近年、空き家の増加は全国的な社会問題であり、相続で引き継いだけれど使い道がない、遠方で管理が難しいなどの悩みを抱える方も少なくありません。放置すれば思わぬリスクや費用負担が発生する可能性もあり、早めの対応が肝心です。
本記事では、空き家の売却方法や注意点、かかる費用・税金などを解説します。状況に合った最適な売却方法を見つけ、安心して不動産を手放すための参考にしてください。
空き家を放置するとどうなる?
空き家を放置してしまうと、下記のようなリスクやデメリットが発生します。
- 固定資産税が増加する
- 老朽化による資産価値の低下
- 近隣トラブルの原因になる
もっとも注意すべき点は、固定資産税の増加です。住宅が建っている土地には、軽減措置が適用されるため、固定資産税の負担が軽くなるのが一般的です。
しかし、空き家の管理状態が悪くなり、行政から「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されると、優遇措置が解除されます。その結果、土地に対する固定資産税が最大6倍になるケースもあります。
また、建物の老朽化が進行すればするほど、資産価値は下がっていくのもリスクの1つです。雨漏りやシロアリ被害などが発生しやすくなり、修繕費用や解体費用の負担も増えていくでしょう。さらに、管理が行き届いていない空き家には不法侵入のリスクがあり、放火や事故といったトラブルを招く危険性も否定できません。
そのほか、枝木の越境や害獣の侵入など、近隣トラブルに発展するケースもあげられます。こうした状況を避けるためにも、空き家は放置せず、早めに売却や活用の方法を検討することが大切です。
空き家を売却する方法
空き家を売却する方法は、下記のとおりです。
- そのまま売却する
- 更地にして売却する
- リフォームして売却する
- 買取業者に売却する
- 不動産のマッチングサイトで売却する
- 個人間で売買する
方法ごとに手間や費用、売却までの期間などに違いがあります。それぞれ詳しく解説します。
そのまま売却する
空き家を解体せずに現状のまま売却する方法は、一般的かつ手間も少ない売却手段です。築年数が比較的新しい住宅であれば「中古住宅」として売り出され、古い建物の場合は「古家付き土地」として扱われます。
解体費用がかからず、住宅が存在することで固定資産税の軽減措置も継続されるのがメリットです。ただし、建物に劣化や不具合があると、買主がリフォーム費用を見込んで価格交渉を求めてくることもあります。
また、契約後に不具合が発覚した場合、契約不適合責任を問われる可能性がある点にも注意が必要です。
更地にして売却する
更地であれば、買主は購入後すぐに新築や土地活用ができます。古い建物によるネガティブな印象が避けられ、需要が高まりやすい点もメリットです。
ただし、解体にかかる費用は売主の負担となるのが一般的です。そのため、住宅がなくなることで固定資産税の軽減措置が解除され、翌年度以降の税額が上がる点には注意しましょう。
建物に価値がなく、再建築が可能な土地であれば、有力な選択肢といえるでしょう。
リフォームして売却する
空き家の見た目や機能性を改善してから売却する「リフォーム売却」は、成約率を高める手法です。内装の美しさや設備の使いやすさが向上すれば、購入希望者に好印象を与えやすくなり、結果的に高く売却できる可能性があります。
壁紙の張り替えや、水回りの補修などの軽微な工事であれば、比較的費用を抑えながら印象を改善できるでしょう。しかし、買主のニーズに合わないリフォームを施すと、かえって売れにくくなることがあります。
リフォームには工事費や期間がかかるため、費用対効果を慎重に見極めることが重要です。
買取業者に売却する
「とにかく早く手放したい」「遠方に住んでいて管理が難しい」などの理由がある場合には、不動産会社による直接買取を検討する方法もあります。業者が直接買い取るため、手続きが早く進みやすく、最短では1週間ほどで売買契約が成立します。
さらに、仲介手数料が不要となるケースが多いのもメリットの1つです。売却後の契約不適合責任が免除されることもあり、売主の負担を大きく軽減できるでしょう。ただし、一般的に市場価格の6〜8割程度での買取になるため、売却額を重視する場合は慎重に検討しましょう。
不動産のマッチングサイトで売却する
近年では、不動産マッチングサイトを活用して空き家を売却する方法も広まりつつあります。この方法は、不動産会社を介さず、インターネット上で買主を見つけられるのが特徴です。
多くの場合、仲介手数料や掲載料がかからず、コストを抑えた売却に期待できます。地元で空き家を探している個人とマッチングできる可能性があるため、条件が合えばスムーズに取引が成立するでしょう。
ただし、内見対応や契約書の作成、登記手続きなどは自分で行う必要があります。法的な知識や実務的な手間が増える点には注意が必要です。
個人間で売買する
知人や親戚などと直接交渉して売買を進める「個人間売買」は、仲介手数料が不要なのが特徴です。柔軟な条件交渉が可能となり、双方が納得した価格で売買が成立しやすいメリットがあります。
ただし、公正な価格の判断が難しく、契約書の不備や登記・税務上のトラブルに発展するリスクもあります。個人間売買を行う際は、司法書士や税理士など専門家のサポートを受けることが、安全かつ円滑に手続きを進めるために欠かせないでしょう。
