④不動産相続

相続した土地の価格はいくら?相続税評価額の計算方法を紹介

親が亡くなり、実家や田畑などの土地を相続することになった際、多くの人が「この土地の価値は一体いくらなのだろうか」「相続税はどのくらいかかるのだろうか」という疑問や不安に直面します。

土地の価格は、普段の生活ではあまり意識することがないため、いざ相続となると、その評価方法や税金の計算方法が分からず戸惑うのは当然のことです。

特に相続税の計算は、土地の評価が大きく影響するため、その仕組みを正しく理解しておくことが非常に重要になります。

この記事では、相続した土地の価格、つまり「相続税評価額」の調べ方や計算方法を具体的に解説します。

さらに、算出された評価額をもとに相続税額を計算する手順や、知っておくと税負担を軽減できる特例・控除についても詳しくご紹介します。最後までお読みいただければ、土地相続に関する税金の全体像を掴み、適切な手続きを進めるための知識が身につくでしょう。

監修者
宮原海斗

宮原海斗株式会社Gen’Z 代表取締役

宅地建物取引士/相談診断士

横田大樹

横田大樹株式会社Gen’Z 専務執行役

宅地建物取引士/相談診断士

土地の評価額とは

一口に「土地の価格」と言っても、実は1つの土地に対して複数の価格指標が存在します。これを「一物四価(いちぶつよんか)」あるいは「一物五価」と呼びます。

具体的には、実際に市場で取引される価格である「実勢価格(時価)」、国土交通省が公表する「公示地価」、都道府県が公表する「基準地価」、市町村が固定資産税を計算するために用いる「固定資産税評価額」、そして、相続税や贈与税を計算する際の基準となる「相続税評価額(路線価または倍率方式で算出)」の5つです。

これらの中で、土地を相続した際に最も重要となるのが「相続税評価額」です。相続税は、この相続税評価額を基に計算されます。一般的に、相続税評価額は実勢価格の8割程度の水準になるように設定されており、固定資産税評価額は実勢価格の7割程度が目安とされています。相続手続きにおいては、まずこの相続税評価額を正確に算出することから始まります。

路線価による相続税評価額の計算方法

相続税評価額の計算方法は、土地の所在地によって「路線価方式」と「倍率方式」の2つに分かれます。

「路線価方式」は、主に市街地の宅地など、道路(路線)に価格が設定されている地域で用いられる計算方法です。路線価とは、その道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額を千円単位で示したもので、国税庁が毎年7月頃に公表します。

路線価は、国税庁のウェブサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で誰でも確認することができます。相続した土地が面している道路の路線価を調べ、その数値に土地の面積を掛けることで、相続税評価額を算出します。

計算式は以下の通りです。

相続税評価額 = 路線価 × 土地の面積(㎡)

例えば、路線価が「300D」と表示されている道路に面した200㎡の土地の場合、路線価は300,000円/㎡となります。(アルファベットのDは借地権割合を示します。) この場合の相続税評価額は、「300,000円/㎡ × 200㎡ = 6,000万円」となります。

ただし、これは土地がきれいな長方形や正方形の場合の計算方法です。土地の形状が不整形であったり、間口が狭かったり、奥行きが長すぎたりする場合には、利用価値が低いと見なされ、定められた補正率を用いて評価額を減額する調整が行われます。この補正計算は複雑なため、正確な評価額を知りたい場合は専門家である税理士に相談することをおすすめします。

評価倍率による相続税評価額の計算方法

「倍率方式」は、路線価が定められていない郊外の宅地や農地、山林などで用いられる計算方法です。路線価方式に比べて、計算は比較的シンプルです。

倍率方式では、その土地の「固定資産税評価額」に、国税庁が地域ごと・地目ごとに定める「評価倍率」を掛けて相続税評価額を算出します。

計算式は以下の通りです。

相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率

固定資産税評価額は、毎年4月~6月頃に土地が所在する市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」に同封されている「課税明細書」で確認できます。評価倍率は、路線価と同様に国税庁のウェブサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地で、評価倍率表に「宅地 1.1」と記載されていた場合、相続税評価額は「2,000万円 × 1.1 = 2,200万円」となります。

このように、相続した土地が路線価地域にあるか、倍率地域にあるかを確認し、それぞれに応じた方法で相続税評価額を求めることが第一歩となります。

相続税を算出する際の手順

土地の相続税評価額が算出できたら、次はいよいよ相続税額の計算に進みます。相続税は、土地だけでなく全ての遺産を合算した上で計算され、4つのステップを経て各相続人が納める税額が確定します。

手順①遺産総額を算出する

まず、亡くなった方(被相続人)が遺した全ての財産をリストアップし、その総額を確定させます。相続財産には、今回評価額を算出した土地のほか、建物、預貯金、株式などの有価証券、生命保険金(非課税枠を超える部分)、自動車といった「プラスの財産」が含まれます。

同時に、借入金や未払金、ローンなどの「マイナスの財産(債務)」も確認します。プラスの財産の合計額から、マイナスの財産の合計額と葬式費用を差し引いたものが、相続税計算の基礎となる「正味の遺産額」です。

手順②課税遺産総額を算出する

次に、手順①で算出した正味の遺産額から「基礎控除額」を差し引きます。この基礎控除額を差し引いても、なお財産が残る場合にのみ、相続税が課税されます。

基礎控除額の計算式は以下の通りです。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の合計3人いる場合、基礎控除額は「3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円」となります。 正味の遺産額が4,800万円以下であれば、相続税はかからず、税務署への申告も原則として不要です。遺産額が基礎控除額を超える場合、その超えた部分が「課税遺産総額」となります。

