空家等対策特別措置法の2023年改正
管理・行政措置・税負担の確認点
法改正の概要・背景・主なポイント・期待される効果を分かりやすく解説
「空家等対策の推進に関する特別措置法」の2023年改正は、同年12月13日に施行されました。空き家の活用、適切な管理、危険な空き家への対応を進める制度です。この記事では、管理不全空家等と特定空家等の違いを中心に、所有者が確認したい内容を紹介します。
この記事で分かること
- 2023年空き家対策特別措置法改正の概要
- 法改正の背景(人口減少・過疎化・景観悪化)
- 法改正の主なポイント(所有者責任・行政権限・支援策)
- 期待される効果と実施される具体的な措置
- 空き家所有者が今すぐすべきこと
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宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹(株式会社土地未来)
目次
法改正の概要
2023年改正では、所有者等の責務に加え、活用拡大・管理の確保・特定空家等の除却等が見直されました。以下では、支援制度の利用も含めて4つの観点で整理します。
1. 所有者の責務強化
空家法第5条は、所有者又は管理者に、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切に管理し、国や自治体の空き家施策に協力するよう努めることを求めています。努力義務と、個別の命令等に基づく義務は区別して確認します。
所有者に求められること
- 定期的な点検・管理:建物の老朽化や危険箇所の確認
- 適切な修繕:破損箇所の修理、倒壊防止措置
- 周辺環境への配慮:雑草の除去、害虫駆除など
- 防犯対策:不法侵入や放火対策
2. 行政の介入権限拡大
管理不全空家等には指導・勧告、特定空家等には助言・指導、勧告、命令、代執行等の制度があります。すべての空き家に同じ措置が直ちに適用されるわけではなく、状態や周辺への影響、法定の要件・手続によって判断されます。
行政の権限
- 助言・指導:空き家の状態や適用条文に応じて改善を求める
- 勧告:指導等の後も改善しない場合に、法定の要件に従って具体的な措置を求める
- 命令:特定空家等について、勧告後の状況や必要性を踏まえ、意見を述べる機会等の手続を経て行う
- 代執行:特定空家等について、要件を満たす場合に修繕・除却等を行政が実施する。撤去に限られない
- 住宅用地特例の対象除外:管理不全空家等又は特定空家等について、法に基づく勧告を受けた敷地が対象
3. 支援策とインセンティブの充実
解体や改修等の支援には、国の事業や自治体独自の制度があります。2023年の法改正だけで、すべての所有者に補助金や減税が適用されるわけではありません。所在地・年度・建物・工事・申請者等の条件を確認します。
主な支援策
- 解体費用の補助:制度の有無、対象建物、補助率・上限、申請時期を自治体に確認
- 改修費用の補助:耐震・省エネ・利活用等、対象となる工事と条件を確認
- 税の減額・減免等:各制度の要件を確認。適切に管理しているだけで全国一律に適用される制度ではない
- 融資制度:対象用途、金利、審査、返済条件を実施機関に確認
4. 情報共有と協力体制の強化
自治体は、地域の事情に応じて専門家や民間法人と連携します。2023年には空家等管理活用支援法人制度が設けられ、2026年9月3日施行の改正で指定対象となる非営利法人の範囲が広がりました。指定の有無や担当業務は、各自治体の公表内容で確認してください。
協力体制
- 空き家バンク:登録条件に合う売却・賃貸物件の情報を公開。すべての空き家の行政台帳とは別の仕組み
- 相談窓口の設置:所有者や利用希望者への相談対応
- 専門家ネットワーク:不動産会社、建築士、司法書士などとの連携
- 地域住民との連携:空き家の発見・通報体制の構築
法改正の背景
空き家対策特別措置法が改正された背景には、日本が直面する3つの深刻な社会問題があります。
1. 人口減少と少子高齢化
日本の人口は減少傾向にあり、特に地方では高齢化が進んでいます。これにより、多くの家屋が空き家となり、適切な管理が行われなくなっています。
2023年時点の全国統計
- 日本の総人口:1億2,435万2千人(2023年10月1日、総務省統計局「人口推計」)
- 65歳以上の割合:29.1%(2023年10月1日、総務省統計局「人口推計」)
- 空き家数:900万2千戸(2023年住宅・土地統計調査の確報集計。賃貸用・売却用・二次的住宅も含む)
- 空き家率:13.8%(2023年住宅・土地統計調査、総住宅数に占める割合)
高齢化により、施設入所や死亡により住宅が空き家化するケースが増加しています。また、相続しても管理や維持が困難なため、そのまま放置されることが多いです。
2. 過疎化の進行
地方の過疎化が進む中で、空き家の問題はより顕著になっています。空き家は地域の活力を低下させ、治安の悪化や災害時のリスクを高める原因となっています。
過疎化による影響
- 若者の都市部流出:地方に残る高齢者のみの世帯が増加
- 商店街の衰退:空き店舗の増加により地域経済が疲弊
- 公共サービスの縮小:人口減少により学校・病院などが閉鎖
- コミュニティの崩壊:住民同士のつながりが希薄化
空き家の増加は、さらなる人口流出を招く悪循環を生み出します。
3. 景観の悪化と安全性の問題
放置された空き家は景観を損なうだけでなく、老朽化による建物の崩壊や火災のリスクを高め、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼします。
空き家による問題
- 倒壊リスク:老朽化した建物の崩壊による人的被害
- 火災リスク:放火や漏電による火災発生
- 治安悪化:不法侵入、犯罪の温床化
- 衛生問題:害虫・害獣の発生、悪臭
- 景観悪化:雑草繁茂、ゴミの不法投棄
- 資産価値の低下:周辺不動産の価値が下がる
空き家を放置するリスクをご存知ですか?