空き家の売却にかかる費用と税金
空き家を売却する際には、売却価格だけでなく、下記の発生する費用や税金について把握しておくことが重要です。
- 仲介手数料
- 解体費用
- リフォーム費用
- 税金(譲渡所得税・登録免許税・印紙税)
詳しく見ていきましょう。
仲介手数料
不動産会社を通じて空き家を売却する場合、成約時に仲介手数料を支払う必要があります。ただし、仲介手数料は不動産会社が自由に設定できるものではありません。
宅地建物取引業法(宅建業法)によって、上限額が厳格に定められています。宅建業法第46条では、報酬の金額は国土交通大臣が定めた範囲内に限られることが明記されており、それを超える請求は禁止されています。高額取引に不慣れな一般消費者を保護するためのルールです。
国土交通省の告示によると、売買契約時の仲介手数料の上限は下記のとおりです。
参考:国土交通省|不動産取引の仲介手数料について
国土交通省|宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額
なお、実際に計算するのは煩雑なため、実務では次の速算式が広く使われています。
【速算式】
- 売買価格が200万円以下の場合:売買価格×5%+消費税
- 売買価格が200万円超~400万円以下の場合:売買価格×4%+2万円+消費税
- 売買価格が400万円を超える場合:売買価格×3%+6万円+消費税
2024年7月以降は新たな特例が適用され、売買価格が800万円以下の空き家に関しては、「最大30万円+消費税」に引き下げられます。不動産会社に相談する際は、特例が適用されるか事前に確認し、見積もりを取得することが大切です。
解体費用
木造住宅なら1坪あたり3~5万円が相場です。50坪の建物なら、150~250万円程度を想定しておく必要があります。
なお、鉄骨造やRC造の場合はさらに高額になる傾向です。立地条件や老朽化の度合い、庭木や石などの撤去内容によって費用は大きく変動するでしょう。
予想外の出費を防ぐためにも、複数業者に見積もりを依頼し、比較することをおすすめします。
リフォーム費用
空き家をそのまま売るのではなく、リフォームしてから売却する場合は、工事費も計画に組み込む必要があります。クロス張り替えや水回りの修繕など、軽微な工事なら数十万円で済むでしょう。しかし、フルリノベーションの場合は、300〜500万円以上かかるケースも珍しくありません。
リフォームで物件の魅力が向上し、販売価格を引き上げられる可能性がある一方で、買主のニーズとマッチしない内容の場合、逆効果となることもあります。費用対効果を十分に見極める必要があるでしょう。
税金(譲渡所得税・登録免許税・印紙税)
空き家を売却する際にかかる税金は、おもに下記のとおりです。
- 譲渡所得税:所有期間5年以下なら約39.63%、5年超なら約20.315%
- 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%
- 印紙税:売買契約書に貼付する印紙代、契約金額に応じて5,000〜6万円
各種税制には特例や控除が用意されているため、事前に確認して適用条件に合致するか調べておくと、税負担の軽減につながります。
空き家の売却にかかる費用と税金を抑える方法
空き家の売却は費用が膨らみやすい傾向ですが、事前準備により出費を抑えることも可能です。ここでは、空き家の売却にかかる費用を抑える方法を紹介します。
- 特例や控除を活用する
- 不動産売買契約書を保管する
- 行政の補助金を活用する
詳しく見ていきましょう。
特例や控除を活用する
空き家の譲渡所得に対して課税される税金は、被相続人の居住用財産を譲渡した場合の特例(空き家3,000万円控除)を活用すると、大幅に軽減可能です。この特例では、相続した空き家の譲渡益から、最大3,000万円を控除できるため、課税対象がゼロになることもあります。
また、相続財産を売却する場合は取得費加算の特例も併用できるケースがあります。相続税の一部を取得費として計上できるため、さらに課税額が抑えられるでしょう。
これらの制度は適用期限や売却条件が細かく定められているため、事前に要件を確認し、必要に応じて税理士に相談することが大切です。
不動産売買契約書を保管する
空き家を売却した際の譲渡所得税は、取得費を明確に証明できるかで変わります。取得費とは、下記のような費用を指します。
- 物件購入時の代金
- 仲介手数料
- 登記費用
これらを証明するためには売買契約書や領収書の保管が不可欠です。証明できない場合は、売却額の5%しか取得費として認められず、多額の税金が発生するおそれもあります。古い書類でも処分せず、大切に保管しておくことが重要です。
行政の補助金を活用する
空き家を解体する場合、自治体によっては解体費用の一部を補助する制度が設けられています。自治体によって条件や金額に違いがありますが、制度を活用できれば大きな節約になるでしょう。
補助金の申請には事前審査や現地写真、書類提出などの手続きが必要な場合もあります。自治体の公式ホームページなどで、最新の情報を確認しましょう。
空き家を売却する際の注意点
