相続した土地をいつ売るか考えるときは、税金だけでなく、利用予定や維持費、売却価格も確認しましょう。「相続から5年以内」という理由だけで税率が高くなるわけではありません。この記事では、所有期間の判定、売却の手続き、特例の期限を整理します。
相続した土地の売却時期を判断できるよう、取得日の確認、手続きの期限、費用と税金の違いを順に説明します。個人が土地を売却する場合の一般的な内容であり、特例の適用は物件や相続人の状況に応じて確認します。
所有期間は、原則として被相続人の取得日を引き継いで判定します。相続した日から5年間待つ必要があるという意味ではありません。
参考:国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」、国税庁「譲渡所得の計算のしかた」(2026年9月25日確認)
以下の税率・計算例は2026年分の通常の税率を前提としています。2027年分以後の付加税の改正は、本文の「所得税に上乗せされる付加税」の説明もご確認ください。

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹(株式会社土地未来)
相続した土地の売却時期はどう判断する?
売却時期は、利用予定、管理の負担、見込める売却価格、税金と手続きの期限を合わせて検討します。相続から何年たったかだけで決めるものではありません。
税率の区分に使う所有期間と、取得費加算・空き家の特例などの期限は別です。売却を待つことで特例の期限を過ぎる場合もあるため、それぞれの条件を整理しましょう。
この章では、土地売却に関係する税率と、期限のある取得費加算の特例を説明します。
短期譲渡所得の場合は税率が高い
相続した土地の所有期間は、原則として被相続人が取得した日から引き継ぎます。売却する年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年を超える場合は「長期譲渡所得」として扱います。相続から5年以内の売却でも、長期譲渡所得に該当することがあります。
短期譲渡所得に対する税率は以下の通りです。
- 所得税:30%
- 住民税:9%
- 復興特別所得税:0.63%(30%×2.1%)
たとえば、通常の短期譲渡所得の税率39.63%を適用する場合、課税譲渡所得1,000万円に対する所得税・復興特別所得税・住民税の合計は396万3,000円です。
売却する年の1月1日時点で、被相続人から引き継いだ所有期間が5年を超えていれば、長期譲渡所得に該当します。取得から5年と1日が経過しただけで、その年の売却が長期になるわけではありません。
例えば、売却する年の1月1日時点で所有期間が4年10か月なら、引渡し時に5年1か月となっていても短期譲渡所得に該当します。判定基準は「5年未満」ではなく「5年以下」です。
長期譲渡所得に対する税率は以下の通りです。
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%(15%×2.1%)
通常の長期譲渡所得の税率20.315%を適用する場合、課税譲渡所得1,000万円に対する所得税・復興特別所得税・住民税の合計は203万1,500円です。
課税譲渡所得が1,000万円の場合、短期譲渡所得と長期譲渡所得で約190万円の差が生じます。
この税率の差により納める税金が大きく変わるため、相続した土地の売却タイミングは慎重に検討することが重要です。
維持コスト(管理費・固定資産税など)を抑えられる
土地の保有中には固定資産税などの負担が生じます。都市計画税は課税される地域等が定められているため、すべての土地に一律にかかるわけではありません。所在地の自治体の案内と納税通知書を確認しましょう。
税額は、評価額そのものに単純に税率を掛けるとは限りません。住宅用地の特例や負担調整などを反映した課税標準額を確認し、自治体の税率に基づいて計算します。
住宅用地の特例では、小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡まで)の課税標準は、固定資産税で評価額の6分の1、都市計画税で3分の1となります。これは課税標準の特例であり、解体すると実際の納税額が必ず6倍・3倍になるという意味ではありません。住宅用地の該当性や負担調整等を確認します。
将来的に使用する予定がない土地であれば、早めに売却して維持コストをなくすことも、有効な選択肢となります。
取得費加算の特例には売却期限がある
相続・遺贈で取得した財産について相続税が課税されている人は、期限などの要件を満たす売却により、相続税の一定額を取得費に加算できる場合があります。
この特例では、相続税の一部を取得費に上乗せすることができ、その結果、譲渡所得を減らし、課税額を軽減することができます。
売却期限は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。一般に「相続開始から3年10か月以内」と説明されますが、一律に相続から3年で終了する制度ではありません。個別の期限と加算額を確認し、必要書類を添えて確定申告します。
「相続税の取得費加算の特例」を活用するには、早めに売却の準備を進めることが重要です。
相続時・売却時・登記時の税金を区別する
相続税は財産を受け継ぐこと、所得税等は売却による所得、印紙税や登録免許税は文書作成や登記に関係します。すべてが売却時に一度にかかるわけではありません。主な税目と発生する場面を確認しましょう。
- 相続税
- 譲渡所得税
- 住民税
- 所得税に上乗せされる付加税
- 印紙税
- 登録免許税
これらの仕組みを理解しておくと、納税の準備がスムーズになります。
相続税
相続税は、土地だけでなく預貯金等も含む財産について、債務・葬式費用や加算対象の生前贈与などを反映して計算します。土地の売却代金に直接かかる税金とは異なります。
課税価格の合計額と基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を比較します。人数の数え方には養子や相続放棄に関する税務上のルールがあります。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で納税額がなくなる場合も、適用のための申告が必要なことがあります。
関連記事:不動産の相続税評価額の計算方法は?減額できるケースも解説
譲渡所得税
土地の売却代金から取得費・譲渡費用等を差し引いて、課税される譲渡所得を計算します。相続では原則として被相続人の取得費を引き継ぎます。取得費が不明な場合などは売却額の5%を取得費にできますが、残る資料から実際の取得費を確認できるかも検討します。
譲渡所得税の税率は、売却する年の1月1日時点の所有期間が5年以下か5年超かによって「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」に分かれ、短期の場合は税率が高くなる点に注意が必要です。計算時は、取得費加算などの特例が適用できるかも確認しましょう。
