相続した土地を5年以内に売却しようと考えている方は、どのタイミングで動けばよいのかや税金の負担が気になるかもしれません。相続した土地を5年以内に売却すると、税金面で思わぬ負担が発生する可能性があります。とくに譲渡所得税の税率は所有期間によって大きく変わるため、売却のタイミングは慎重に検討しましょう。
本記事では、相続した土地を5年以内に売却する際の注意点や税金の仕組み、売却の流れ・活用できる特例について解説します。ぜひ最後まで読んで、後悔のない土地売却の参考にしてください。

宮原海斗(株式会社Gen’Z 代表取締役)
宅地建物取引士/相談診断士

横田大樹(株式会社Gen’Z 専務執行役)
宅地建物取引士/相談診断士
相続した土地を5年以内に売却すべき?
相続した土地を5年以内に売却するかどうかは、「税金の負担」によって大きく影響されます。
売却のタイミングによっては、譲渡所得税の税率が高くなるだけでなく、適用できる特例も異なるため、事前に確認することが重要です。
この章では、土地売却に関連する税金の基本から税率の違い、そして3年以内の売却に適用できる特例について、具体例を交えて解説します。
短期譲渡所得の場合は税率が高い
相続した土地を取得してから5年以内に売却すると、譲渡益は「短期譲渡所得」として課税されます。
短期譲渡所得に対する税率は以下の通りです。
- 所得税:30%
- 住民税:9%
- 復興特別所得税:0.63%(30%×2.1%)
たとえば、課税譲渡所得が1,000万円の場合、約390万円が課税対象となります。
一方、同じ土地でも売却が5年を1日でも過ぎれば、長期譲渡所得が適用されます。
所有期間の算定については、売却した年の1月1日時点での所有期間によって適用が決まるため、注意が必要です。例えば、売却した年の1月1日時点で所有期間が4年10か月、引渡し時で5年1か月なら、5年未満として短期譲渡所得が適用されます。
長期譲渡所得に対する税率は以下の通りです。
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%(15%×2.1%)
長期譲渡所得が適用される場合、課税譲渡所得が1,000万円なら、約200万円が課税対象となります。
課税譲渡所得が1,000万円の場合、短期譲渡所得と長期譲渡所得で約190万円の差が生じます。
この税率の差により納める税金が大きく変わるため、相続した土地の売却タイミングは慎重に検討することが重要です。
維持コスト(管理費・固定資産税など)を抑えられる
土地を所有しているだけで、毎年「固定資産税」や「都市計画税」といった維持費が発生します。たとえ何も建物を建てていなくても、税金の支払い義務は避けられません。
固定資産税は評価額の約1.4%、都市計画税は最大0.3%が目安となります。年間の金額は少額に感じるかもしれませんが、10年、20年と持ち続けることで、数十万〜数百万円の負担となる可能性もあります。
特に、更地のままの土地では税負担が大きくなります。住宅用地に対する軽減措置が適用されず、固定資産税は最大6倍、都市計画税は約3倍になることもあります。
将来的に使用する予定がない土地であれば、早めに売却して維持コストをなくすことも、有効な選択肢となります。
3年以内の場合は特例を適用できる可能性がある
相続開始から3年以内に土地を売却する場合、「相続税の取得費加算の特例」を利用できる可能性があります。
この特例では、相続税の一部を取得費に上乗せすることができ、その結果、譲渡所得を減らし、課税額を軽減することができます。
ただし、この特例を適用するためには、相続開始から3年10か月以内(相続税申告期限の翌日から3年以内)に売却するなど、期限と条件を満たす必要があります。
「相続税の取得費加算の特例」を活用するには、早めに売却の準備を進めることが重要です。
相続した土地を売却したときにかかる税金
相続した土地を売却する際には、相続税や譲渡所得税など、いくつかの税金が発生する可能性があります。以下6つについて順に確認しましょう。
- 相続税
- 譲渡所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
- 印紙税
- 登録免許税
これらの仕組みを理解しておくと、納税の準備がスムーズになります。
相続税
被相続人(亡くなった方)の財産を受け継いだときに課される税金です。相続した土地については、国が示す評価方法に基づいて価値が算定され、それに応じた税額が算出されます。基礎控除という一定の非課税枠が設けられており、遺産総額がそれを下回る場合、相続税がかからないケースもあります。
