②不動産売却

親の家を売るには|本人の意思・相続手続き・費用と税金

ご両親が大切に住み継いできた、思い出の詰まった「親の家」。様々なご事情から、その売却を考えなければならないとき、多くの方が、手続きの複雑さや、精神的な負担の大きさに、戸惑ってしまうのではないでしょうか。

特に、不動産の売却は法律や税金といった専門的な知識が不可欠です。その上、「親の家」の売却には、ご両親の意思能力の状況や、相続の問題といった、特有のデリケートな要素も絡んできます。

この記事では、親御様がご存命の場合と相続後の場合に分け、本人の意思・代理権、相続手続き、売却の流れ、費用と税金の確認点を整理します。

監修者
宮原海斗

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹

横田大樹(株式会社土地未来)

親の家を売る方法は状況次第で変わる

最初に、土地と建物の名義、共有者の有無、親御様のご存命・相続の状況を確認します。「親の家」と呼んでいても、土地と建物の所有者が異なる場合や、親御様以外との共有になっている場合があります。

親御様がご存命であれば、家の所有者は、あくまで親御様です。したがって、売却の意思決定や、契約行為は原則として親御様ご自身が行うことになります。 しかし、その際に、親御様の意思能力(物事を、正しく判断する能力)がどの程度あるかによって手続きはさらに分かれていきます。

親御様が亡くなられている場合は、遺言や相続人、遺産分割の状況を確認します。売却の相談・価格査定・資料整理と、処分権限の確認・相続登記は区別して進めることが大切です。相続した不動産を買主へ引き渡すための登記については、相続登記を含めた段取りを司法書士等に確認しましょう。

このように、状況に応じて踏むべきステップや必要な手続きが全く異なるということを、まず理解しておくことが、スムーズな売却への第一歩となります。

関連記事:中古住宅を売却する流れ|費用・ローン・契約の確認点

親が生きているうちに家を売るケース

まずは、家の所有者である親御様がご存命の間に売却を進めるケースについて、見ていきましょう。

本人が売却の内容を理解し、意思を確認できる場合

親御様が売却の内容や結果を理解し、ご自身の意思を示せる場合は、その希望を確認して進めます。会話ができることだけで判断せず、本人が契約内容を理解しているかを、契約に関わる専門家と確認することが大切です。

親御様が所有する家を売る場合、契約上の売主は親御様です。お子様が連絡や資料整理を手伝う場合も、親御様の意思を尊重し、本人が行う手続きと代理人に任せる手続きを整理します。

お子様が窓口対応を手伝う場合と、代理人として契約する場合は区別します。代理で契約するには、親御様から有効に与えられた代理権とその範囲を確認する必要があります。対象物件、売却条件、委任する手続きなどを委任状で明確にし、本人確認に必要な書類も不動産会社・司法書士等と確認しましょう。

有効な代理権がある場合は、代理人がその権限の範囲内で、親御様のために契約することもできます。委任状があるだけで売却に関するすべての行為を代行できるとは限らず、契約・決済時の確認方法も事前に調整します。

判断能力や意思の確認に支援が必要な場合

では、親御様が認知症などを患い、物事を正しく判断する能力(意思能力)が不十分になってしまった場合は、どうすれば良いのでしょうか。

契約時に意思能力を有しない状態で行った法律行為は無効となります。ただし、認知症という診断名や会話のしやすさだけで、一律に契約の可否が決まるわけではありません。また、本人の意思能力が後に低下しただけで、以前の委任や代理権が当然に消滅するとは限りません。委任時の意思能力、代理権の範囲、契約内容、後見等の状況を専門家に確認してください。

本人の判断能力や既存の契約・支援体制によっては、成年後見制度の利用を検討します。ご本人の利益と意思を尊重し、家族だけで売却を進めず専門家へ相談しましょう。

成年後見制度には、判断能力の程度に応じた後見・保佐・補助があります。家庭裁判所が選任する成年後見人等の権限や必要な手続きは、制度の種類や審判の内容によって異なります。