住民税
土地の売却による課税譲渡所得には、所得税等とは別に住民税もかかります。住民税は翌年度に課税され、所得税等の確定申告・納付と同じ日にまとめて納める仕組みではありません。
所得税の確定申告の情報は自治体にも連携されます。住民税の納付方法や時期は、自治体からの通知で確認し、売却代金から納税資金を確保しておきましょう。
所得税に上乗せされる付加税
2026年分は、基準となる所得税額に復興特別所得税2.1%を上乗せして計算します。2026年度の税制改正により、2027年分からは防衛特別所得税1%が加わり、復興特別所得税は1.1%となります。復興特別所得税の課税期間も2047年まで延長されました。本文の税率計算例は2026年分を前提としています。適用年の制度を確認してください。
参考:財務省:2026年度税制改正(防衛特別所得税・復興特別所得税)(2026年9月26日確認)
これらの付加税は、基準となる所得税額に対して計算し、所得税と併せて申告・納付します。本文の2026年分の合計税率には、所得税・復興特別所得税・住民税を含めています。
印紙税
印紙税は、課税対象となる紙の売買契約書などを作成した場合にかかります。電磁的記録として締結する電子契約は、印紙税の課税文書に当たりません。電子契約に伴い別途作る紙の文書は、その内容に応じて判断します。
契約金額が10万円を超え、2014年4月1日から2027年3月31日までに作成する不動産譲渡契約書には、印紙税の軽減措置があります。必要な原本の通数、各当事者の保管方法と負担額も契約前に確認しましょう。
登録免許税
不動産の登記を行う際に支払う税金です。相続した土地を名義変更する場合や、売却に向けて抵当権の抹消などをする場合にも必要になります。土地の評価額や登記内容によって税率や納付額が変わるため、事前に法務局や専門家に確認しておくと安心です。
相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として課税標準となる不動産の価額の0.4%です。一定の土地の相続登記には免税措置もあります。司法書士への報酬とは区別し、対象不動産と登記内容に応じた額を確認します。
関連記事:親の家はどうやって売る?売却の流れや税金についても解説
土地の売却に伴う諸費用
費用の要否や金額は、依頼する手続き、金融機関との契約、境界の状況などで異なります。以下を確認項目として使い、見積りでは報酬・税金・立替実費と支払時期を分けて確認してください。
土地の売却に伴う諸費用
| 費用項目 | 内容 | 金額・確認する条件 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 不動産会社に支払う取引の仲介費用 | 通常の上限額(税抜き・速算式) ・200万円以下:取引額の5% ・200万円超〜400万円以下:取引額の4%+2万円 ・400万円超:取引額の3%+6万円 建物の消費税相当額を除く価格で計算し、消費税を加えます。支払時期と実際の額は媒介契約で確認します。売買価格800万円以下では、媒介費用を勘案し、事前の説明・合意により依頼者一方につき税込33万円を上限とする特例があります。 |
| 印紙税 | 課税対象となる紙の売買契約書の印紙税 | 軽減税額の例:記載金額1,000万円超5,000万円以下は1万円、5,000万円超1億円以下は3万円。対象となる契約書の作成期限は2027年3月31日。 |
| 抵当権抹消費用 | 抵当権抹消登記の登録免許税等 | 登録免許税は原則として不動産1個につき1,000円。対象の土地・建物の数や申請内容、依頼する報酬等を別々に確認。 |
| 司法書士手数料 | 手続きを依頼する司法書士への費用 | 依頼する登記・書類収集等の範囲により異なります。報酬と登録免許税・証明書代等を分けた見積りを確認。 |
| 繰り上げ返済手数料 | 金融機関の契約・手続方法に応じた手数料 | 契約先の手数料表と完済予定日の精算額を確認。窓口・インターネット等の手続方法により扱いが異なります。 |
| 測量費用 | 境界確定が必要な場合の測量費用 | 土地の面積、境界資料、隣接地との立会い、公有地との境界確認等により異なります。作業範囲と見積りを確認。 |
書類の取得手数料と確認先
| 書類名 | 取得費用 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本 | 窓口交付の例:1通450円。取得方法・自治体の案内を確認。 |
| 被相続人の除籍謄本 | 窓口交付の例:1通750円。改製原戸籍の要否も確認。 |
| 被相続人の住民票除票 | 自治体と請求方法により確認。郵送時は送料等も必要。 |
| 相続人の戸籍の附票 | 本籍地の自治体と請求方法により確認。必要な記載範囲を提出先に確認。 |
| 相続人の住民票 | 自治体と請求方法により確認。必要な記載事項を提出先に確認。 |
| 手続きに必要な相続人の印鑑登録証明書 | 発行自治体に確認。必要となる人・通数は手続内容によります。 |
| 不動産登記事項証明書 | 1通50枚以内:書面請求600円、オンライン請求で送付520円、窓口交付490円。50枚を超える場合は加算あり。 |
| 固定資産評価証明書 | 物件所在地の自治体・都税事務所等に確認。課税台帳の記載件数等で手数料が変わる場合があります。 |
書類収集・登記・測量など、売買契約より前に支出する費用もあります。売却代金を受け取る時期と分けて、先に必要な資金を見込んでおきましょう。
相続した土地を売却する際に押さえておきたいポイント
相続した土地を売却する際は、事前に知っておくべき手続きや税金の仕組みなど、いくつか注意すべき点があります。以下5つについて、基本を押さえておくと安心です。
- 売却による所得と税金の負担者を確認する
- 土地を取得したときの資料を集めておく
- 確定申告の要否と特例の申告要件を確認する
- 譲渡所得と税率について
- 取得費が不明な場合について
これらを理解しておくことで、スムーズに売却手続きを進められるでしょう。
売却による所得と税金の負担者を確認する
売却による所得税等は、その所得が帰属する人ごとに計算します。共有不動産なら、原則として持分に応じて各共有者が譲渡所得を計算するため、相続人全員が一律に負担するわけではありません。
土地を売って代金を分ける換価分割などでは、分割内容と所得の帰属を確認します。相続税と売却による所得税等を区別し、売却代金の分配や諸費用の精算についても、税理士などと事前に整理しましょう。
土地を取得したときの資料を集めておく
被相続人が購入した際の売買契約書、領収書、仲介手数料や土地の改良費の資料などを集めます。保有中の固定資産税などの維持費が、そのまま取得費や譲渡費用になるわけではないため、資料ごとの目的を区別します。