ただし、土地以外の財産(預貯金や有価証券など)との合計で基礎控除を超えると課税対象になる点がポイントです。また、配偶者控除などの特例を活用することで税額が軽減される場合もあるため、要件をよく確認しましょう。
関連記事:不動産の相続税評価額の計算方法は?減額できるケースも解説
譲渡所得税
相続した土地を売却して得た譲渡所得(売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた利益)に対して課される税金です。土地の取得費は被相続人が購入したときの金額を引き継ぎますが、資料が残っていない場合は「概算取得費」として売却価格の5%しか計上できないことがあります。
譲渡所得税の税率は、土地の所有期間が5年以内か5年超かによって「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」に分かれ、短期の場合は税率が高くなる点に注意が必要です。計算時は、取得費加算などの特例が適用できるかも確認しましょう。
住民税
個人の所得に応じて自治体に納める税金です。相続した土地を売却して譲渡所得が生じると、譲渡所得税とあわせて住民税も課税される可能性があります。課税額は居住地の自治体が定める税率を基に計算され、多くの場合は譲渡所得税と同じタイミングで納付することになります。
売却後の確定申告で譲渡所得を申告すると、その情報が自治体にも共有され、住民税の課税にも反映される仕組みです。所得税とは別枠の計算になりますので、納税計画を立てる際には余裕を持って資金を確保しておくと安心です。
復興特別所得税
東日本大震災からの復興財源を確保する目的で導入された税金で、所得税額に対して一定率が上乗せされる形で課されます。具体的には、所得税額に対し2.1%が加算されるため、譲渡所得税の計算とあわせて考慮する必要があります。この税金は2013年から2037年までの25年間限定で課税されるものです。
名称は「復興特別所得税」ですが、個別の税ではなく、あくまでも所得税に対する追加的な負担として扱われる点が特徴です。このため、譲渡所得税を計算するときの計算式に復興特別所得税が組み込まれ、最終的な納税額がやや高くなることを覚えておきましょう。
印紙税
不動産売買契約書などの文書を作成するときに課される税金です。具体的な税額は契約書に記載される金額によって段階的に定められており、高額な取引ほど印紙税も高くなる仕組みです。土地を売却する場合は売買契約書が必要となるため、その契約書に貼付する印紙を用意しなければなりません。
なお、一定の要件を満たすと印紙税の軽減措置が適用されるケースもあります。契約書の作成や署名・押印が必要になるタイミングで印紙を貼り、売主と買主で取り扱いを確認しておくとトラブルを避けやすいでしょう。
登録免許税
不動産の登記を行う際に支払う税金です。相続した土地を名義変更する場合や、売却に向けて抵当権の抹消などをする場合にも必要になります。土地の評価額や登記内容によって税率や納付額が変わるため、事前に法務局や専門家に確認しておくと安心です。
相続登記の手続きでは、相続が原因となる登記に対して通常よりも低い税率が適用されるケースもあります。売却に向けた手続きがスムーズに進むよう、必要な書類とあわせて納税額の目安も把握しておくと、登記段階でのトラブルを減らせるでしょう。
関連記事:親の家はどうやって売る?売却の流れや税金についても解説
土地の売却に伴う諸費用
土地を売却する際には、税金だけでなくさまざまな費用がかかります。以下に、主な費用項目や書類取得にかかる手数料をまとめましたので、目安として参考にしてください。
土地の売却に伴う諸費用
| 費用項目 | 内容 | 金額例/相場 |
| 仲介手数料 | 不動産会社に支払う取引の仲介費用 | ・200万円以下:取引額の5% ・200万円超〜400万円以下:取引額の4%+2万円 ・400万円超:取引額の3%+6万円 ※契約時に50%、引渡し時に50%を支払います |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付する印紙代 | ・1,000万円超〜5,000万円:1万円 ・5,000万円超〜1億円:3万円 |
| 抵当権抹消費用 | 抵当権を抹消するための手数料 登録免許税 | ・土地1筆あたりの税額:1,000円 |
