離婚時に不動産を売却する場合は、適切なタイミングや手続きを選ぶことが重要です。
特に、財産分与や名義確認、住宅ローンの処理など、売却をスムーズに進めるための準備が不可欠です。
売却後に発生する手続きの負担を抑え、新生活への影響を最小限に抑えるためには、知識をしっかりと身につけておきましょう。
本記事では、離婚時の不動産売却に関するよくある質問を解決し、後悔しない選択をするためのポイントを解説します。

宮原海斗(株式会社Gen’Z 代表取締役)
宅地建物取引士/相談診断士

横田大樹(株式会社Gen’Z 専務執行役)
宅地建物取引士/相談診断士
離婚時に不動産を売却する際の基本知識
離婚時に不動産を売却する際は、まず「財産分与」と「名義確認」の重要性を理解しておくことが大切です。
離婚では感情面だけでなく、経済的な整理も必要です。
特に不動産は高額資産であり、放置しておくと名義やローン問題が後々トラブルを引き起こす原因になりやすいです。
売却は財産分与を円滑に進めるための有効な手段となるため、慎重に進める必要があります。
離婚と不動産売却は複雑に絡み合うので、以下で基本的な知識をしっかりと押さえておきましょう。
離婚で不動産売却が必要な理由
離婚時に不動産を売却する理由は、主に財産分与や生活再建のために現金化が必要になることが多いためです。
夫婦共有の家をそのままにすると、どちらが住むかの問題が生じます。
特に住宅ローンが残っている場合は、それを負う負担も大きくなります。
名義やローンが複雑化することを避けるためにも、不動産を売却して現金化するのが最も合理的な方法です。
売却により、新たな生活を始めるための資金が得られ、財産分与の公平性も保たれます。
このように、離婚時の不動産売却は現実的かつ効率的な選択肢です。
不動産の名義確認は必須
離婚時の不動産売却には、名義確認が欠かせません。
不動産の名義人でない場合、売却手続きは行えないため、まず名義の確認が必要です。
名義は登記簿謄本(登記簿全部事項証明書)で簡単に確認できます。
共同名義の不動産を売却する際は注意が必要
共有名義の不動産の全体を売却するには、名義人全員の同意が求められます。
そのため、元配偶者も含めた共有名義となっている場合は、財産分与や名義変更が必要になることがあります。
早期に名義確認を行わないと、売却が遅れる原因となるので注意が必要です。
こうしたトラブルを防ぐためには、離婚前にしっかりと話し合い、書面で合意内容を残しておくことが大切です。
弁護士や専門家に相談しながら進めることで、予期せぬ問題を避けやすくなります。
離婚で不動産を売る場合の2つの方法
離婚で不動産を売却する場合の主な方法は、「仲介」と「買取」の2つです。
どちらも離婚後の生活資金や財産分与の原資を確保する手段となりますが、売却価格やスピード、手間のかかり方が大きく異なります。
それぞれの特徴を理解したうえで、自分たちの状況に合う売却方法を選ぶことが、後悔を減らすために重要です。
以下では、両者の詳しい特徴を紹介します。
仲介
仲介による売却は、不動産会社に依頼して一般の買主を探してもらう方法であり、離婚時にできるだけ高い価格で不動産を売りたい場合に向いています。
不動産会社が広告や内見対応を行うため手続き面の負担は軽くなりますが、買主が見つかるまで時間がかかることがあり、離婚協議が長期化している場合にはストレスになることもあります。
また、価格交渉の過程で夫婦間の意見が分かれることもあるため、事前に「いくら以上で売却するか」「どのように代金を分けるか」を話し合っておくことが大切です。
時間に余裕があり、相場に近い価格での売却を目指したいケースでは、有力な選択肢となります。
買取
買取は、不動産会社や専門の買取業者が物件を直接買い取る方法であり、離婚に伴う不動産売却をできるだけ早く確実に終わらせたい場合に適しています。
仲介と比べると売却価格は下がりやすい一方で、内見対応や長期の販売活動が不要となり、短期間で現金化できることが大きなメリットです。
また、住宅ローンの返済や名義整理を急ぎたいケースでも、買取を利用することで手続きの見通しが立てやすくなります。
価格よりもスピードや手間の少なさを重視したい場合は、買取を検討すると離婚後の生活設計をスムーズに整えやすくなります。
離婚前後の不動産売却のタイミング
不動産を売却するタイミングは、財産分与や税金、生活設計に大きな影響を与えます。
不動産は高額な資産であり、感情的な対立が生じやすいため、売却の時期を誤ると後悔につながりかねません。