取得費が不明な場合や、実際の取得費が売却額の5%より少ない場合は、概算取得費を使えます。購入代金の振込記録など、実額の確認に役立つ資料も探し、適用できる方法を比較してください。
確定申告の要否と特例の申告要件を確認する
土地売却で課税される譲渡所得が生じた場合は、給与所得者でも確定申告が必要になることがあります。所得税等の申告・納付と、翌年度の住民税の納付は時期が異なります。また、特例を使うために申告が必要な場合もあります。
申告しないまま放置すると追徴課税がかかるおそれもあるため、売却が完了したら早めに必要書類をそろえて手続きを進めましょう。必要書類の例として、売買契約書や領収書の写しなどがあげられますので、取引時の書類は保管しておくことが大切です。
譲渡所得と税率について
譲渡所得は、土地を売却したときに生じる利益のことで、その計算方法によって実際の納税額が決まります。売却する年の1月1日時点の所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、通常よりも高い税率が適用されるのが特徴です。一方、同日時点の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」として税率が抑えられ、納税額が軽減されます。
相続によって取得した土地でも、被相続人から引き継いだ所有期間が、売却する年の1月1日時点で5年を超えるかどうかが大きなポイントになります。売却時期によって税率が変わる可能性があるため、計画的に売りに出すかを検討する材料になるでしょう。また、譲渡所得が多額になる場合は特例の活用を含め、専門家にシミュレーションを依頼すると安心です。
取得費が不明な場合について
概算取得費の5%を必ず使わなければならないわけではありません。購入代金、購入時の手数料や改良費など、税務上の取得費に含められる実際の支出を、残る資料から確認できるか検討します。
このようなケースを避けるには、遺産整理の段階で関係書類を見つけ出し、少しでも正確に取得費を割り出せるようにしておくことが大切です。もし入手が困難なときは、専門家の協力を得て当時の資料を探す方法を検討するのも一案です。
所有期間と売却を待つ場合の注意点
売却する年の1月1日時点で、被相続人から引き継いだ所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得扱いとなるため、譲渡所得税や住民税の税率が高くなる場合があります。すぐに売却するべきか・そうでないかは、状況に応じて判断しなければいけません。
相続からの年数と、税率の判定に使う所有期間は別
税率の区分を確かめるには、被相続人の取得日と売却する年を確認します。そのうえで、待った場合の税額差、特例の期限、管理費用、価格変動の可能性を比較します。
税率を判断する所有期間は、相続後の期間だけではありません。被相続人の取得日を引き継ぎ、売却する年の1月1日時点までで判定します。相続後にさらに5年間保有することが一律に必要なわけではありません。
所有期間による税率の違い
| 所有期間 | 所得税・復興特別所得税 | 住民税率 |
|---|---|---|
| 5年以下(短期譲渡所得) | 30.63% | 9% |
| 5年超(長期譲渡所得) | 15.315% | 5% |
税率が低くても、売却価格や維持費が変われば手取り額が増えるとは限りません。また、相続税評価額と譲渡所得の取得費は別です。下記の特例も、適用できる条件と期限を確認して判断材料にしましょう。
早めに売却の準備を検討するケース
利用予定がなく、管理の負担や納税資金の確保が課題になる場合は、早めに価格調査や権利関係の整理に着手する方法があります。共有不動産全体を売るには共有者全員の意思を確認し、協議や登記に必要な時間を見込みます。
準備を始めても、直ちに売却を決める必要はありません。必要な納税資金、売却期限のある特例、現状での売却と整備後の売却の費用を比較して、無理のない日程を考えます。
すぐに売却しなくてもよいケース
自宅用地として使う予定がある場合などは、売却以外の選択肢も検討できます。相続から5年以内でも長期譲渡所得に該当することがあるため、税率だけを理由に待つのではなく、取得日・特例の期限・管理負担を確認しましょう。
相続人間で方針が決まらない場合は、管理方法や費用分担を整理しながら協議します。結論を待つ間も、相続登記・相続税の申告等の期限は別に確認し、必要に応じて弁護士や司法書士、税理士へ相談してください。
相続した土地を長期的に放置するリスク
相続した土地を活用せずに放置していると、予期しない出費や管理の負担、さらには資産価値の低下といったデメリットが生じる可能性があります。
保有を続ける場合には、期限のある特例を使えなくなる可能性と、保有する目的・将来の利用計画を合わせて確認します。保有期間が長いほど必ず税務上有利になるわけではありません。
この章では、土地を所有し続けることによって発生する代表的な3つのリスクについて、具体例を交えて詳しく解説します。
固定資産税の支払いが必要になる
土地を所有しているだけで、毎年「固定資産税」がかかります。
土地を使っていなくても、通常は保有に伴う税負担が続きます。非課税・免税点・減免などの扱いもあるため、個別の課税内容は納税通知書や自治体で確認しましょう。
税額は土地ごとに異なります。納税通知書で年間の負担を確認し、草刈り・見回り・管理委託等の費用と合わせて、保有する間の支出を見積もりましょう。
建物を取り壊すと住宅用地の特例が外れ、税負担が増える場合があります。解体の前に、翌年度以降の課税への影響を所在地の自治体に確認しましょう。参考:東京都主税局:固定資産税・都市計画税。
収益がない土地でも、将来の利用予定など保有する理由はさまざまです。保有目的と負担を比較し、売る・使う・管理しながら保有する方法を検討してください。
管理の手間がかかる
土地を所有していると、草刈りや清掃、不法投棄の防止など、物理的な管理の手間が発生します。
特に遠方に住んでいる場合は、定期的な見回りや外部委託の費用がかかることもあります。
草木の繁茂や不法投棄などを放置すると、近隣への影響や追加の清掃費用につながることがあります。自治体の条例等も確認し、遠方の場合は見回りや管理の担当を決めておきましょう。
価格や建物の状態が変わる可能性がある
土地や建物は、時間が経過することで価値が下がる可能性があります。
特に空き家が建っている場合、劣化が進みやすく、最終的には建物の取り壊し費用が発生することもあります。
将来の需要や価格は地域・物件ごとに変わり、売却できる時期や金額を保証することはできません。現在の取引事例、土地の条件、保有費用を確認し、価格が上がる場合と下がる場合の双方を想定します。
ただし、不動産価値が上昇する場合もあるため、まずは不動産会社に相談し、価値の動向を確認することをお勧めします。