| 司法書士手数料 | 手続きを依頼する司法書士への費用 | 1.5〜2万円(相場) |
| 繰り上げ返済手数料 | ローン残債がある場合に発生する手数料 | ・窓口手数料:3万円 ・インターネット経由:5,000〜1.5万円(相場) |
| 測量費用 | 境界確定が必要な場合の測量費用 | 50〜80万円(相場) |
書類取得手数料(1通あたり)
| 書類名 | 取得費用 |
| 被相続人の戸籍謄本 | 450円 |
| 被相続人の除籍謄本 | 750円 |
| 被相続人の住民票除票 | 300〜350円 |
| 相続人の戸籍附票 | 300円 |
| 相続人の住民票 | 300〜400円 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 300〜400円 |
| 不動産登記事項証明書 | 600円 |
| 固定資産評価額証明書 | 300〜400円 |
これらの費用は売却時に発生するため、事前に確認しておくと安心です。
相続した土地を売却する際に押さえておきたいポイント
相続した土地を売却する際は、事前に知っておくべき手続きや税金の仕組みなど、いくつか注意すべき点があります。以下5つについて、基本を押さえておくと安心です。
- 売却の際に課される税金は全相続人が支払う
- 土地を取得したときの資料を集めておく
- 売却によって利益が発生した場合は確定申告を行う
- 譲渡所得と税率について
- 取得費が不明な場合について
これらを理解しておくことで、スムーズに売却手続きを進められるでしょう。
売却の際に課される税金は全相続人が支払う
相続した土地を売却する場合、得られた利益(譲渡所得)にかかる税金や、契約書の印紙税などの費用負担は、原則として相続人全員が分担することになります。たとえば、相続財産の分割協議で土地を売却して得た代金を相続人間で分配する形をとる際には、税金の支払い義務も含めて話し合う必要があります。
売却益を受け取る人だけでなく、別の財産を受け取った相続人がいる場合でも、遺産の総額や分割割合に応じて税金を分担することが一般的です。とくに、相続開始後にすぐ売却の話が出たときには、どの段階で費用負担を整理するかを決めておかないと、あとからトラブルが生じる可能性があります。
土地を取得したときの資料を集めておく
相続した土地の元々の取得費用や、過去にかかった改良費、固定資産税に関する領収書などの資料を集めておくと、売却時の計算がスムーズです。とくに、被相続人が土地を購入した際の売買契約書や領収書が残っていれば、譲渡所得を正しく算出するうえで重要な証拠資料となります。
取得費がはっきりしない場合は、売却価格の5%しか取得費として認められない「概算取得費」を使う可能性があり、結果的に課される税額が増えることも。相続が発生した時点で、被相続人の遺品整理とあわせて関連書類を確認し、無理のない範囲で保管・整理しておくことがポイントです。
売却によって利益が発生した場合は確定申告を行う
土地を売却して譲渡所得が発生した場合、会社員など給与所得がある方でも、基本的には確定申告が必要です。確定申告をすることで所得税・住民税だけでなく、復興特別所得税もあわせて計算され、翌年にまとめて納付する仕組みになっています。
申告しないまま放置すると追徴課税がかかるおそれもあるため、売却が完了したら早めに必要書類をそろえて手続きを進めましょう。必要書類の例として、売買契約書や領収書の写しなどがあげられますので、取引時の書類は保管しておくことが大切です。
譲渡所得と税率について
譲渡所得は、土地を売却したときに生じる利益のことで、その計算方法によって実際の納税額が決まります。土地を所有していた期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」となり、通常よりも高い税率が適用されるのが特徴です。一方、5年を超えて所有していた場合は「長期譲渡所得」として税率が抑えられ、納税額が軽減されます。
相続によって取得した土地でも、被相続人が所有していた期間とあわせて5年を超えるかどうかが大きなポイントになります。売却時期によって税率が変わる可能性があるため、計画的に売りに出すかを検討する材料になるでしょう。また、譲渡所得が多額になる場合は特例の活用を含め、専門家にシミュレーションを依頼すると安心です。
取得費が不明な場合について
