不動産を相続する際は、相続税の計算基準である「相続税評価額」を理解することが大切です。
この記事では、宅地と建物の相続税評価の基本、賃貸している場合の区分、小規模宅地等の特例の確認点を整理します。
個別の評価額や特例の適用は、相続開始時の制度と、土地・建物・相続の資料を基に税理士へご確認ください。

宮原海斗(株式会社土地未来 代表取締役)

横田大樹(株式会社土地未来)
不動産の相続税評価額とは?
相続税評価額は、売却査定額とは異なる税務上の価額です。宅地の基本となる2つの評価方式と、建物の評価にも使う固定資産税評価額を区別して説明します。
- 宅地の路線価方式
- 宅地の倍率方式
- 土地・建物の固定資産税評価額
それぞれ見ていきましょう。
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路線価方式
路線価方式は、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額を基に評価する方法です。相続開始年の路線価を選び、対象地の地目・利用状況と、必要な補正・加算を確認します。個別の売却価格に一定割合を掛けて求めるものではありません。
| 計算方法 | 補正・加算後の1㎡あたりの価額 × 実際の地積(㎡) |
|---|---|
| 計算例 | 路線価:50万円/㎡、地積:100㎡、補正率:0.9と仮定。他の補正・加算がない場合、50万円×0.9×100㎡=4,500万円 |
奥行き・間口・形状や接する道路などを確認し、地区区分に対応する補正率表や評価の定めを使います。路線価図だけで全ての補正が分かるわけではありません。
倍率方式
倍率方式は、路線価が定められていない地域の宅地などに使う方法です。ここでは宅地の基本を示します。相続開始年の固定資産税評価額に、所在地・地目に対応する倍率を掛けます。
| 計算方法 | 固定資産税評価額 × 倍率 |
|---|---|
| 計算例 | 固定資産税評価額:2,000万円倍率:1.1相続税評価額:2,000万円 × 1.1=2,200万円 |
対象地が倍率地域かどうかは、国税庁の評価倍率表で確認します。市街化調整区域や郊外というだけで決まるものではありません。
農地・山林などは地目や分類によって評価方法が異なります。登記の地目だけでなく、相続開始時の現況も確認してください。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、固定資産評価基準に基づいて市町村(東京23区は東京都)が評価する価格です。自用の家屋の相続税評価は原則としてこの価格を基にしますが、一定の分譲マンションや貸家などでは補正・調整を確認します。
課税明細書では「価格(評価額)」と「課税標準額」を区別し、相続開始年に対応する資料を使います。現在の最新年度の価格を、過去の相続へそのまま当てはめないようにしましょう。
評価証明書や名寄帳などの取得方法・必要書類は、物件所在地の自治体に確認します。東京23区の土地・家屋は都税事務所の案内を確認してください。
相続した土地の評価の流れ
宅地の評価を確認するときは、次の4点を整理します。手順を踏めば必ず減額できるというものではなく、権利関係や利用状況、制度の要件に沿って判断します。
- ステップ①路線価地域と倍率地域のどちらに該当するか確認する
- ステップ②土地の個別条件と補正・加算を確認する
- ステップ③賃貸されているかどうかを確認する
- ステップ④小規模宅地等の特例を適用できるか確認する
順を追って見ていきましょう。
関連記事:相続した土地の価格はいくら?相続税評価額の計算方法を紹介
ステップ①路線価地域と倍率地域のどちらに該当するか確認する
相続開始年の国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で、宅地の評価方式を確認します。所在地と地目に対応する資料を選びます。
- 国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のページにアクセスする
- 相続開始年・都道府県・市区町村を選び、対象地の路線価図と評価倍率表を確認する
検索で路線価図が見つからないだけで倍率地域とは判断できません。所在地を確認し、評価倍率表の地域・地目の区分や「路線」の記載も照合します。不明な場合は税務署や税理士へ確認しましょう。
ステップ②土地の個別条件と補正・加算を確認する
宅地の奥行き・形状・道路との関係などによって、補正や加算が必要です。以下は確認する条件の例で、見た目だけで自動的に減額が決まるものではありません。