売却以外の選択肢も比較したいケース
早期の売却が適するかは、利用予定、権利関係、資金計画によって異なります。売却を待つ場合も、相続の手続きや管理を止めてよいという意味ではありません。
ここでは、早期売却が必ずしも得策ではないケースについて考えてみましょう。
・売却年の1月1日時点の所有期間が5年以下である
・開発計画等を踏まえて今後の利用方法を検討している
・相続人間で処分方針が決まっていない
・賃貸等として活用できるか調べている
次項では、これらのケースについて個別に解説します。
売却年の1月1日時点の所有期間が5年以下である
相続した不動産は被相続人の取得日を引き継ぎますが、相続しただけで長期譲渡所得になるわけではありません。売却する年の1月1日時点の所有期間で判定します。
被相続人が比較的最近取得した不動産では、同日時点の所有期間が5年以下となり、短期譲渡所得に該当することがあります。
2026年分の通常の税率では、所得税・復興特別所得税・住民税の合計は短期39.63%、長期20.315%です。これは売却代金全額ではなく、取得費等を差し引いた課税譲渡所得に対する税率です。
相続したという理由だけで長期・短期を決めず、取得日を資料で確認します。長期になる年まで待つ案は、維持費や特例の期限も含めて比較してください。
開発計画等を踏まえて保有を検討している
周辺で再開発や交通整備が計画されている場合は、公表資料で事業の段階や予定、対象範囲を確認します。計画があるだけで、その土地の値上がりが決まるわけではありません。
売却を待つ場合は、現在の価格の目安と、待つ間の税金・管理費・資金需要を比較します。工事の延期や計画変更などの可能性も見込んでください。
価格の見通しは地域の取引状況や物件の条件にも左右されます。将来価格を一つに決めつけず、複数の想定で手取り額や負担を確認しましょう。
新しい公表資料や成約事例が出た時点で方針を見直せるよう、確認する時期と相談先を決めておくと判断しやすくなります。
相続人間で処分方針が決まっていない
共有不動産全体の売却と、自己の共有持分の処分は別の問題です。全体を売る際には共有者全員の意思確認が必要です。相続人の範囲や遺産分割が未確定なら、まず権利関係を整理します。
このような状況で一方的に売却を進めようとすると、法的なトラブルに発展する恐れがあります。また、感情的な対立が表面化することで、もともと良好だった関係性が壊れてしまうリスクも考えられます。
遺言や協議内容、各人の意向を確認し、売却方法と代金の分け方を整理します。紛争がある場合は弁護士へ相談し、協議中でも必要な登記・申告の期限への対応を進めてください。
資産として活用(賃貸など)を検討している
相続した土地や建物に活用の見込みがある場合、すぐに売却するのが必ずしも最善策とは限りません。
賃貸住宅や駐車場等の活用を考える場合は、法令上の制限、需要、初期費用と管理費を確認します。立地だけで安定した賃料収入が得られるとは限りません。
空室、修繕、借入返済、税金等も含めた収支を試算し、売却した場合の手取りと比較します。賃貸にすると使えなくなる売却の特例もあるため、運用を始める前に税務上の条件を確かめましょう。
相続した土地を売却する流れ
主な確認・手続きを7項目に整理します。すべてをこの順番で完了させる必要はなく、価格調査や書類収集は並行して進められます。相続税申告の完了を待ってから売却準備を始める必要もありません。
- ステップ①遺言書の有無を確認する
- ステップ②相続財産と相続人を調査する
- ステップ③遺産分割協議を行う
- ステップ④相続登記を申請する
- ステップ⑤相続税の申告を行う
- ステップ⑥土地を売却する
- ステップ⑦確定申告を行う
相続放棄等を検討する場合には、原則として自己のために相続が始まったことを知った時から3か月という期限もあります。処分を進める前に相談し、登記・相続税・売却に関する期限をそれぞれ管理してください。
ステップ①遺言書の有無を確認する
最初に、遺言書の有無と保管先を確認します。自宅などで保管された自筆証書遺言は原則として家庭裁判所の検認が必要ですが、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書と、公正証書遺言は検認が不要です。
複数の遺言がある場合は、新しい日付のものだけを残して判断せず、すべてを保管します。内容の抵触や有効性、遺言執行者の有無によって手続きが異なるため、判断に迷う場合は弁護士等へ確認します。
ステップ②相続財産と相続人を調査する
相続人の確認には、必要な範囲の戸籍・除籍・改製原戸籍等を市区町村へ請求します。一定の戸籍は本籍地以外の窓口で広域交付を受けられますが、請求できる人や対象書類に制限があります。不動産は法務局の登記事項証明書等で所在地・名義・権利関係を確認します。
預貯金や証券等に加え、借入金などの債務も調べます。遺産の範囲と相続人の確認を進め、相続するかどうかの判断に必要な情報を整理してください。
ステップ③遺産分割協議を行う
遺言の内容や相続人の構成を確認し、遺産分割協議が必要な場合は対象となる相続人全員で話し合います。登記に用いる協議書の押印や印鑑証明書等は、具体的な申請に必要なものを法務局・司法書士へ確認します。
売却代金を分ける予定なら、売主となる人、費用の負担、代金の分配方法を整理します。協議・紛争は弁護士、登記は司法書士、所得の帰属や税額は税理士など、相談内容に応じて確認先を分けましょう。
ステップ④相続登記を申請する
相続登記は遺言・遺産分割・法定相続分などの根拠に応じて、対象不動産を管轄する法務局へ申請します。売却に必要な名義・権利関係を整理し、必要書類と完了までの日程を確認します。
相続登記には登録免許税等がかかります。2024年4月1日に申請が義務化され、自分のために相続が始まったことと、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内が基本の期限です。施行前から取得を知っていた未登記の不動産は2027年3月31日までが期限となります。遺産分割成立後には別途、成立日から3年以内の登記義務もあります。遺産分割がまとまらない場合も放置せず、法務局や司法書士に相談しましょう。
ステップ⑤相続税の申告を行う
相続税の申告が必要な場合は、相続の開始を知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内に申告・納税します。基礎控除内などで申告不要の場合もありますが、特例の適用に申告が必要な場合があります。遺産分割が未了でも、申告期限が自動的に延びるわけではありません。
土地の評価方法や小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減などを確認します。小規模宅地等の特例には、取得者等によって申告期限までの保有・居住・事業継続が必要な場合があるため、売却日程を決める前に条件を確認してください。