法改正により、所有者の責任がより厳しくなりました。今すぐ対策を検討しましょう。
法改正の主なポイント
ここでは、所有者等の責務、行政措置、支援制度を区別して確認します。
1. 所有者の責任の明確化
所有者等には適切な管理と施策への協力が求められます。日頃の管理に関する努力義務、行政指導、法に基づく報告・命令への対応は、それぞれ法的な性質が異なります。通知を受けたときは、根拠条文と求められている内容を確認しましょう。
所有者等が確認したい責務・手続
- 適切な維持管理:空家法第5条の努力義務。点検・修繕等により状態を把握する
- 周辺環境への配慮:倒壊、落下物、樹木、衛生面等による悪影響を防ぐため管理に努める
- 情報提供・報告:任意の問い合わせと、空家法第9条第2項に基づく報告の求めを区別する
- 指導と命令:行政指導を一律に強制義務とは扱わない。特定空家等への法定の命令は、内容と期限を確認して対応する
所有者不明の場合
所有者等を特定できない場合は、調査に加え、状況に応じて財産管理制度や略式代執行等を検討します。従来からある制度と2023年改正による追加を区別する必要があります。
- 相続人調査の強化:戸籍調査などで相続人を特定
- 略式代執行の公告:過失なく措置を命ぜられるべき者を確知できない場合に、法定の公告等を経て実施する
- 財産管理制度:要件に応じ、市町村長が裁判所へ財産管理人の選任等を請求できる
- 緊急代執行との区別:所有者等が不明な場合の略式代執行と、災害等で命令する時間がない場合の緊急代執行は別の制度
2. 行政の権限拡大
管理不全空家等は、適切に管理されず、放置すると特定空家等になるおそれがある状態の空き家です。空家法第13条の措置は指導・勧告であり、同条には命令・代執行の規定はありません。以下の命令・代執行は特定空家等に関する制度です。
行政の介入段階
- 助言・指導:特定空家等の所有者等に必要な改善を求める。両者を必ず別々の段階として経るわけではない
- 指導の内容:建物の状態に応じて、修繕、樹木の伐採等の必要な措置を示す
- 勧告:法に基づく勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地は、住宅用地特例の対象から除外される
- 命令:特定空家等への空家法第22条第3項の命令に違反すると、50万円以下の過料の対象。刑罰の「罰金」とは異なる
- 代執行:法定の要件・手続に従い修繕・除却等を実施し、義務者から費用を徴収する。所有者等不明時や緊急時には別の手続がある
「特定空家等」指定のリスク
特定空家等は、次のような状態にあると認められる空き家です。建物の状態と周辺への影響等を踏まえ、自治体が判断します。
- 保安上の危険:放置すると倒壊等により著しく危険となるおそれがある
- 衛生上の問題:放置すると著しく衛生上有害となるおそれがある
- 景観の悪化:適切な管理が行われず、景観を著しく損なっている
- 生活環境への影響:周辺の生活環境を保つために放置することが不適切である
特定空家等と判断されただけで、直ちに税額が6倍になるわけではありません。管理不全空家等・特定空家等への法定の勧告を受けた敷地は、住宅用地特例の対象から除外されます。小規模住宅用地の固定資産税の課税標準を6分の1とする特例と、実際の税額の増加倍率は別です。土地の評価、面積、負担調整等で税額は変わるため、所在地の税務窓口へ確認してください。なお、住宅としての実態を失った敷地等では、勧告の有無とは別に特例対象外となる場合もあります。
3. 支援策の強化
空き家の管理・活用・除却に関する支援は、実施主体、年度、所在地や建物の条件によって異なります。下記は確認する項目の例です。対象となる制度があるか、費用がどこまで支援されるかを個別に確認しましょう。
主な支援制度
- 解体費用の補助:対象条件、補助率・上限、予算枠、募集期間を確認。一律の金額ではない
- 改修の支援:耐震・省エネ等の対象工事、性能要件、他制度との併用条件を確認
- 税の減額・減免等:対象となる工事・土地利用、適用期間、申告要件を税務窓口に確認
- 融資制度:対象者・用途、金利、担保、返済条件、審査の有無を確認
- 専門家への相談:自治体の窓口や相談会の対象、予約、無料の範囲、個別業務の費用を確認
制度は空き家の所在地の自治体等へ確認してください。契約・着工後は補助の対象外となる制度もあるため、工事を依頼する前に、事前相談・申請・交付決定の順序を確認しましょう。
期待される効果
この法改正により期待される効果
この法改正により、空き家によって引き起こされる安全上の問題、衛生問題、景観の悪化などが軽減されることが期待されます。また、空き家の有効活用により、新しい住宅供給や地域の活性化にも繋がることが期待されています。