相続した土地の取得費が不明な場合、「概算取得費」を用いることになるため、課税対象となる譲渡所得が多くなりがちです。取得費は、被相続人の取得時期や取得金額、仲介手数料などを含むケースがあります。しかし、古い資料が残っておらず算出できない場合はどうしても不利になりやすいという側面があります。
このようなケースを避けるには、遺産整理の段階で関係書類を見つけ出し、少しでも正確に取得費を割り出せるようにしておくことが大切です。もし入手が困難なときは、専門家の協力を得て当時の資料を探す方法を検討するのも一案です。
相続した土地の5年以内の売却にはなぜ注意が必要なのか
相続した土地を5年以内に売却すると、一般的に短期譲渡所得扱いとなるため、譲渡所得税や住民税の税率が高くなる場合があります。すぐに売却するべきか・そうでないかは、状況に応じて判断しなければいけません。
土地の相続から5年以内の売却に注意すべき理由
土地を相続してから5年以内に売却する際には、注意すべき理由がいくつかあります。その主な理由は、売却時に発生する「所得税」や「住民税」の税率が所有期間によって異なる点です。
売却時に課せられる税率は、土地などの不動産をどれだけ長く保有していたかにより変わります。具体的には、相続から5年以内の売却は「短期譲渡所得」に分類され、5年以上保有した場合は「長期譲渡所得」と見なされます。また、重要なのは、所有期間は相続開始時点からではなく、相続後に実際に所有していた期間に基づいて計算されるという点です。
所有期間による税率の違い
| 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
| 5年以下(短期譲渡所得) | 30.63% | 9% |
| 5年超(長期譲渡所得) | 15.31% | 5% |
土地を相続した場合、評価額が高額になることも多いため、より多くの現金を手に入れるためには税率が低い方が有利です。しかし、所有者不明の空き地などは社会問題としても取り上げられており、早期の売却を促進するための優遇措置もあります。土地売却に関連する特例や優遇措置については、後述を参考にしてください。
すぐに売却したほうがよいケース
相続税や維持管理費などの負担が大きいときです。とくに相続発生後、固定資産税や都市計画税などが毎年かかるうえ、不要な土地を持ち続けると将来的に売却価格が下がってしまう可能性も。また、家族や親族との共有名義になっている場合、早めに売却することで煩雑な手続きを一度にまとめて解消できる点がメリットです。
もし土地を活用する予定がなく、維持コストが高い場所や需要の低いエリアであれば、資産価値を確保できるうちに売却を進めるとリスクを回避しやすくなります。相続税の申告期限との兼ね合いも考慮しつつ、今後の売却スケジュールを検討しておくのが大切です。
すぐに売却しなくてもよいケース
相続した土地が自宅用地などで活用が期待できる場合や、市街地で将来的に地価上昇が予測されるエリアであれば、5年以内に売却をする必要はありません。短期譲渡所得として税率が高くなるだけでなく、相続登記や遺産分割が十分に整わないまま売却を進めると、あとからトラブルが発生するおそれもあります。
さらに、相続人同士で土地の利用方法に関する考えが一致しない場合は、長期保有して改めて活用策を検討するのも1つの方法です。大切なのは、現在の状況と将来の見通しを総合的に判断し、長く持ち続けることで得られるメリットと負担を冷静に見比べることだといえます。
相続した土地を長期的に放置するリスク
相続した土地を活用せずに放置していると、予期しない出費や管理の負担、さらには資産価値の低下といったデメリットが生じる可能性があります。
特に、売却せずに長期間保有し続ける場合、節税面でのメリットを逃してしまうこともあるため、注意が必要です。
この章では、土地を所有し続けることによって発生する代表的な3つのリスクについて、具体例を交えて詳しく解説します。
固定資産税の支払いが必要になる
土地を所有しているだけで、毎年「固定資産税」がかかります。
たとえその土地を使用していなくても、税金は免除されることはなく、特に資産価値が高い都市部や住宅地では、固定資産税が数十万円に達することもあります。
郊外の更地でも、年間で10万円近くの税金がかかることがあり、特に活用しない土地を意味もなく所有し続けるのは得策ではありません。
さらに、建物がない土地の場合、「住宅用地特例」の適用外となり、税額が最大6倍に増加する可能性もあります。
収益を生まない土地を長期保有し続けると、維持費ばかりがかかるため、売却を検討するのが賢明でしょう。