ステップ⑥土地を売却する
売主となる人と権利関係を整理し、査定、売却方針の決定、媒介契約、販売活動、売買契約、決済・引渡しへ進みます。価格調査等は相続手続きと並行できますが、契約や引渡しまでに整える登記・必要書類は不動産会社と司法書士に確認します。
査定価格は成約価格を保証するものではありません。提示額だけでなく、根拠となる事例、境界等の条件、売却費用、引渡しまでの予定を確認し、納税資金も含めて売却方針を決めましょう。
ステップ⑦確定申告を行う
売却後は取得費・譲渡費用・特別控除等を確認して譲渡所得を計算し、申告の要否を判断します。特例で税額がゼロになる場合にも申告が必要なことがあります。所得税等の申告資料を整理し、翌年度の住民税も資金計画に含めてください。
取得費の資料が見つからない場合は、概算取得費を使うか、残る資料から実際の取得費を確認できるかを検討します。所得税等と住民税それぞれの納付時期を見込んで資金計画を立てましょう。
売却前に確認したい税の特例と適用条件
相続税の特例と、売却による譲渡所得の特例は別です。下記では主な制度を整理し、相続した土地には適用されない制度との違いや、寄附金控除の注意点も説明します。
- 相続税の優遇措置
- 取得費加算に対する特例
- 相続により取得した空き家の譲渡に対する特別控除
- 2009・2010年取得土地の控除との違い
- ふるさと納税の控除上限と申告
詳しく解説します。
相続税の優遇措置
相続税の基礎控除、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例は、売却時の譲渡所得を直接減らす制度ではありません。相続時の課税価格や各人の税額を計算する制度として、対象と申告要件を確認します。
ただし、それぞれ適用条件が厳密に決まっており、要件を満たさない場合は利用できません。要件の詳細は国税庁の資料や専門家に相談して確認するとよいでしょう。
取得費加算に対する特例
取得費加算の特例は、相続・遺贈で取得した財産を期限内に譲渡した場合、その取得者に課税された相続税の一定額を取得費に加算できる制度です。加算額には計算方法と上限があり、納めた相続税の全額を差し引けるわけではありません。
ただし、この特例は相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に限り適用されます。申告の際には相続税の計算明細書など書類の準備が必要です。適用を検討する際は相続税の申告書類をきちんと保管し、必要書類をそろえて税務署に確定申告を行うことを忘れないようにしましょう。
相続により取得した空き家の譲渡に対する特別控除
相続した空き家の売却には、要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。2024年以後の売却で、対象の家屋と敷地等を取得した相続人が3人以上なら上限は2,000万円です。主な確認事項は次のとおりです。
- 1981年5月31日以前の建築で、原則として相続直前に被相続人だけが住んでいた家屋であること(一定の老人ホーム入所等には例外あり)
- 区分所有建物でないこと
- 相続開始から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却すること
- 相続後、事業・賃貸・居住に使われていないことなど、家屋・敷地の使用要件を満たすこと
- 一定の耐震基準を満たす家屋の売却、または家屋を取り壊した敷地の売却などであること。2024年以後の売却では、売却翌年2月15日までに耐震改修・全部取壊し等を行う類型もある
- 売却代金が1億円以下であること
対象期間は2027年12月31日までの売却です。個別の売却期限のほか、売却相手・代金の合算・他の特例との併用などにも要件があり、上記だけで適用は決まりません。必要書類を添えた確定申告が必要です。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、一定の宅地等の相続税評価額を、限度面積まで減額する制度です。代表的な区分は以下のとおりです。複数の区分を選ぶ場合の限度面積や、取得者・利用・保有に関する要件も確認します。
| 土地の種類 | 適用限度枠 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 居住用の一定の宅地等(特定居住用宅地等) | 限度面積330㎡ | 減額割合80% |
| 事業用の一定の宅地等(特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等) | 限度面積400㎡ | 減額割合80% |
| 貸付事業用の一定の宅地等(貸付事業用宅地等) | 限度面積200㎡ | 減額割合50% |
適用には申告が必要です。取得者等によって相続税の申告期限まで保有・居住・事業を続ける要件があるため、早期の売却を決める前に税理士等へ確認してください。
2009・2010年に取得した土地の控除は、相続取得とは区別する
2009年・2010年に一定の方法で取得した国内の土地等には、要件を満たす譲渡所得から最高1,000万円を控除する制度があります。ただし、相続や遺贈によって取得した土地等は対象外です。被相続人の購入年だけで使えるとは判断できません。
この制度には取得相手、売却年、他の特例との併用等の条件と確定申告の要件があります。相続した土地の売却では、取得費加算や空き家の特例など、それぞれ該当する制度を区別して確認します。
空き家の特例と、自分のマイホームの特例を区別する
「被相続人の居住用財産(空き家)の特例」と、「自分が住んでいたマイホームを売る特例」は別の制度です。どちらも最高3,000万円の控除がありますが、対象や要件が異なります。
親が住んでいた家を相続してそのまま売却する場合は、まず空き家の特例の要件を確認します。相続人自身が居住した場合は、その使用状況を踏まえて自分のマイホームの特例を検討します。相続したという理由だけで控除を受けられるわけではありません。
控除額は適用できる上限と実際の譲渡所得によって決まります。特例を使って税額がゼロになる場合も、適用のための確定申告が必要です。
空き家の特例の「3人以上」は、法定相続人の総数ではなく、対象の家屋と敷地等を相続・遺贈で取得した相続人の数で判断します。
詳しい要件は、国税庁の空き家を売ったときの特例とマイホームを売ったときの特例を区別してご確認ください。
ふるさと納税の控除上限と申告
ふるさと納税は寄附を行い、所定の限度内で寄附額のうち2,000円を超える部分について所得税・住民税の控除を受ける仕組みです。不動産の売却代金が、そのまま寄附可能額になるわけではありません。譲渡所得や特別控除、他の所得・控除も踏まえて上限の目安を確認します。
