- 1. 借地料とは借りている土地の地主に払うお金を指す
- 2. 借地料の相場と計算方法
- 3. 借地として利用する際のメリット
- 4. 借地として利用する際のデメリット
- 5. 借地として活用できなければ売却する手段もある
借地料とは借りている土地の地主に払うお金を指す
借地料とは、簡単に言えば「借りている土地の地主に、土地の使用料で支払うお金」を指します。全ての土地には所有者がおり、国が持っている場合もあれば、個人が所有していることもあります。誰が所有している場合でも、土地の使用権を持つのは所有者であり、他の人が勝手に使うことは許されません。
しかし、土地の所有者が必ずしも土地を利用するとは限らないため「借地」にして貸出し、必要な人に土地を活用してもらいます。使用者は土地を活用でき、所有者は所有する土地を無駄にせずにすみ、かつ借地料が得られるため、双方にメリットがあります。
土地の貸出しを行う際には、契約によって「借地権」が発生し、これは土地を借りて、使用する権利と考えましょう。土地を借りた人は借地権者、地主は借地権設定となるため、借地料=土地の権利の使用料とも言えます。
借地料の相場と計算方法
自己所有の土地を借地に活用する際には、使用料である借地料を設定しなければなりません。厚意で無料で提供することも不可能ではありませんが、それでは自身に利益が出ず、使い方次第では土地が傷んで損をすることもあります。
土地を活用するなら、少しでも利益が出るように考えなければならず、不動産を守るためにも使用者と契約して、取り決めを作ったほうがよいでしょう。不動産を借地に設定する際には、借地料をいくらにするか考えなければなりません。借地料の相場と算出方法を知り、手持ちの土地の適正価格を把握しましょう。
土地の利用方法や地域や地代の種類によって変わる
借地料の相場は、「土地の利用方法」「地域」「地代の種類」によって異なります。土地の利用方法は使用者によって違い、主に以下の3つの分けられます。
- 建物を建てて使用
- 建物を建てずに使用
- 簡易な設備を建設
それぞれ個人用と事業用で使い道が違い、用途によって借地料も異なります。例えば建物を建てる場合でも、個人宅用に使用することもあれば、アパートやマンション経営に使用することもあるでしょう。賃料が発生する事業用の使い方なら、収益に応じて借地料を設定できるため、個人宅用より高く請求することも可能です。
また、地域によって地価が違い、借地料はこれにも影響されます。さらに地代の種類も関係し、大きく「新規地代」「継続地代」の2つに分けられます。複数の要素から借地料が決定するため、算出方法も幅広いのが、借地料の特徴です。
固定資産税の2倍から4倍が最低水準
不動産の所有には固定資産税がかかるため、これを基準に借地料を算出することもあります。固定資産税を基準にする場合、2~4倍が最低水準です。「土地の状態」「周辺環境」「使用用途」などによっては、さらに高い金額の設定も可能です。
あくまで最低水準であるため、借主さえ納得するなら、水準を上回っても問題ありません。ただし、あまり高くし過ぎると、借り手が現れない可能性が高くなるため注意が必要です。固定資産税は、市役所で「固定資産税評価証明書」をもらって確認します。証明書を借主に提示することで、借地料の交渉も進めやすいでしょう。
路線価による算出方法
路線価からも借地料の算出は可能であり、路線価格から更地価格を算出し、更地価格の1.5~3%を相場にすることが多いです。更地価格は路線価の80%で求めます。路線価は国税庁のホームページで確認出来るため、事前にチェックし、計算しておきましょう。
路線価とは、周辺環境に対しての土地の価値であるため、「地代が高い」「利便性が高い」地域ほど、高くなる傾向にあります。国税庁が発表する価値であるため、交渉時の資料の中でも信頼度が高く、路線価で借地料が決められるケースは多いです。
賃貸事例比較法による算出方法
借地料については、賃貸事例比較法から借地料を算出することも可能です。これは実際の賃貸の事例から似たような状態の不動産を探し、それらと比較して借地料を定めるものです。似た事例から参考にするため、相場を知りながら借地料を設定でき、借主、貸主ともに納得しやすい決め方と言えるでしょう。
