
木造アパートは、柱や梁など主要な構造に木材を用いる賃貸集合住宅です。計画に当たっては、構造の名称だけでなく、敷地条件、必要な性能、建築・維持管理の費用を比較することが大切です。この記事では、木造の特徴、税務上の耐用年数、設計・工事費の確認点を紹介します。

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹(株式会社土地未来)
そもそも木造アパートとは
アパート・マンションという呼び方は、一般的な用法と広告規則・法律上の定義を区別して考えます。木造や軽量鉄骨造の賃貸集合住宅はアパートと呼ばれることが多いですが、名称だけで性能は分かりません。マンション管理適正化法には対象となるマンションの定義があり、「どの法律にも定義がない」というわけではありません。
木造アパートでも、工法、床・壁の仕様、接合部、施工、築年数、維持管理の状態によって耐久性や遮音性等は異なります。新しい建物であっても、構造名だけで快適さや安全性を判断せず、図面・仕様書・評価書や現地の状態を確認しましょう。
鉄骨造との違いを解説
木造と鉄骨造は、使用されている材料がそれぞれ異なります。木造の材料は木材であるのに対し、鉄骨造の材料は鉄骨です。
鉄骨造では鋼材を主な骨組みに用います。軽量鉄骨・重量鉄骨という呼び方がありますが、板厚だけで耐震性、遮音性、耐火性等の優劣を一律に判断することはできません。建物全体の設計、接合部、床・壁、耐火被覆、施工・維持管理の状態を確認します。税務上の耐用年数に用いる肉厚区分は、これらの呼び方とは分けて確認してください。
建築費や工期は、構造のほか、建物の規模、工法、仕様、地盤、施工条件、資材や人員の調達によって変わります。同じ条件をそろえた見積りと工程表で比較します。
木造アパートを建築するメリットとは
木造アパートには、さまざまなメリットがあります。ここでは、木造アパートを建築するメリットを見てみましょう。
建築費を比較して計画できる
木造で費用を抑えられる場合もありますが、すべての計画で他の構造より安くなるとは限りません。また、3階建て以下なら無条件に建築できるわけではなく、構造安全、防火、避難、敷地の法規制等への適合を建築士と確認します。
ただし、木造でも、構造以外の部分にこだわり過ぎると全体のコストが高くなるケースもあります。設備や仕上げなどによっては他の構造で建築する場合よりも総額が高くなる可能性もあるため、注意しましょう。
収益計画では、建築費だけでなく、賃料、空室、管理費、修繕費、税金、借入返済等を含めて検討します。初期費用を抑えることだけで収益性が決まるわけではありません。
工法と工程に応じて工期を確認する
工期は工法や施工条件によって異なり、木造が必ず短期間で完成するとは限りません。設計、確認・審査、資材調達、施工、完了検査、引渡しまでを含めた日程を確認します。
ただし、実際の工期は、同じ木造でも工法によって異なることを理解しておきましょう。
税務上の耐用年数と減価償却を確認する
以下は、住宅用建物の税務上の法定耐用年数の主な区分です。建物の寿命、保証期間、融資期間を示すものではありません。構造・用途に加え、金属造では骨格材の肉厚を確認します。建物附属設備や中古資産には別の区分・取扱いがあるため、個別の計算は税理士等に確認してください。
| 構造・区分 | 法定耐用年数(住宅用) | |
|---|---|---|
| 鉄筋コンクリート(RC)造・鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造 | 47年 | |
| 鉄骨造(税務上は金属造) | 骨格材の肉厚4mm超 | 34年 |
| 骨格材の肉厚3mm超・4mm以下 | 27年 | |
| 骨格材の肉厚3mm以下 | 19年 | |
| 木造 | 22年 | |
住宅用の木造は22年ですが、木骨モルタル造は20年の区分です。表にある金属造の一部は19年であり、木造がすべての構造より短いわけではありません。減価償却は取得費を各年へ配分する税務上の処理で、支出そのものが戻る制度ではありません。土地は減価償却の対象外です。将来の売却や所得全体も含めて税負担を検討します。
木造アパートを建築するデメリットも確認
木造アパートにはデメリットもあるため、建築する際はよく確認しておきましょう。ここでは、具体的にどのようなデメリットがあるか説明します。
入居者に伝える性能を確認する
入居を検討する方は、生活音、地震への備え、断熱性などを気にすることがあります。構造名による印象だけで説明せず、その建物で確認できる性能や仕様を案内することが大切です。
遮音性は壁や床の材料だけでなく、厚さ、構成、接合部、音の伝わり方、施工等に左右されます。「木造と鉄骨造なら差がない」とも一律には言えません。設計仕様、評価結果、実際の音の伝わり方を確認します。
耐震性は、材料単体の強度だけではなく、建物の構造計画、壁・接合部、基礎・地盤、施工、劣化の状態等によって判断します。建築時期の基準や設計図書、住宅性能評価等を確認し、必要に応じて建築士に相談します。
募集時に性能を説明する場合は、確認できる資料と説明の範囲をそろえます。根拠なしに「遮音性や耐震性に問題がない」と断定せず、評価項目、取得時点、対象部分等を具体的に伝えましょう。
防火・耐火の仕様を確認する
木材は燃える材料ですが、木造でも設計・仕様により準耐火構造や耐火構造を採用できます。材料を選ぶだけでなく、部材の組合せ、接合部、被覆、施工等を含めて基準や認定仕様への適合を確認します。火災被害の程度や他構造との優劣を、木造という名称だけで断定することはできません。
計画する規模・用途・防火地域等に応じて必要な性能を定め、設計者と施工者に確認します。安全性と費用を比較するときは、同じ条件の設計・仕様で判断しましょう。
木造アパートの建築費用は何を確認する?