ワンストップ特例を申請済みでも、不動産売却などのために確定申告をすると、その申請は無効になります。控除を受けるふるさと納税の全件を確定申告に含めましょう。控除上限は所得や各種控除で変わるため、売却額だけで判断しないようにします。
短期・長期譲渡所得の税額を比較する計算例
相続からの年数ではなく、被相続人から引き継ぐ所有期間で短期・長期を判定します。以下は個人の土地売却について、2026年分の通常の税率を使った仮の比較です。
【仮の条件】
- 購入価格(取得費):3,000万円
- 売却価格(譲渡価額):5,000万円
- 税務上の譲渡費用に該当する売却費用(仲介手数料など):200万円
- 特別控除なし
- ここでは、取得費の計算における減価償却などは考慮しません。
譲渡所得の計算
譲渡所得は以下のように計算されます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得 = 5,000万円 – (3,000万円 + 200万円)
譲渡所得 = 5,000万円 – 3,200万円
譲渡所得 = 1,800万円
この1,800万円が課税対象となる譲渡所得です。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)の場合
短期譲渡所得における税率は39.63%(所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63%)です。
したがって、納税額は次のように計算されます。
1,800万円 × 39.63% = 7,133,400円(約713万円)
長期譲渡所得(所有期間5年超)の場合
長期譲渡所得における税率は20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)です。
したがって、納税額は次のように計算されます。
1,800万円 × 20.315% = 3,656,700円(約366万円)
短期譲渡所得と長期譲渡所得の比較
| 所有期間 | 税率 | 税額 |
|---|---|---|
| 5年以下(短期) | 39.63% | 約713万円 |
| 5年超(長期) | 20.315% | 約366万円 |
結果の考察
同じ課税譲渡所得でも、長期・短期の区分によって税額が変わります。区分は、売却する年の1月1日時点の所有期間で確認します。売却時期は税金だけでなく、価格・維持費・特例の要件なども含めて検討しましょう。
注意点
長期になる年まで待てば必ず得になるわけではありません。売却価格、待つ間の維持費、特例の期限、必要な資金の時期も含めて、複数の日程を比較しましょう。
築年数と価格を考えるときの確認ポイント
築年数は価格を考える材料の一つですが、価格は立地・面積・建物の状態・管理状況・取引時点などでも変わります。築年数の異なる物件群の平均価格を、そのまま同じ物件の値下がり率として扱うことはできません。
マンション・一戸建て・土地について、売却前に確認したい項目を整理します。保有を続けるか判断する際は、物件ごとの状態と近隣の成約事例を合わせて確認しましょう。
マンションの場合
マンションは、建物全体の管理と住戸固有の条件を分けて確認します。「築5年なら何%下がる」と一律には決めず、近い条件の成約事例と比較します。
査定の根拠を確認するための項目は次のとおりです。売出し中の価格と、実際に成約した価格も区別してください。
| 確認する項目 | 資料・比較のポイント |
|---|---|
| 周辺の取引 | 成約時点、エリア、面積、築年数等が近い事例か |
| 立地と生活環境 | 交通手段、周辺施設、騒音等の条件 |
| 住戸の条件 | 専有面積、階数、方位、間取り、眺望 |
| 建物の状態 | 構造・設備、点検や修繕の記録 |
| 管理の状況 | 管理規約、総会資料、管理の実施状況 |
| 修繕計画 | 長期修繕計画、修繕積立金、予定する工事 |
| 継続する負担 | 管理費・修繕積立金、改定予定や滞納の有無 |
| 利用・権利関係 | 居住・賃貸の状況、敷地権や登記の内容 |
| 売却の条件 | 引渡し時期、残置物、必要な費用と手取りの見込み |
平均価格の比較では、対象地域・集計年・物件の面積等を確認します。条件の異なる集計値だけで、個別物件の将来価格を予測しないようにしましょう。
築年数別の平均値は、同じ物件を継続して追跡した値とは限りません。平均価格の差から「5年待つと必ずこの割合で下がる」と判断することはできません。
管理・修繕の記録は建物の状態を伝える資料になります。ただし、実施した工事の費用がそのまま売却価格に上乗せされるとは限りません。資料を査定担当者に渡し、評価への反映を確認してください。
一戸建ての場合
一戸建ての価格は土地と建物それぞれの条件に左右されます。木造住宅の法定耐用年数22年は税務上の減価償却の基準で、築22年を過ぎると市場価値や住宅の寿命が一律にゼロになるという意味ではありません。建物の性能・状態・修繕履歴や周辺の取引も確認して評価します。
中古戸建てでは、土地の条件と建物の性能・状態を分けて確認します。修繕やリフォームの履歴、点検結果など、状態を説明できる資料をそろえましょう。
中古戸建ての価格を確認する主な項目
| 確認する項目 | 資料・比較のポイント |
|---|---|
| 土地の条件 | 面積、形状、接道、境界、法令上の制限 |
| 構造と性能 | 構造・築年、耐震等の資料、建築時の書類 |
| 建物の状態 | 雨漏り等の不具合、点検結果、修繕の必要性 |
| 維持管理の履歴 | 修繕・設備交換・リフォームの内容と実施時期 |
| 利用・権利関係 | 居住・賃貸の状況、登記、隣地との関係 |
| 周辺の取引 | 成約時点と土地・建物の条件が近い事例か |
| 売却の条件と費用 | 現状で売る場合と整備する場合の費用・手取り |
参考:国土交通省:中古戸建て住宅の建物評価の改善に向けた指針
建物は築年数だけで一律に評価がなくなるものではありません。国土交通省の指針でも、性能や維持管理・リフォームを評価に反映する考え方が示されています。実際の成約価格は、買い手の需要や土地の条件なども含めて決まります。
売却前の修繕・リフォームは、実施費用と想定される効果を比較して判断します。費用を回収できる保証はないため、現状での売却案も含めて不動産会社に相談しましょう。
土地の場合
土地には建物のような築年数による減価償却はありませんが、市場価格は需要、法令、周辺環境、利用できる条件などで変わります。保有している間の価格が安定するとは限りません。
形状や接道、面積、高低差、境界、利用制限などを確認し、近い条件の取引事例と比較します。狭小地や旗竿地なども、呼び方だけで売却の可否や金額を決めるものではありません。
売却時期を検討するときは、想定価格だけでなく、所有期間による税率、特例の期限、管理費、測量等に必要な費用や時間を確認します。