空き家の売却を進める際は、費用や税金だけでなく、手続き面やタイミングに関する注意点も数多く存在します。ここでは、空き家を売却する際に見落としがちなポイントを解説します。
- 相続の場合は相続人全員の同意を必要とする
- 名義変更を忘れずに行う
- 建物や地盤の状態を確認しておく
- 解体するかどうかは査定をしてから決める
- 解体する場合はタイミングを見極める
- 3年以内に売却する
- 売却期間に余裕を持つ
詳しく見ていきましょう。
相続の場合は相続人全員の同意を必要とする
相続によって複数人で空き家を共有する場合、売却には相続人全員の同意が必要です。共有名義の不動産は、相続人全員の同意がなければ売却できません。1人でも反対すれば、手続きはストップします。
そのため、早い段階で全員の意思確認を行い、可能であれば遺産分割協議書を作成しておくと安心です。親族間で意見がまとまりにくい場合は、司法書士や弁護士など専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。
名義変更を忘れずに行う
空き家の名義が被相続人のままでは、売却手続きを進められません。売却には、相続登記(所有権移転登記)が必要です。
2024年4月からは相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記を行わなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。必要書類として戸籍謄本や評価証明書などが必要になるため、事前に準備を整えましょう。
建物や地盤の状態を確認しておく
売却前には、空き家の建物や地盤の状態を必ず確認しておくことが重要です。雨漏りやシロアリ被害、傾きなどがある場合、売却後に「契約不適合責任」を問われるリスクがあります。
契約不適合責任が問われると、補償義務が生じます。そのため、事前調査を行い、正確な状態を買主に明示しておきましょう。必要に応じて、インスペクション(建物診断)を実施するのも効果的です。
解体するかどうかは査定をしてから決める
空き家を解体すべきかどうかは、査定を受けたうえで慎重に判断しましょう。築年数が古くても、リフォームによって再活用できる建物は多く存在します。
解体すると高額な費用がかかるため、まだ使える家屋を壊してしまうと損失につながることもあります。解体前に不動産会社へ査定を依頼し、「古家付き土地」として売却できるか確認するのがおすすめです。
売却方針は、物件の状態や市場ニーズに応じ、柔軟に検討しましょう。
解体する場合はタイミングを見極める
空き家を解体して更地にする場合は、固定資産税の課税タイミングにも注意が必要です。土地の税額は毎年1月1日時点の状況で決まるため、前年内に解体すると翌年度から住宅用地特例が適用されず、税額が最大6倍に跳ね上がる可能性があります。
解体は、1月1日以降に行うのが一般的に有利です。また、取り壊しから1年以内に売却すれば、売却しやすさと税負担の軽減を両立できる可能性があります。計画的にスケジュールを立てましょう。
3年以内に売却する
相続した空き家を売却する場合、空き家の譲渡所得3,000万円特別控除などの特例を活用するには、相続開始から3年以内に売却するのが条件です。期限を過ぎてしまうと、控除が受けられず、大きな税負担につながります。
また、築年数が経過すればするほど資産価値も下がっていくため、早期売却を目指す方が得策です。制度を上手に活用して節税するためにも、計画的にスケジュール管理を行いましょう。
売却期間に余裕を持つ
空き家の売却には下記の工程があり、数ヶ月かかるのが一般的です。
- 査定
- 媒介契約
- 買主探し
- 契約
- 引き渡し
さらに空き家は劣化が進みやすいため、買主の不安要素になりやすく、売却まで半年以上かかるケースもあります。価格を下げることなく売却を目指すには、焦らず準備と交渉に時間をかけることが重要です。
空き家の売却の相談から引き渡しまでの流れ
空き家の売却の相談から引き渡しまでの流れは、下記のとおりです。
事前に流れを把握しておくことで、余裕のあるスケジュールで空き家の売却準備を進められます。
一連の流れには早くても3〜6ヶ月、長ければ1年近くかかることがあります。とくに売却活動や契約準備には時間が必要なため、余裕を持ったスケジュールが重要です。
事前に、必要書類や手続き内容を確認しておきましょう。
空き家を売却する際の不動産会社の選び方
空き家の売却では、不動産会社選びが成否を大きく左右します。まずは空き家の取引実績が豊富で、地域に詳しい会社を選びましょう。
また、下記の項目も確認ポイントです。
- 査定額の根拠が明確か
- 過去の実績や口コミ
- 対応の丁寧さ
さらに、遠方の空き家があるなら、管理サービスの有無もチェックしましょう。1社に絞らず、複数社に査定を依頼して比較検討するのがコツです。
信頼できる担当者と出会えれば、スムーズに売却につなげられるでしょう。
まとめ
空き家の売却には、さまざまな知識や手続きを要するため、不安を感じる方も多いでしょう。しかし、信頼できる不動産会社に任せることで、スムーズに売却まで進められます。
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