成年後見人が本人の居住用不動産を売却する場合は、家庭裁判所の許可が必要です。現在住んでいる家だけでなく、施設入所前に住んでいた家なども対象になる場合があります。保佐人・補助人が代理する場合も権限と許可の要否を確認します。本人の生活・療養、売却の必要性、条件を踏まえて検討する手続きです。

手続きには時間と手間がかかるため、早めに弁護士や司法書士といった専門家に相談することをお勧めします。

亡くなった親の家を売るケース

次に親御様が亡くなられ、その家を相続した場合の売却についてです。この場合はまず、いくつかの法的な手続きをクリアする必要があります。

相続の流れ

相続した家の売却では、次の事項を確認します。遺言の有無や相続の方法によって必要な手続きは異なるため、全員が同じ順番・同じ書類で進むわけではありません。

  1. 遺言書の確認:遺言書の有無・種類・内容と遺言執行者を確認します。自宅等で保管された自筆証書遺言などは、家庭裁判所の検認が必要です。封印のある遺言書は勝手に開封せず、家庭裁判所へ確認してください。公正証書遺言と法務局の保管制度を利用した遺言書は検認不要です。検認は、遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
  2. 相続人の確認:遺言の有無にかかわらず、戸籍等で相続関係を確認します。遺言執行者や遺贈を受ける方がいる場合も、権限と手続きの確認が必要です。
  3. 遺産分割協議:遺産分割が必要な場合は、相続人全員で取得者や分け方を話し合います。単独で取得するのか、共有とするのか、売却代金を分けるのかなどを整理し、合意内容を書面にします。
  4. 相続登記:原則として、相続で不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請します。2024年4月1日より前に取得と相続を知っていた未登記の不動産は、原則2027年3月31日までが期限です。遺産分割で取得した場合には、分割の日から3年以内の登記義務もあります。相続人申告登記だけでは売却に必要な名義変更は完了しないため、司法書士等と段取りを確認します。

以下は遺産分割による相続登記で使う書類の例です。遺言による相続、法定相続情報一覧図の利用などで異なるため、実際の必要書類を法務局・司法書士等へ確認してください。

  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 亡くなった親御様の、出生から死亡までの、連続した戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 家を相続する人の住民票
  • 固定資産評価証明書

関連記事:相続した土地の売却時期|所有期間・税金・特例の確認点

親の家を売る際の流れ

以下は、主に不動産会社へ仲介を依頼して売る場合の流れです。権利関係や必要な許可・登記を確認しながら進めます。不動産会社による買取では、一般の買主を募集する活動や媒介契約が不要な場合があり、進め方は異なります。

  1. 物件と権利関係を確認する:登記事項証明書、権利証・登記識別情報、納税通知書、図面等を整理します。共有、抵当権、境界、建物の不具合、居住者の有無も確認します。登記上の住所・氏名が現状と異なる場合は、変更登記の手続きも相談してください。2026年4月1日から住所等の変更登記は原則変更日から2年以内の義務となり、それより前の未登記の変更は2028年3月31日までが期限です。売却に必要な登記は、その期限を待たずに整えます。
  2. 価格の目安を調べる:近隣の類似物件を確認し、売り出し価格と実際の成約価格を区別します。場所、面積、築年数、状態、取引時期などが違えば価格も変わります。
  3. 不動産会社へ査定を依頼する:複数社の査定額だけでなく、比較事例や調査内容、売却までの見通しを比べます。査定額は、その金額で売れるという保証ではありません。
  4. 不動産会社と媒介契約を締結する:査定の根拠や販売方針を比較し、依頼先と契約の種類を選びます。専任媒介等と一般媒介では、複数社へ依頼できるかなどの条件が異なります。
  5. 売却活動を進める:広告や内覧の日程・連絡窓口を決めます。把握している雨漏り、修繕歴、設備の不具合などを不動産会社へ伝え、契約前に買主へ説明する内容を整理します。
  6. 購入希望者と条件を調整する:価格に加え、引渡し日、残置物、測量や解体の負担、融資利用、契約不適合責任の範囲などを確認します。
  7. 不動産売買契約を締結する:売主・代理権・必要な許可と契約条件を確認し、買主と契約を結びます。手付金の額や支払時期、解除条件なども書面で確認します。
  8. 決済・引渡しを行う:売買代金の受領、ローン返済・抵当権抹消、所有権移転登記、鍵や書類の引渡しを関係者と調整します。引渡し後も、必要な税務申告や契約上の対応が残る場合があります。