査定を依頼したら、根拠となる取引事例や条件、価格に含めている前提を確認しましょう。査定額は成約を保証する金額ではないため、販売開始後の反応を見て方針を見直すことも大切です。
相続した土地を売却した後の確定申告のタイミング
土地売却に伴い確定申告が必要かは、譲渡所得の計算結果や他の所得、使う特例などで判断します。会社員でも申告が必要になる場合があり、特例の適用によって税額がゼロになる場合にも申告手続きが必要なことがあります。
所得税等の確定申告は、通常、売却した翌年の2月16日から3月15日までです。期限の日が土日・祝日等に当たる場合は翌開庁日となります。「期間内に土日が含まれる」だけで期限が延びるわけではありません。対象年の国税庁の案内を確認してください。
2025年分の所得税等の確定申告の受付期間は、2026年2月16日(月)から3月16日(月)まででした。対象年が異なる売却では、その年分の申告期間を確認しましょう。
相続した土地の確定申告で用意しておいた方がいい資料
取得費・譲渡費用や適用する特例を確認するため、関係資料を整理します。すべての書類を一律に提出するわけではなく、準備に使う資料と申告の添付書類を区別してください。
具体的には、以下のような資料が申告時に役立ちます。
【計算や確認に用いる資料の例】
1. 売却時の売買契約書・精算書・領収書
2. 購入時の契約書・領収書・代金の振込記録
3. 仲介手数料・測量費・解体費等の明細と領収書
4. 取得時期や権利関係を確認する登記事項証明書等
5. 特例に応じた確認書・相続税申告書・計算明細書等
必要書類と添付省略の可否は、適用する制度の案内で確認します。
取得費が不明な場合などには概算取得費を使えますが、実際の取得費を確認できるかも調べます。取得費加算の特例を使う場合は、対象者・売却期限・加算額を確認し、所定の計算明細書等を準備します。
不明な支出は、支払った目的と売却との関係を整理して税理士や税務署へ確認します。領収書があるだけで、すべて取得費・譲渡費用にできるとは限りません。
相続した土地の取得費と「5%ルール」の考え方
譲渡所得を計算するときの取得費は、もともとの購入代金や取得にかかった所定の費用等を基に計算します。売却代金から取得費・譲渡費用等を差し引いた結果と、特別控除等の適用を確認して税額を求めます。
相続税を計算した際の評価額や現在の査定価格が、そのまま譲渡所得の取得費になるわけではありません。被相続人の取得時の資料を確認することが出発点です。
通常、相続した土地では「被相続人の取得費」を引き継ぐ
相続した土地の取得費は、原則として被相続人の取得費を引き継ぎます。以下は、取得費1,000万円、税務上の譲渡費用100万円、特別控除なしとする仮の計算例です。
【前提条件】
- 被相続人(例:父)が生前に土地を1,000万円で購入していた
- 相続人(例:子)は相続後にその土地を3,000万円で売却
- 税務上の譲渡費用に該当する仲介手数料等は100万円
- 取得費は、被相続人が取得した金額(1,000万円)を使用
【計算例】
譲渡所得の計算式は次の通りです。
譲渡所得=売却価格ー(取得費+譲渡費用)
=3,000万円ー(1,000万円+100万円)
=3,000万円ー1,100万円
=1,900万円
売却年の1月1日時点で引き継いだ所有期間が5年を超え、2026年分の通常の長期譲渡所得の合計税率20.315%を用いる場合、計算上の税額は次のとおりです。
1,900万円×20.315%=385万9,850円(約386万円)
この例は所得税・復興特別所得税・住民税の合計です。実際の申告では、適用できる控除等と端数処理も確認します。
注意点
- 取得費は、被相続人が取得した金額を基に計算します。
- 売却にかかる譲渡費用(仲介手数料など)は、譲渡所得から差し引けます。
- 2026年分の通常の長期譲渡所得の合計税率は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の計20.315%です。
- 取得費加算の特例は、相続税が課税された人、対象財産、売却期限等の要件を満たす場合に検討します。申告と計算明細書等の提出が必要です。
このように、相続した土地の売却に際しては、正しい取得費を把握し、適切な申告を行うことが重要です。
売却額の5%を取得費とする概算取得費
取得費が分からない場合は、売却額の5%相当額を取得費として計算できます。実際の取得費がその5%相当額より少ない場合にも、この方法を使うことができます。
【前提条件】
被相続人の取得費に関する資料(売買契約書・領収書など)が一切ない
売却価格は2,000万円
【計算例】
1.概算取得費の計算:
概算取得費=2,000万円×5%=100万円
2. 特別控除前の譲渡所得:2,000万円(売却価格)-100万円(概算取得費)-税務上の譲渡費用
概算取得費を使う場合も、売却のために直接必要だった譲渡費用を区別して計算し、適用できる特別控除があるか確認します。
重要なポイント
概算取得費は、資料が全くないときだけに限定された制度ではありません。確認できる実際の取得費と比較し、適用できる計算方法を判断します。
売買契約書、購入代金の領収書、振込記録など、実際の支払額を確認できる資料を探しましょう。登記事項証明書は所有者や取得時期、固定資産税評価証明書は税務上の評価額を確認する資料であり、それだけで実際の購入代金を証明できるとは限りません。
取得費がわからない場合に確認したい資料
取得費を確認するため、残っている資料を整理します。以下には取引の支払額を示す資料と、所有状況・評価額を示す補助資料が混在しています。資料ごとの役割を区別し、取得費として採用できる金額は税理士や税務署に確認しましょう。
・購入代金の確認資料:古い売買契約書、領収書、銀行振込の記録
・補助資料:登記の記録、固定資産税評価証明書など
資料が示す内容と、実際の支払額をどこまで確認できるかを整理します。
当時の販売広告は募集条件を示す資料です。広告の価格が実際の購入代金と同じとは限りません。
公的資料から取得時期、所有者の履歴、評価額などを確認できる場合があります。取得できる書類や保存状況は発行窓口に確認し、資料の数字をそのまま購入代金に置き換えないようにします。
補助資料から推定した金額が、そのまま取得費として認められるとは限りません。推計の根拠と取引の実態を確認したうえで、概算取得費との比較を行いましょう。
税務署への対応
資料と算定根拠を整理したうえで、採用できる取得費や必要な申告書類を税理士・税務署へ確認しましょう。相談すれば推計額が必ず認められるという意味ではありません。
相続した土地の売却で確認したい質問
ここでは、譲渡費用、特例の併用、相続税の控除など、判断を迷いやすい点を整理します。
この章では、よくある質問に焦点を当て、丁寧に解説します。
譲渡費用には何を計上できる?