| 適用例 | 詳細 |
|---|---|
| 奥行きが長すぎる土地 | 地区区分・奥行距離に対応する奥行価格補正などを確認する |
| 不整形地 | 地区区分、想定整形地やかげ地割合など、評価の定めに沿って確認する |
| セットバックが必要な宅地 | 建替え時などに道路として後退する必要がある部分を確認する。単に車が通りにくいという理由で判定しない |
| 地積規模の大きな宅地 | 面積だけでなく、地区区分・区域・用途地域・容積率などを確認する |
| 利用価値が著しく低下している宅地 | 高低差・騒音などが取引価格へ影響する状況を確認する。路線価などに既に反映されている場合は重ねて減額しない |
上記の確認手順は以下のとおりです。
- 土地の形状や立地条件を現地で確認する
- 路線価図・評価倍率表に加え、該当する補正率表や国税庁の評価の定めを確認する
- 各条件に該当するかをリストアップする
- 税務上の評価や適用判断は税理士へ確認する
- 必要に応じて詳細な資料を用意し、専門家と一緒に評価減の適用を検討する
現況・資料と評価基準を照合し、必要な補正・加算を整理します。資料を集めること自体が、減額の適用条件になるわけではありません。
ステップ③賃貸されているかどうかを確認する
土地だけを貸す貸宅地と、自分の土地にある自分の建物を貸す貸家建付地では評価が異なります。使用貸借や定期借地権なども区別し、契約内容と相続開始時の利用状況を確認します。
賃貸状況は、次の資料・調査を組み合わせて確認します。どれか一つで確定できるとは限りません。
| 方法 | 詳細 |
|---|---|
| 契約書 | 土地・建物の契約書と契約期間、賃料、当事者、権利の種類を確認する |
| 不動産管理会社 | 管理を委託している場合は、賃貸状況の詳細を問い合わせる |
| 現地調査 | 利用状況を確認する補助調査。看板や外観だけで賃貸契約の有無を判断しない |
| 登記情報 | 所有権・登記された権利を確認する。登記に賃貸の記載がないことだけで、賃貸されていないとは判断しない |
契約書、賃料の入金記録、管理会社の資料や現況を照合し、税理士へ評価区分を確認します。
関連記事:賃貸管理は不動産投資成功の核心! 自主管理と管理委託の違い、具体的な業務内容を紹介 !
ステップ④小規模宅地等の特例を適用できるか確認する
小規模宅地等の特例は、一定の宅地等について相続税の課税価格に算入する価額を減額する制度です。用途・取得者・限度面積などによって適用が異なります。
主な区分は次のとおりです。面積と割合だけでなく、取得者ごとの継続要件や申告手続きも確認します。
- 特定居住用宅地等:330㎡まで80%減額。配偶者、同居親族、一定の別居親族などで取得者の要件が異なり、全員に同じ居住条件があるわけではありません
- 特定事業用宅地等:400㎡まで80%減額。貸付事業以外の事業の承継・継続・保有などを確認。特定同族会社事業用宅地等には別の要件があります
- 貸付事業用宅地等:200㎡まで50%減額。貸付事業の継続・保有や開始時期などを確認します
特例の適用には相続税の申告と必要書類の提出が必要です。原則として期限内の遺産分割が必要で、未分割の場合の手続きや複数区分の限度面積も税理士へ確認します。
参考|国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
相続した建物の評価の流れ
建物は、自用・賃貸の別や区分所有財産への該当性などを整理します。次の確認に加え、該当する評価の補正が必要です。
- ステップ①固定資産税評価額を確認する
- ステップ②賃貸されているかどうかを確認する
それぞれ見ていきましょう。
ステップ①固定資産税評価額を確認する
自用の家屋は原則として固定資産税評価額を基に評価します。相続開始年の課税明細書や評価証明書で、対象建物の価格を確認します。通知の時期は自治体によって異なります。
明細書が手元にない場合は、評価証明書などで確認できるか、物件所在地の市町村(東京23区は都税事務所)へお問い合わせください。
2024年1月1日以降に相続・遺贈・贈与で取得する一定の分譲マンションには、区分所有補正率を用いる評価ルールが適用されています。家屋と敷地利用権の両方を確認し、対象外の財産も含め、国税庁の資料で判定します。
ステップ②賃貸されているかどうかを確認する
建物が借家権の目的となっている貸家である場合は、自用の家屋としての価額を基に借家権割合と賃貸割合を反映します。分譲マンションの補正など、他に必要な評価も確認します。