ただし、賃貸事例比較法では、該当不動産の周辺の賃貸事情、データを参考にするため、情報が少ない場合は算出が難しい場合もあります。都市部なら問題はありませんが、地方では比較対象が少なく、相場価格が下がる可能性もあるため、注意しなければなりません。
また、賃貸事情に精通していなければならず、素人では算出が難しいため、不動産会社に依頼して算出してもらうのが確実でしょう。土地活用のプロが集うGen’Zを利用して、自分の土地に最適な土地活用方法を探してみましょう。
収益分析法による算出方法
収益分析法による算出とは、土地を貸し出した際にどれくらいの利益が出るかを考え、借地料を算出するものです。借地権者がどのような「建物」を建てるかによって金額は異なり、建物の「容積率」「高さ」「建ぺい率」など、複数の要素から収益を分析します。
収益分析法は、収益に対しての借地料設定になるため、適切な金額に決めやすいですが、自身で算出するのは非常に難しいです。無理に計算して間違った水準で設定すると、損をする可能性もあるため、無理せず専門家に依頼して、正しい金額を算出してもらいましょう。
- 相場は土地で変わる
- 周辺環境も影響
- 算出方法は様々
借地として利用する際のメリット
自己所有の土地を借地で貸し出す場合、「借地料の算出・設定」「借主の選定」など、やらなければならないことは多いです。そのため、面倒に感じて借地にするのを諦めてしまう人もいるでしょう。自己所有の土地なら、使用せずに余らせても問題ありませんが、実は多少面倒でも、借地で利用することには大きなメリットがあります。
せっかくの不動産を活用しないのはもったいないため、借地にするメリットを利用し、余らせている土地を有効活用しましょう。
ほとんど投資せずに利益回収を始められる
借地で利用するメリットは、素早く利益回収が出来ることであり、借地の場合、初期投資はほとんど必要ありません。土地を自身で活用するなら「アパートやマンションの建設」「駐車場にするための工事」などが考えられます。
これらは建設後は利益を回収出来ますが、初期投資が大きくかかることもあり、利益回収までの期間も長いです。加えて必ずしも経営が成功するとは限らず、ハイリターンが期待出来るものの、リスクも高いです。借地にするだけなら、土地の状態を確認し、地盤に問題ないかチェックするだけで済みます。
最低限の準備でコストをかけずに運用でき、契約してすぐに利益が得られるため、ハードルの低い土地活用方法と言えます。
土地の管理を人に任せられる
借地で貸し出した土地の管理を、借主に任せられることも借地のメリットです。自己所有の土地をどのように活用しようと問題はありませんが、将来的な運用を考えているなら、こまめに手入れし、綺麗な状態を維持しなければなりません。
土地は放置するとどんどん価値が下がり、いざ使おうと思ったときに使えず、使用を再開するために手間やコストがかかることも多いです。借地で土地を使用している人がいるなら、管理をその人に任せることができ、かつ毎月借地料も得られます。
管理会社に委託して土地を管理してもらうと費用がかかりますが、借地なら賃料も得て管理も任せられるため、経済的なメリットも大きいでしょう。
土地所有における様々な税金対策になる
不動産を所有していると、各種税金がかかるため、土地は持っているだけでもコストがかかります。借地にすることで税金対策にもつながり、なにもしないより経済負担は小さくなります。借地にすることで相続税の控除額が発生し、控除額の計算式は以下の通りです。
- 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
法定相続人の数が多いほど控除額は大きくなり、最も少ない場合でも最低6,000万円の控除は受けられます。不動産相続にかかる税金は莫大であるため、少しでも控除が受けられるのは大きなメリットでしょう。また、借主が土地に建物を建てた場合、「都市計画税」と「固定資産税」も減額されます。都市計画税は最大1/3、固定資産税は最大1/6まで減るため、税金対策のために借地にしている人も少なくありません。