建築計画では、設計・工事監理、建築工事、付帯工事、各種手続等の費用を整理します。各費用の割合は敷地・規模・仕様・業務範囲によって変わり、一律に5%・85%・10%等とは決められません。土地を購入する場合は土地代と取得時の諸費用も加え、総事業費で資金計画を作ります。
見積りでは、次の項目が含まれるか、別途になるかを確認します。相場の数字だけで判断せず、見積日、数量、仕様、消費税、除外項目をそろえて比較してください。
設計料
設計料には、計画条件の整理や設計図書の作成等の業務が含まれます。工事監理、確認申請等の代理、構造計算、各種調査が含まれるかは契約によって異なるため、業務範囲と別途費用を確認します。工事監理は、工事が設計図書に適合しているかを確認する業務であり、施工管理とは区別します。
設計料は、建設工事費に応じて料率を設定している企業もあります。ただし、設計費が料率で決まっていないケースも多いです。当社の場合、建築工事費が5,000万円の木造アパートの設計料率は150万円程度です。工事費が1億円以上の木造アパートの設計料率は、170万円以上程度になります。
建築工事費
すでに触れたとおり、建築工事費は本体工事費と付帯工事費に分けられます。本体工事費に含まれているのは、木工事、内装・外装の仕上げ工事、設備工事などです。付帯工事は、解体工事、地盤改良工事、電気・ガス・水道の引き込み工事など、本体工事に付随して必要となる工事が該当します。
資材価格や労務費、供給状況は変動します。過去の事例や単価をそのまま当てはめず、見積りの有効期限と、価格変更が生じる場合の契約条件を確認しましょう。
建築工事費にはさまざまな費用が含まれているため、実際の状況によってもかかる費用は大きく変化する可能性があります。
諸費用
諸費用には、登記、契約書の印紙税、調査・測量、保険、各種申請等が含まれることがあります。物件や契約方法によって必要な費用は異なり、印紙税も作成する文書の内容等によって判断します。境界の確認や測量が必要な場合は、土地家屋調査士等への依頼範囲と報酬を確認します。
また、金融機関から借り入れをするなら手数料や保証料などもかかります。地鎮祭を実施する場合、式典にかかる費用も別途発生します。
それぞれいくらの費用が発生するかについては、状況によってさまざまです。諸費用の具体的な金額は、それぞれ大きく異なる可能性があります。
木造アパートの建築費用を抑えるコツとは
木造アパートの建築費用を抑えるには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、具体的なコツを紹介します。
シンプルな形状の建物にする
建築費用を抑えるには、シンプルな形状を意識することが大切です。形状が複雑な建物を建てようとすると、その分だけ建築費用が高くなります。
形状を検討するときは、施工のしやすさに加えて、採光、通風、避難、住戸の使いやすさ、敷地の制限を確認します。面積や設備条件をそろえた複数案で比較すると、費用の違いを把握しやすくなります。
当社では建築体制を内製化し、自社設計・施工を実現しています。そのため、無駄な中間マージンをカットでき、シンプルな形状はもちろん、デザイン性の高い建物でも建築費用を最大限抑えられます。
コストをかけるべき箇所を考える
コストをかける部分と抑える部分のバランスをとることも重要です。見た目がよくて機能的であるほど入居者を集めやすいものの、すべてを充実させようとすればコストがかさみます。費用対効果を考慮し、優先順位を決めてコスト配分をしましょう。
維持管理と省エネの費用も含める
初期費用だけでなく、防水・外壁・設備の更新、点検、光熱費など、保有中の負担も検討します。2025年4月以降に着工する新築住宅等は、原則として省エネ基準適合義務の対象です。必要な手続と性能を設計段階で確認しましょう。
複数の不動産会社に相談する
アパート経営を始めるときは、複数の不動産会社に相談するのがおすすめです。それぞれの見積もりの内容を比較し、納得できるところを選ぶべきです。複数に相談していれば、他社の提案をもとにした建築費用の交渉もできます。
木造アパートを経営するポイントとは?
木造アパートの経営を成功させるには、さまざまなポイントがあります。ここでは、押さえておきたいポイントを紹介します。
アパート経営においては、さまざまな条件を考慮したうえで慎重に計画することが大切です。その土地の周辺環境や需要を踏まえ、適切にターゲットを絞り込む必要があります。
また、着実に入居者を集めるためには管理会社との連携も重要です。周知活動に力を入れて満室経営を目指してください。
まとめ
木造アパートの計画では、構造名だけで費用・工期・安全性を決めつけず、敷地と用途に合う設計・仕様を確認することが大切です。建築費、維持管理費、借入返済、空室等を含めた収支を検討し、税務上の耐用年数は建物の寿命と区別します。設計・施工の担当範囲と見積条件を確認しながら計画を進めましょう。