借家権割合は対象年の財産評価基準書で確認します。賃貸割合は、各独立部分の床面積合計に占める賃貸中の各独立部分の床面積を基に計算し、戸数だけの比率とは区別します。一時的な空室には個別の取扱いがあります。
確認方法を以下にまとめました。
- 賃貸契約書を確認する
- 建物の管理会社に問い合わせる
- 現地調査を行う
契約・管理記録と相続開始時の現況を照合します。空室部分の扱いや評価の補正は税理士へ確認してください。
相続税評価額を減額できるケース
以下は、権利関係や利用状況などに応じて評価の調整を確認する主なケースです。複数の条件を重ねて適用できるかも、制度ごとに判断します。
- 土地を貸していて借地権等の負担がある
- 貸家建付地である
- 土地の面積が大きい
- 土地の条件が悪い
- 小規模宅地等の特例が利用できる
それぞれ見ていきましょう。
土地を貸していて借地権等の負担がある
ここでは、土地を貸している所有者側の「貸宅地」を評価します。土地を借りる側が持つ「借地権」の評価とは別です。建物所有目的の地上権・土地賃借権など、設定された権利の種類を確認します。
普通借地権の目的となっている貸宅地の基本式は次のとおりです。定期借地権等の負担がある宅地には別の評価方法があります。
借地権割合は路線価図や評価倍率表で確認します。取引慣行のない地域には別の取扱いがあるため、所在地・契約内容を確認します。借りる側の借地権を相続した場合には、この貸宅地の式を使用しません。
貸家建付地である
貸家建付地は、借家権の目的となっている家屋の敷地です。例えば、自分の土地にある自分のアパートを貸している場合などが該当します。土地だけを貸す貸宅地とは区別します。
借地権割合・借家権割合は対象年の資料で確認し、賃貸割合は各独立部分の床面積と賃貸状況から計算します。空室や社宅などの取扱いも含め、契約と利用状況を確認してください。
土地の面積が大きい
広い土地を相続する場合、特定の条件を満たすことで相続税評価額が抑えられる場合があります。この条件を満たす土地を「地積規模の大きな宅地」と呼びます。
地積規模の基準は、制度で定める三大都市圏では500㎡以上、それ以外では1,000㎡以上です。市街化調整区域は原則対象外ですが一定の例外があり、工業専用地域や指定容積率などの除外条件も確認します。
路線価地域では普通住宅地区または普通商業・併用住宅地区などの要件があります。利用単位ごとの面積と、路線価図・都市計画情報を照合し、単に広い土地だから適用できるとは判断しません。
土地の条件が悪い
不整形・間口狭小・奥行きなどの条件により、必要な補正を確認します。複数道路に面する場合などの加算もあるため、減額率を機械的に掛けるものではありません。
地区区分と土地の形状・寸法に対応する補正率表を使います。自用地の価額に既に反映した補正を、もう一度掛けて二重に減額しないよう注意しましょう。
小規模宅地等の特例が利用できる
小規模宅地等の特例は、用途・取得者ごとの要件により限度面積と割合が変わります。次の事項を確認します。
| 手順 | 詳細 |
|---|---|
| 国税庁の資料を参照 | 相続開始時の制度と、申告に必要な手続きを確認する |
| 該当する宅地の種類を特定 | 相続する宅地が「居住用」「事業用」「貸付用」のいずれに該当するかを特定する |
| 条件の詳細を確認 | 取得者・利用状況に応じた要件を確認する。同居の有無だけで判断せず、居住・事業・保有の継続なども調べる |
| 必要書類の準備 | 計算明細書、遺産分割協議書の写しなど、適用区分に応じた申告の添付書類を確認する |
| 専門家への相談 | 税理士などの専門家に相談する |
要件に該当するかを確認し、必要な申告・添付書類を準備します。特例を使って税額が出なくなる場合でも、申告が必要です。
参考|国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
まとめ
相続税評価では、土地・建物の状態と制度の要件を資料で確認します。正しく計算すれば必ず税額が下がるというものではありません。
相続開始年の路線価や固定資産税評価額、利用状況・権利関係、特例の適用条件を整理し、税理士へ確認しましょう。
土地・建物の売却や活用を検討する場合は、税務上の評価額と売却査定額の違いにも注意し、ご家族の希望や必要な資金を合わせて検討してください。
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