例えば離婚前に売却する場合は、夫婦で協力しやすく、手続きがスムーズに進むことが多いです。
一方、離婚後に売却するとなると、名義や財産分与の問題が複雑になりますが、冷静に話し合えるという利点もあります。
どちらを選ぶかは、夫婦の状況や不動産の価値、ローン残債なども加味したうえで判断したほうがよいため、以下で詳しいメリットを確認しておきましょう。
離婚前に不動産を売却するメリット
離婚前に不動産を売却する最大のメリットは、財産分与や手続きがスムーズに進む点です。
離婚前なら、夫婦で協力しやすく、売却価格や分配方法について合意しやすくなります。
住宅ローンが残っている場合、売却代金で一括返済し、名義変更やローン問題も整理できます。
また、売却により得られる現金を新生活の資金として活用できるのも大きな利点です。
離婚後のトラブルを防ぎたいのであれば、売却は離婚前に行うことが望ましいでしょう。
離婚後に不動産を売却するメリット
離婚後に不動産を売却する最大のメリットは、冷静に話し合いができる点です。
離婚協議中は感情が高ぶりやすく、焦ってしまうことが多いですが、離婚後なら、財産分与が明確になり、売却代金の分配方法で揉めにくくなります。
また、名義変更やローンの整理も、離婚後の方が進めやすく、手続きが簡素化されることがあります。
さらに、住み替え先の確保や子どもの転校なども、計画的に進められます。
このように、離婚後の売却は感情的な衝突や手続き上の混乱を避け、スムーズに進められることが特徴です。
離婚に伴う不動産売却の具体的手順
離婚時に不動産を売却する際は、手順を正しく理解しておくことが重要です。
手続きや準備を誤ると、財産分与や売却益の分配にトラブルが生じ、後悔する結果になることもあります。
不動産の売却は、複数の段階を踏むため、冷静に進めることが大切です。
特に離婚の場合、感情的な要素や利害関係が絡みやすいため、事前に話し合いをしっかり行い、以下の各段階を確認しながら進めましょう。
不動産の査定を依頼する
離婚時の不動産売却では、まず査定を依頼することが重要です。
査定によって、現実的な不動産の価値が明確になり、その後の売却価格や財産分与がスムーズに進みます。
不安を感じる方も多いかもしれませんが、複数の不動産会社から査定を受けることで適正価格を把握できます。
また、査定は無料で行えることが多いため、コストを気にせず依頼できる点もメリットです。
査定額は単なる参考価格ではなく、売却時の大切な基準となるため、慎重に確認しましょう。
財産分与の方法を決める
財産分与の方法を決める際は、感情ではなく冷静に話し合うことが重要です。
不動産は現金と異なり分割が難しいため、売却して現金化する方法が最もトラブルを避けられます。
しかし、住み続けたい場合は、どちらかが不動産を取得し、代償金を支払う方法もあります。
話し合いがうまくいかない場合は、家庭裁判所で調停を利用することも可能です。
財産分与の方法を明確に決めておくことで、後々のトラブルを防ぎ、スムーズな進行が可能になります。
公正証書を作成する
離婚に伴う不動産売却では、公正証書の作成が非常に重要です。
口約束では後々の不安やトラブルの原因になりかねません。
公正証書は、公証人が法的に有効な形で作成する文書で、財産分与や売却代金の分配方法を明記することができます。
そのため、離婚に伴う財産分与や金銭支払いについて強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、約束が守られない場合に裁判を経ずに強制執行を申し立てられる場合があります。
公正証書を作成するには夫婦の合意が必要ですが、離婚後のトラブルを回避するためにも、専門家に相談しつつ作成しておくとよいでしょう。
不動産の売却活動はうまくいかない場合もある
不動産売却は、主に価格設定の誤りや物件の状態、売却時期の選択ミスなどによってうまくいかないこともあります。
特に希望価格が相場より高いと、買い手が見つかりにくく売却が長引く可能性があるため、注意が必要です。
また、物件の清掃や修繕が不十分な場合、第一印象が悪くなり、内覧時に印象が悪化します。
不動産市場は季節や景気の影響を受けやすいため、需要の少ない時期に売却すると反応が鈍くなりがちです。
このような注意点も考慮したうえで売却タイミングを考え、しっかり準備を整えることが大切です。
住宅ローンが残っている場合の注意点
離婚時に住宅ローンが残っている場合も、不動産売却を慎重に進める必要があります。