譲渡費用は、売却のために直接必要となった費用です。次の項目も、支出の目的や売却との関係を確認して計上します。
- 譲渡費用として計上できる主な費用
- 売却時の仲介手数料
- 土地の測量費
- 自身が負担した印紙税
- 建物の取り壊し費用
既存の売買契約より有利な条件で売るために支払った一定の違約金や、借地権を売る際に地主へ支払う名義書換料なども、譲渡費用になる場合があります。相続した土地かどうかだけで区別するものではありません。
注意点
維持管理のための固定資産税・修繕費などは、原則として譲渡費用にはなりません。一方、業務に使われていない不動産を相続した際の登記費用は、実額で計算する取得費に含められる場合があります。概算取得費の5%を使う場合、登記費用を別途加算することはできません。
適切に譲渡費用を計上することで、譲渡所得税の負担を軽減できるため、売却時にはこれらの費用を正確に把握しておきましょう。
特例・特別控除は併用できる?
特例の併用可否は制度の組合せによって異なります。例えば、同じ家屋・敷地等について、相続財産の取得費加算の特例と空き家の譲渡所得の特別控除は併用できません。
しかし、例外的に一部の特例と特別控除は併用が可能なケースも存在します。そのため、どの特例や控除を併用できるかを確認することが重要です。
併用の可否を調べる場合は、税理士などの専門家に相談し、正確な判断を仰ぐことをおすすめします。
相続税に適用できる控除・特例は?
相続税の控除や特例には、それぞれ対象となる人・財産・申告方法等の条件があります。概要だけで適用を決めず、該当する制度の案内を確認してください。
以下は、相続税に適用できる代表的な控除と特例のまとめです。
控除・特例の概要
| 控除・特例 | 概要 |
|---|---|
| 基礎控除 | 基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数。人数の数え方には、相続放棄や養子について税務上のルールがあります。 |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者が実際に取得した正味の遺産額について、1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い額までは、配偶者の相続税を軽減する制度。適用には申告等が必要です。 |
| 小規模宅地等の特例 | 一定の宅地等について限度面積まで評価額を減額。居住用・一定の事業用は80%、貸付事業用は50%。取得者や利用・保有等の要件と申告が必要。 |
| 未成年者控除 | 財産取得時に18歳未満の法定相続人が対象。住所・国籍等の要件や過去の適用状況を確認。 |
| 障害者控除 | 85歳未満で所定の障害に該当する法定相続人が対象。国内住所等の要件、障害の区分、過去の適用状況を確認。 |
代表的な控除・特例の詳細
・基礎控除:税務上の法定相続人が2人なら4,200万円。課税価格の合計額と比較します。
・配偶者の税額軽減:実際に取得した正味の遺産額について、1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い額までが基準。申告等が必要です。
・小規模宅地等の特例:区分ごとの面積、減額割合、取得者・保有等の要件を確認します。
・未成年者控除:要件を満たす人は18歳までの年数に応じて計算します。
・障害者控除:要件を満たす人は85歳までの年数と障害の区分に応じて計算します。
控除の残額、過去の適用なども個別に確認してください。
注意点
適用には、居住状況や相続人の関係性など、厳格な条件があるため、要件をしっかりと満たすことが必要です。また、適用可能な控除や特例を見逃さないよう、事前に確認しておくことが重要です。
相続財産と相続人の状況を整理し、申告の要否や各制度の条件を税理士等に確認します。納税額がゼロになる場合にも、特例の申告手続きが必要かを確認してください。
▼参照元
・基礎控除:国税庁(相続税の計算)
・配偶者の税額軽減:国税庁(配偶者の税額の軽減)
・小規模宅地等の特例:国税庁(相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例)
・未成年者控除:国税庁(未成年者の税額控除)
・障害者控除:国税庁(障害者の税額控除)
住宅ローンの返済額の5年ルールとは?
変動金利・元利均等返済の住宅ローンでは、金利が変わっても返済額の見直しを原則5年ごととする商品があります。返済額が同じ期間も、金利や元金・利息の内訳は変わり得ます。金利を5年間固定する制度ではなく、すべての商品・返済方式に適用されるわけでもありません。契約先の説明を確認しましょう。
売却時の注意点
売却時はローン残高と売却諸費用を確認し、売却代金で返済資金を賄えるか整理します。足りない場合は、自己資金等の手当てや金融機関との相談が必要になります。返済額の見直し時期だけで売却の可否を判断しないようにしましょう。
個人と法人では売却時の税金の計算がどう違う?
この記事の計算例は個人の土地売却を前提としています。2026年分の通常の短期譲渡所得では、課税譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税の合計税率は39.63%です。短期かどうかは、原則として被相続人の取得日を引き継いだ所有期間で判定します。
法人による売却は、法人税等の計算の中で検討します。会社全体の所得や適用される制度によって負担が変わり、個人の短期譲渡所得の税率だけと比較して「法人のほうが安い」とは判断できません。
所有者が個人か法人かによって計算の前提が異なるため、売却時期や名義変更を検討する際は、関連する税金や費用を税理士に確認しましょう。
主な制度説明の参照先
確認日:2026年9月26日。以下は今回見直した取得費・特例・期限等の参照先です。税額や制度の適用は個別の条件で異なります。
- 国税庁:取得費・取得時期
- 国税庁:概算取得費
- 国税庁:譲渡費用
- 国税庁:取得費加算の特例
- 国税庁:空き家の特例
- 国税庁:配偶者の税額軽減
- 国税庁:2025年分の申告期間
- 国税庁:ふるさと納税
- 法務省:相続登記の申請義務化
- 国土交通省:中古戸建て住宅の建物評価
- 国土交通省:仲介手数料
- 三井住友銀行:変動金利と返済額
まとめ
相続した土地の売却には、税金や手続きなど多くのポイントがあります。とくに、売却時期や所有期間によって税負担が大きく変わるため、事前に情報収集し、必要な準備を進めておくことが大切です。
また、特例や控除を活用することで、税金の負担を軽減できる場合もあります。自分の状況に合った方法を選び、専門家にも相談しながら、安心して土地の売却を進めていきましょう。
株式会社土地未来では、土地の取引を中心に、東京都内の不動産に関するご相談を承っています。相続した土地を売るかまだ決まっていない段階でも、物件の状況やお考えをお聞かせください。
費用と手続きの確認資料
2026年9月27日確認。既存の参照先に加え、費用・戸籍・遺言・相続の手続きに関する資料を掲載しています。個別の要件・必要書類は各窓口へ確認してください。