関連記事:相続した土地の売却期限と税の特例|3年の考え方と注意点

親の家を売る際にかかる税金

売却の手取り額を考える際は、税金に加えて仲介手数料、登記費用、必要に応じた測量・片付け・解体費なども確認します。ローン残高の返済も資金計画に含め、見積りと契約で実際の負担を整理しましょう。

相続税(親が亡くなっている場合)

相続税は、家だけでなく他の遺産も含め、非課税財産・債務等の控除や一定の生前贈与の加算を行った正味の遺産額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に検討が必要です。実際の税額は取得額や税額控除等によって異なり、養子など法定相続人の数え方にも決まりがあります。

相続税は売却自体にかかる税金ではありません。申告・納税が必要な場合は、原則として親御様が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減によって納税額がゼロでも、適用に申告が必要な場合があります。売却や遺産分割の完了を待たず、税理士・税務署へ確認してください。

印紙税

紙の不動産売買契約書には、記載金額に応じた印紙税がかかります。例えば、2027年3月31日までに作成する軽減措置の対象契約書で、記載金額が1,000万円超5,000万円以下なら1通につき1万円です。電子契約の電磁的記録には印紙税はかかりません。作成方法と適用時期を確認しましょう。

登録免許税

相続による名義変更、住所等の変更、売買による所有権移転、抵当権抹消などには、それぞれ登記の種類に応じた登録免許税が関係します。免税・軽減の要件も確認が必要です。売主と買主のどちらが何を負担するかは契約で明確にし、司法書士へ依頼する場合の報酬と税金を分けて見積りを確認しましょう。

譲渡所得税

土地・建物の売却では、売却収入から取得費と譲渡費用を差し引き、適用できる特別控除を考慮して課税譲渡所得を計算します。税率は売却した年の1月1日時点の所有期間で区分され、所得税・復興特別所得税・住民税が関係します。

購入時より安く売れた場合でも、税金がかからないとは限りません。建物の取得費は購入代金等から減価償却費相当額を差し引いて計算するため、購入価格と売却価格の比較だけでは譲渡所得の有無を判断できません。

相続した家の取得費や取得時期は、原則として親御様のものを引き継ぎます。取得費の資料、建物の減価償却、譲渡費用、適用できる特例を整理して、税理士・税務署等へ確認しましょう。

親の家を売る場合の注意点

親の家の売却には、特有の注意点があります。

これらを知っておくことが、後のトラブルや思わぬ損を防ぐことに繋がります。

家の取得費を把握しておく

取得費は、親御様の購入代金や購入手数料等を基に計算します。建物は減価償却費相当額を控除します。取得費が不明な場合などには、売却収入の5%相当額を概算取得費として使う方法がありますが、実際の取得費を確認できる資料がないか、税理士等と検討しましょう。

購入時の売買契約書、領収書、通帳など、取得費を確認できる資料を探して保管します。見つからない場合も、直ちに売却を諦めるのではなく、確認できる資料と計算方法を税理士等へ相談してください。

家の売却にかかる特例の確認

親の家を売却する際には、税金が大幅に軽減されるいくつかの特例が利用できる場合があります。

ご自身の居住用財産を売却し、対象物件・売却時期・買主との関係などの要件を満たす場合は、最高3,000万円の特別控除を受けられることがあります。親御様と同居していたという事情だけで適用が決まるものではありません。

相続した空き家の特例にも、建築時期、利用状況、耐震改修・取壊し、売却期限等の要件があります。控除上限は原則3,000万円ですが、2024年以後の譲渡で対象の家屋・敷地を相続等した相続人が3人以上の場合は、1人当たり2,000万円です。申告や他の特例との関係も確認してください。