ローン残債が売却価格を上回る場合(オーバーローン)には、追加の自己資金が求められ、夫婦間での合意や金融機関との調整が複雑になります。
特に、ローンの名義や連帯保証人の有無によって手続きが異なるため、事前にしっかり確認することが大切です。
また、名義変更や任意売却の検討が必要になるケースもあります。
本項では、不動産の売却の進行に影響を与える要素を解説するため、参考にしてください。
アンダーローンとオーバーローンの違い
アンダーローンとオーバーローンを理解することは、離婚時の不動産売却で後悔しないために重要です。
アンダーローンは、不動産を売却した際に得られる金額が住宅ローン残債より多い状態を指し、売却後に手元にお金が残るため財産分与がスムーズに進みます。
一方、オーバーローンは、売却価格がローン残債を下回る状態で、追加で現金を用意する必要があります。
オーバーローンの場合、財産分与やローン返済の負担が大きくなりやすいため、どちらの状況かを正確に把握することが重要です。
住宅ローンの名義変更は難しい
売却の際に住宅ローンの名義変更が必要となる場合もありますが、スムーズに変更できないこともある点は把握しておきましょう。
住宅ローンの名義変更の際は金融機関が返済能力を厳しく審査するため、離婚後に一方の名義に変更したかったとしても、返済能力が不十分だと名義変更が認められないケースがあります。
また、契約内容によっては、名義変更自体が認められないこともあります。
名義変更は簡単には進まないため、事前に金融機関との調整が重要です。
任意売却の選択肢を考える
任意売却とは、金融機関の同意を得て、ローン残高より低い価格で不動産を売却する方法のことです。
競売より高値で売れる可能性があり、結果として残債や破産リスクを軽減できる場合があるため、住宅ローンが残っている場合には有力な選択肢となります。
手続きは複雑ですが、専門家にサポートを依頼すれば、一人で悩むことはありません。
任意売却を選ぶことで、自己破産や大きな借金を避けることができ、離婚後の生活をスムーズに始められるでしょう。
ただし、残った債務については別途返済や債務整理が必要になることもあるため、注意が必要です。
不動産売却後にやるべきこと
離婚後に不動産を売却できたとしても、手続きが完了したからといって安心してはいけません。
売却代金の精算や分配、引っ越し、住民票の異動、確定申告など、やるべきことは多岐にわたります。
これらを怠ると、後々トラブルが発生することもあり、新生活に支障をきたす恐れがあります。
特に売却代金の分配方法や税金の申告は、元配偶者との意見の食い違いが生じやすい部分です。
以下で、不動産売却後に必要な手続きや注意点を詳しく解説します。
売却代金の精算と分配
離婚に伴い不動産を売却した場合、売却代金の精算と分配は重要なポイントです。
売却後の金額から仲介手数料やローン残債など必要な費用を差し引いた額を基に、どのように分けるかが決まります。
分配方法は、名義の持分割合や離婚協議書に基づいて決めることが一般的です。
話し合いが難航する場合は、弁護士や専門家に相談すると安心です。
書面で合意しておくことが、後々のトラブル防止にもつながります。
引っ越しと住民票の異動
離婚後に不動産を売却した場合、新たな住まいへの引っ越しと住民票の異動は必ず行うべき重要な手続きです。
住民票を旧住所に残したままだと、行政サービスに不都合が生じることがあります。
住民票は引っ越し後14日以内に変更し、転校や各種保険の手続きにも必要です。
早めに対応することで、新生活をスムーズに始めることができるため、速やかに行いましょう。
必要に応じた確定申告
不動産を売却した場合、利益が出た際には確定申告が必要です。
譲渡所得税がかかるため、申告を怠ると後で追徴課税される可能性があります。
売却価格から取得費や手数料を差し引いた額がプラスなら申告が必要です。
一方、損失が出た場合や特例を使える場合も申告することで節税できることがあります。
わからない場合は専門家に相談し、適切な申告を行うことで後悔やトラブルを防げます。
まとめ:離婚と不動産売却で後悔しない選択をするために
離婚時の不動産売却は慎重に進めるべき重要な手続きです。
売却タイミングや財産分与、名義変更、税金など多くの要素が絡みます。
売却代金の分配や住宅ローンの名義変更は、後々のトラブルにつながる可能性があるため、冷静に対応することが大切です。
必要に応じて専門家に相談し、適切な手順を踏んで進めることで、離婚後の生活設計をスムーズに行えます。
知識を深め、最良の選択をすることで、安心して新しい生活を始められるでしょう。