- 初期投資はほぼ不要
- 管理が楽になる
- 税金対策にもなる
借地として利用する際のデメリット
余っている土地は借地にすることで、複数のメリットが得られますが、同時にデメリットも存在するため注意しなければなりません。借地は不動産投資の中でも比較的簡単で、初心者にもおすすめの土地活用方法ですが、やり方次第では失敗する可能性もあります。
また、借主と貸主という関係になり、借主とは長い付き合いになることも多いです。金銭トラブルはもちろん、人間関係のトラブルが起きることも多く、これにも注意しなければなりません。メリットだけではなく、デメリットも把握した上で、本当に借地で活用すべきか考えてみましょう。
契約期間中は土地を地主の自由に使う事は不可能
借主と貸主という構図から、土地を貸している地主のほうが有利な立場にあると考える人も多いですが、これは間違いです。契約を結び、借地権が設定されると、契約期間中に地主が土地を自由に使うことは出来ません。契約期間中は借地権者が土地を自由に使えるため、地主が手出しすることは出来ず、自己都合で契約の打ち切りも契約違反になります。借地権は数十年単位の長期契約になることが多いため、貸出しは計画的に行わなければなりません。
契約後、数年経ってから土地を使いたくなっても、借主から契約中断の申し出がなければ、土地の使用を再開することは出来ないため、注意が必要です。
近隣住民や借地権者とのトラブルへの対処が必要
契約期間中、地主は土地に手出しは出来ませんが、周辺の人間関係には介入しなければならないことが多いです。借地権者の土地の活用方法によって近隣住民に迷惑をかけると、クレームが直接地主に入るケースは多いです。
土地の所有権を持っている以上、責任を問われる立場にあるため、クレームが入ればこれに対処し、解決を目指さなければなりません。また、借地権者自身とのトラブルにも対処しなければならず、土地の活用方法から契約内容の見直しまで、すべきことは多いです。
土地の活用方法が契約に違反する、あるいは近隣住民に迷惑をかける場合は注意喚起し、トラブルを予防する必要があります。また借地料をめぐって契約後にトラブルになることもあるため、借主とは良好な関係を築き、共通認識を持って土地を活用してもらうことが大切です。
相続に関する問題が多い
借地にすることで、相続税の対策にもなりますが、一方で問題が発生することも多いです。土地の相続には莫大な相続税がかかることが多く、控除があってもかなりの負担になることもあります。通常なら、土地を売却し相続税を相殺、残った部分は自身の利益に出来ますが、借地の場合、土地の使用者がいるためこれが難しいです。
ルール上は借地の売却は可能なものの、使用状況によっては売却が難しいことも多く、相続する場合に備えて相続税用に蓄えを作らなければなりません。また、相続後も借地の契約は継続するため、契約期間中に相続人が土地を活用することも出来ません。
契約解除は正当な理由がなければ出来ず、不当な解除は契約違反で高額な立退料が必要です。相続を考えて、借地の契約期間を短く設定することも可能ですが、借主は長期契約を求めることがほとんどです。そのため、短期の貸出しでは借り手がつかず、結局借地で活用するなら長期契約となり、デメリットは発生してしまいます。
- 土地活用が出来ない
- 人間関係が大変
- 相続時のトラブルも
借地にはメリットはもちろんデメリットも多くあり、その特徴をしっかりと理解してから借地を検討することが大切です。また、契約形態やその地代についてもやや複雑なため専門的な知識がなければ判断に難しい場面もあるかもしれません。
借地として活用できなければ売却する手段もあり
余っている土地は借地に利用するのがおすすめですが、貸出しは計画的に行わなければなりません。借主との関係構築や相続における問題がある場合は、無理に借地にせず、売却するのも一つの手です。借地にしての活用は、あくまで土地活用方法の一つであり、他にも使い道はたくさんあります。売却も活用方法の一つであるため、状況に応じて適切な選択をし、最も利益になるのはなにかを考えましょう。