
価格だけでなく、費用を引いた手取り、ローンの返済、契約上の責任、引渡し日程を一つずつ確認しましょう。
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確認した公的資料・参考情報
内容確認:2026年9月27日。制度・契約の概要を整理したもので、個別の権利関係や税額を判断するものではありません。登記は司法書士、税務は税理士・税務署、契約上の紛争は弁護士等へご確認ください。