手順③法定相続分から相続税の総額を算出する

課税遺産総額が確定したら、次に「相続税の総額」を計算します。ここでのポイントは、実際の遺産分割の内容はいったん無視して、課税遺産総額を法律で定められた「法定相続分」の割合で各相続人が取得したと仮定して計算を進める点です。

法定相続分で按分した各人の取得金額に、それぞれ国税庁が定める相続税の税率を掛けて税額を算出します。そして、各人ごとに算出した税額を全て合計したものが、「相続税の総額」となります。この方法により、実際の分け方によって税額が変動することを防いでいます。

手順④取得した割合に応じてそれぞれの相続税額を算出する

最後に、手順③で算出した「相続税の総額」を、遺言や遺産分割協議によって決まった、各相続人が実際に財産を取得した割合に応じて按分します。

例えば、相続税の総額が500万円で、配偶者が遺産の60%、子供が40%を相続した場合、それぞれの納税額は配偶者が300万円、子供が200万円となります。

このようにして、各相続人が最終的に納付すべき相続税額が確定します。ただし、この後で説明する各種控除を適用できる場合は、ここからさらに税額が減額されます。

相続税評価額が減額する要素

土地の評価額は、その土地が持つ個別の事情によって、画一的な計算で算出された評価額からさらに減額できる場合があります。

ここでは、代表的な減額要素について解説します。

貸付建付地

被相続人が所有する土地の上にアパートや貸家などを建て、第三者に貸し付けていた場合、その土地は「貸家建付地(かしやたてつけち)」として評価額が減額されます。土地の所有者であっても、入居者がいるため自由な利用が制限されるためです。減額割合は地域によって異なり、借地権割合や借家権割合を用いて計算されます。

小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」は、相続税の特例の中でも特に節税効果が高い制度です。被相続人が住んでいた土地や事業を行っていた土地などを、一定の要件を満たす親族が相続した場合に、その土地の評価額を最大で80%も減額することができます。例えば、評価額が1億円の土地でも、この特例が適用できれば2,000万円として相続税を計算できます。適用要件が非常に複雑なため、利用を検討する際は必ず専門家に相談しましょう。

借地権

土地の所有権そのものではなく、建物を建てるために他人から土地を借りる権利である「借地権」も相続財産の対象となります。この借地権を相続した場合、更地(自用地)の評価額に、路線価図に記載されている借地権割合(30%~90%)を乗じて評価額を算出します。

私道

相続した土地の中に私道部分が含まれている場合、その私道の利用状況によって評価額が大きく変わります。不特定多数の人が自由に通行できる「公共の用に供される私道」と評価された場合、その評価額はゼロとなります。一方で、特定の居住者のみが利用するような私道の場合は、通常の土地評価額の30%で評価されます。

広大な土地

都市部にある面積が広大な土地(三大都市圏で500㎡以上など)は、大きすぎて一般の個人には売却しにくいという市場性の低さを考慮して、評価額が減額される「地積規模の大きな宅地の評価」という制度があります。適用には面積要件のほか、様々な条件を満たす必要があります。

相続時に役立つ控除

相続税の計算手順の最終段階では、各相続人の状況に応じて、算出された税額から直接差し引くことができる各種「税額控除」が用意されています。これらを活用することで、納税額を大きく抑えることが可能です。

配偶者控除

正式名称を「配偶者の税額軽減」といいます。亡くなった方の配偶者が遺産を相続した場合、取得した遺産額が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは、相続税がかからないという非常に強力な控除です。この控除を適用するためには、相続税の申告が必要です。

未成年者控除

相続人が18歳未満(※)の未成年者である場合に適用できる控除です。控除額は、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算されます。 (※2022年4月1日の民法改正により、成人年齢が18歳に引き下げられました。)

障がい者控除

相続人が法律上の障害者である場合に適用できる控除です。控除額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)で計算されます。

贈与税額控除

相続が開始される前3年以内(2024年1月1日以降は段階的に7年以内に延長)に、被相続人から贈与を受けていた財産は、相続財産に加算して相続税を計算するルールがあります。この際に、すでに支払った贈与税がある場合は、その金額を相続税額から差し引くことができます。二重課税を避けるための制度です。

相次相続控除

今回の相続が、前回の相続から10年以内に開始した場合に適用できる控除です。例えば、父が亡くなって相続税を納めた後、10年以内に母が亡くなり、子が再び相続するようなケースが該当します。短期間に相続が重なった場合の税負担を軽減するための制度です。

土地相続価格の算出方法を知ると適切な財産評価ができる

相続した土地の価格、すなわち相続税評価額の計算は、相続税申告における最も重要で複雑な部分です。市街地では「路線価方式」、郊外では「倍率方式」という2つの方法で評価額を算出することから全てが始まります。

そして、土地を含む全ての遺産総額から基礎控除を差し引き、法定相続分で仮計算した上で、実際の取得割合に応じて各人の相続税額を算出するという流れを理解しておくことが大切です。

さらに、相続税の負担を軽減するためには、「小規模宅地等の特例」のように評価額そのものを下げる制度や、「配偶者控除」をはじめとする税額から直接差し引ける控除制度を漏れなく活用することが鍵となります。

しかし、土地の評価には不整形地の補正計算など専門的な判断が必要な場面が多く、各種特例や控除の適用要件も複雑です。もし少しでも不安や疑問があれば、相続税を専門とする税理士に相談することが、最も確実で安心な方法と言えるでしょう。適切な財産評価と申告を行い、円満な相続を実現してください。

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