管理の手間がかかる
土地を所有していると、草刈りや清掃、不法投棄の防止など、物理的な管理の手間が発生します。
特に遠方に住んでいる場合は、定期的な見回りや外部委託の費用がかかることもあります。
もし土地を放置して草木が伸び放題になれば、近隣住民から苦情が寄せられるだけでなく、市区町村から「管理不全土地」として指導を受ける可能性もあります。
実際には、相続した土地の管理が負担になり、やむを得ず売却を検討する人も少なくありません。
不動産価値が低下する
土地や建物は、時間が経過することで価値が下がる可能性があります。
特に空き家が建っている場合、劣化が進みやすく、最終的には建物の取り壊し費用が発生することもあります。
また、地域によっては人口減少や地価の下落により、「売りたくても買い手がつかない」という状況に陥ることも少なくありません。
実際に、相続時には1,500万円だった土地が、数年後には1,000万円以下になるケースも見受けられます。
資産価値があるうちに売却を決断することは、損を避けるための重要な判断材料です。
ただし、不動産価値が上昇する場合もあるため、まずは不動産会社に相談し、価値の動向を確認することをお勧めします。
逆に、相続した土地を早めに売却しないほうがいいケース
相続した不動産は、早期に手放すことで節税や負担軽減につながる場合がありますが、「早く売るのが正解」とは一概に言えません。状況によっては、売却を見送った方が有利に働くこともあります。
ここでは、早期売却が必ずしも得策ではないケースについて考えてみましょう。
・被相続人が当該不動産を取得してから5年以内である
・不動産価値の上昇が見込まれる
・兄弟間の話し合いが未成立である
・資産として活用(賃貸など)を検討している
次項では、これらのケースについて個別に解説します。
被相続人が当該不動産を取得してから5年以内である
相続した不動産の譲渡所得は、通常、被相続人の取得日を引き継いで所有期間を判断するため、長期譲渡所得として扱われます。ただし、例外として「被相続人が亡くなる直前に購入していた」場合には注意が必要です。
例えば、被相続人が相続発生の数年前に不動産を取得していた場合、所有期間が5年に満たないまま売却すると、短期譲渡所得として課税されることになります。
この場合、所得税・住民税を合わせた税率は約39%となり、長期譲渡所得の約20%と比べて大きな負担となります。
多くのケースでは長期譲渡所得が適用されますが、被相続人の取得時期が比較的新しい場合、税務上の取り扱いを慎重に確認する必要があります。売却前に取得日の確認と所有期間の判断を行うことが大切です。
不動産価値の上昇が見込まれる
相続した不動産が都市開発エリアや再開発予定地に含まれている、または近隣でインフラ整備が進んでいる場合、将来的に土地の価格が上昇する可能性があります。
このような状況では、現在の価格で売却するよりも、数年後の値上がりを待つ方が経済的に有利になることがあります。
地価や不動産価格は常に変動していますが、地域の評価が明らかに高まりつつある場合には、保有し続けることで含み益が増加することも考えられます。
もちろん、不確定要素も多いため絶対的な予測はできませんが、近隣で大規模な開発計画が発表されているような場合には、相場の動向を注視し、タイミングを見計らって売却することも有効な選択肢となります。
兄弟間の話し合いが未成立である
相続によって不動産を複数人で共有している場合、売却を進めるには共有者全員の合意が必要です。しかし、実際には兄弟姉妹間で意見が食い違い、遺産分割協議がまとまらないまま時間が経過してしまうことがよくあります。
このような状況で一方的に売却を進めようとすると、法的なトラブルに発展する恐れがあります。また、感情的な対立が表面化することで、もともと良好だった関係性が壊れてしまうリスクも考えられます。
売却を急ぐよりも、まずは相続人全員が納得できる形で分割や処分方法について丁寧に話し合い、合意を形成することが最優先です。
資産として活用(賃貸など)を検討している
相続した土地や建物に活用の見込みがある場合、すぐに売却するのが必ずしも最善策とは限りません。
立地が良好であれば、アパートや駐車場として賃貸運用し、安定した収入源にすることが可能です。また、建物付きの不動産であれば、リフォームやリノベーションを行い、収益物件として活用することも考えられます。