安全性の向上
- 老朽化した建物の倒壊リスクの減少
- 火災リスクの低減
- 犯罪抑止効果
住環境の改善
- 景観の向上
- 衛生環境の改善
- 資産価値の維持・向上
地域活性化
- 空き家の住宅としての再生
- 店舗・事務所などへの活用
- 移住・定住促進
- 地域コミュニティの活性化
実施される具体的な措置
自治体の取組には、次のような調査・情報整備や相談・流通支援があります。実施内容や利用条件は地域によって異なります。
1. 空き家の特定と登録
市町村は空家法第11条に基づき、空き家に関するデータベースの整備等、正確な情報を把握する措置を講ずるよう努めることとされています。行政の調査・台帳整備と、所有者が売却等のために利用する空き家バンクは別です。
実施内容
- 実態調査:地域の状況に応じ、建物や所有者等の情報を確認する
- データベース化:空き家の所在地、所有者、状態を記録
- 状態の整理:危険性や周辺への影響等を確認。全国一律のランク付けが義務付けられたわけではない
- 情報更新:定期的な状況確認と情報更新
2. 相談窓口の設置
空き家の所有者や地域住民が相談できる窓口を設置し、解決策の提案や支援を行います。
相談内容
- 管理方法:適切な管理・維持方法のアドバイス
- 活用方法:売却・賃貸・解体などの選択肢提示
- 補助金情報:利用可能な支援制度の案内
- 専門家紹介:不動産会社、建築士、司法書士などの紹介
3. 空き家バンクの活用
空き家バンクは、売却・賃貸を希望する所有者と利用希望者が物件情報を探すための仕組みです。登録できる物件、交渉・仲介の方法、費用や契約支援の範囲は運営主体ごとに確認してください。
空き家バンクの仕組み
- 情報登録:所有者が空き家情報を登録
- 情報公開:移住希望者や事業者向けに公開
- 交渉・仲介:当事者が交渉する方式や協力不動産会社が仲介する方式等があり、利用規約を確認する
- 契約時の確認:権利、境界、建物の状態、費用負担等を確認。登録だけで成約や契約上の安全が保証されるわけではない
メリット
- 売却・賃貸の機会増加
- 地域への移住促進
- 空き家の有効活用
空き家の売却・活用をお考えの方へ
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まとめ
この記事のまとめ
- 2023年空き家対策特別措置法が改正
2023年12月13日施行。所有者等の責務に加え、空き家の活用拡大、管理の確保、特定空家等の除却等を見直した。
- 改正の背景は3つの社会問題
人口減少・少子高齢化、過疎化の進行、景観悪化と安全性の問題。
- 所有者の責任が明確化
適切な管理と施策への協力は空家法上の努力義務。行政指導、報告の求め、命令の法的な性質を区別する。
- 行政の権限が拡大
管理不全空家等は指導・勧告、特定空家等は命令・代執行等も対象。住宅用地特例の除外は法定の勧告が基準で、税額が一律6倍になるわけではない。
- 支援策が強化
解体・改修・融資・税の支援は、所在地、年度、建物や申請者等の条件による。契約・着工前に確認する。
- 具体的な措置が実施
空き家の特定・登録、相談窓口設置、空き家バンク活用でマッチング促進。
- 地域社会の安全性向上が期待
安全性向上、住環境改善、地域活性化が期待される。
この法改正は、空き家に対する包括的な対策を講じることで、より安全で快適な地域社会の実現を目指しています。地方自治体と地域住民が協力して取り組むことで、空き家問題の解決に向けた実質的な進展が期待されます。
空き家所有者の方へ
法改正により、空き家の適切な管理がより厳しく求められるようになりました。
状態や法定の手続に応じて、住宅用地特例の対象除外や、修繕・除却等の代執行による費用負担が生じる場合があります。
まず建物と権利関係、自治体からの通知の有無を確認し、管理・売却・賃貸・解体等の選択肢を比較しましょう。
最後に
空き家問題は、個人の問題だけでなく、地域社会全体の課題です。
所有者、自治体、地域住民、専門家が協力し、適切な管理と活用を進めることで、安全で住みやすい地域社会を実現できます。
空き家でお困りの方は、ぜひ専門家にご相談ください。
この記事の監修者
宮原 海斗
株式会社土地未来 代表取締役
宅地建物取引士
空き家問題の専門家として、多数の空き家売却・活用をサポート。法改正にも精通。
横田 大樹
株式会社土地未来 専務取締役
宅地建物取引士
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