特例の適用可否は、売却・解体の前に税理士や税務署へ確認しましょう。不動産会社には物件や売却予定の資料を確認し、申告に必要な書類・期限も整理します。

親の家を納得できる条件で売るために

売却価格だけでなく、必要な費用、手元に残る金額、時期、親御様の住み替え先などを合わせて検討しましょう。

売却方法を検討する

家の売却方法には、主に「仲介」と「買取」の2種類があります。

「仲介」は不動産会社に買主探しを依頼する方法です。市場の反応を見ながら条件を調整できますが、成約までの期間や価格は物件の状況・需要によって異なります。

「買取」は、不動産会社が直接買主となる方法です。買主探しの工程を省ける一方、価格・買取可否・決済までの期間は、物件の状況や調査、契約条件によって異なります。仲介の場合の見通しと、買取で提示された条件を比較しましょう。

売却価格だけでなく、ご希望の時期、必要な手続き、費用負担、引き渡し条件を比較し、ご家族の状況に合う方法を選びましょう。

信頼できる不動産会社を選ぶ

依頼先を選ぶ際は、査定や販売計画の説明、連絡の取り方、費用と契約条件を確認します。

売却価格や期間には、物件の条件、市場の動き、売り出し価格なども影響します。担当者の説明を受けながら、販売状況に応じて方針を見直せるか確認しましょう。

査定の根拠、似た条件の取引経験、販売方法、費用の見積りを具体的に聞きます。法律・登記・税務の確認が必要なときは、誰へ相談すべきかも整理しましょう。

提示額の高さだけで決めず、ご家族の事情や希望を伝え、納得できる説明が得られる依頼先を選びましょう。

親の家を売るプロセスを知り慎重に進めよう

親の家の売却では、名義、本人の意思と代理権、相続手続き、売却条件、費用と税金を順に確認することが大切です。

親御様がご存命の場合は、ご本人の希望と今後の生活を中心に考えます。相続後は、遺言や相続人、取得者、共有の状況を整理し、必要な手続きを確認します。

家族で情報を共有することと、法律上必要な同意・権限の確認は区別します。親御様の単独所有なら、子や親族全員の同意が常に必要なわけではありません。一方、共有不動産全体を売るには原則として共有者全員の合意が必要です。意見がまとまらない場合や権限が不明な場合は、契約を進める前に弁護士等へ相談してください。

株式会社土地未来に売却・買取を相談する

制度に関する記載確認日:2026年9月26日。個別の法律・税務判断は、事情に応じて弁護士・司法書士・税理士等へご確認ください。

参考:e-Gov 民法(3条の2・99条・111条・653条等)、裁判所:居住用不動産の処分許可、法務省:相続登記の申請義務化、国税庁:土地・建物の譲渡所得、取得費となるもの、相続した土地・建物の取得費と時期、印紙税の軽減措置、マイホーム売却の特例、相続した空き家の特例。

親の家の売却・登記・税金の追加資料

2026年9月27日確認。既存の参考資料に加えて確認した資料です。個別の法律・登記・税務の判断は、事情に応じて弁護士・司法書士・税理士などへ確認してください。

関連記事

関連記事
カテゴリー
事業内容
  1. 不動産投資相談

  2. 不動産賃貸管理

  3. 不動産売却買取

  4. 不動産相続相談

  5. 不動産購入仲介

  6. 土地未来総建

会社案内
  1. 企業理念

  2. 会社概要

  3. スタッフ紹介 

  4. 代表挨拶 

  5. 採用募集

不動産コラム
  1. 古い家は解体してから売る?現況で売る?判断に必要な見積もり

  2. 相続順位と法定相続分|家族関係・遺留分・相続放棄の確認点

  3. 土地売却の相談先選び|査定の根拠と対応を比べるポイント

  4. 終活の始め方|財産・住まい・希望を整理する準備

  5. 相続した土地の売却時期|所有期間・税金・特例の確認点

  6. 空き家を売る方法|解体・費用・税金と契約前の確認点

  7. 不動産投資と相続対策|評価・手続き・注意点

  8. 土地の資産価値|公示価格・路線価・査定額の違い

  9. 親のマンションを相続する際の流れと相続後の活用方法を解説

  10. 高齢の家族と確認したい特殊詐欺の手口・対策・相談先

TOP