特に、他に大きな現金収入が見込めない場合や、相続税の納税がすでに完了している場合には、土地や建物を継続して保有し、資産価値を維持する方針も十分現実的です。もちろん、空室リスクや管理の負担、初期投資などの課題もありますが、適切に運用すれば、相続財産を活かしながら将来的な利益につなげることが可能です。
相続した土地を売却する流れ
相続した土地の売却には、遺産分割協議や相続登記などの手続きが必要になるうえ、税金関連の申告も欠かせません。以下7つについて順に押さえることで、余計なトラブルを防ぎながらスムーズに売却を進められます。
- ステップ①遺言書の有無を確認する
- ステップ②相続財産と相続人を調査する
- ステップ③遺産分割協議を行う
- ステップ④相続登記を申請する
- ステップ⑤相続税の申告を行う
- ステップ⑥土地を売却する
- ステップ⑦確定申告を行う
これらを順に進めることで、適切な相続手続きと売却を行えるでしょう。
ステップ①遺言書の有無を確認する
まずは被相続人(亡くなった方)が遺言書を残しているかどうかを確認することが重要です。自筆証書遺言があれば、家庭裁判所で「検認」という手続きを受けてから内容を実行します。公正証書遺言の場合は、原本が公証役場に保管されていることが多く、検認手続きが不要な点が特徴です。
万が一複数の遺言書が出てきたときには、作成された日付が新しい方が優先される可能性が高いので、すべての書面をきちんと確認しましょう。遺言書の内容によっては、誰が土地を相続するかが明確に指定されているケースもあるため、手続きの出発点として確認作業を丁寧に行うことが大切です。
ステップ②相続財産と相続人を調査する
次に、相続財産と相続人を正確に調べる作業を進めます。具体的には、法務局や市区町村役場で戸籍謄本や除籍謄本を取り寄せ、被相続人の家族関係や本籍地の移動状況などを確認するのが一般的です。また、相続財産となる土地の登記情報を調べ、所在地や地目などを把握しておくと手続きがスムーズに進みます。
さらに、ほかの財産(預貯金や証券など)がある場合は、それらを含めた相続財産の全体像を把握する必要があります。こうした調査を行うことで、後々になって「本当は相続人だった人」が見つかるといったトラブルを避けやすくなるでしょう。
ステップ③遺産分割協議を行う
相続人が誰で、どの財産をどのように分けるかが明確になったら、遺産分割協議を行い、内容を「遺産分割協議書」という形で書面化します。協議書には、相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付するのが通常の流れです。
相続する土地を売却する方針が決まっている場合は、誰が売主として手続きを進めるか、分配金をどう扱うのかなどを明確に定めるとトラブルを避けられます。必要に応じて専門家(司法書士・税理士・弁護士)に相談すれば、協議内容の法的な有効性を確認したうえでスムーズに作成できるでしょう。
ステップ④相続登記を申請する
遺産分割協議が整ったら、土地の名義を被相続人から相続人へ変更する相続登記の申請を行います。申請先は該当の土地を管轄する法務局で、登記申請書や遺産分割協議書、被相続人の戸籍謄本など必要書類をそろえることが大切です。
なお、相続登記には登録免許税がかかり、土地の評価額や登記内容によって税額が決まります。2024年4月1日からは相続登記が義務化されており、正当な理由なく申請を怠ると過料が科される可能性があります。相続開始を知った日から3年以内に申請する必要がありますので、早めに手続きを進めることが重要です。
ステップ⑤相続税の申告を行う
相続税は、相続が開始してから10ヶ月以内に申告・納税を行う必要があります。遺産分割協議がまとまっていなくても、期限内に申告しなければ加算税や延滞税が課されるおそれがあるため、早めに申告内容を整理しておきましょう。
土地の評価額は路線価や倍率方式などによって算定され、さらに小規模宅地等の特例や配偶者控除など、多岐にわたる軽減策が存在します。これらの特例適用を検討する際は要件を正確に満たす必要があり、専門家に相談することで最適な申告方法を見つけやすくなります。
ステップ⑥土地を売却する
名義変更が完了したら、いよいよ土地の売却手続きを進めます。不動産会社に査定を依頼して売却価格の相場を把握し、仲介契約を締結したうえで購入希望者を探していく流れが一般的です。売買契約の締結時には、印紙税が必要になるほか、売却後に譲渡所得が発生すれば翌年に確定申告を行うことになります。
相続した土地をできるだけ有利な条件で売却するためには、適切な価格設定とタイミングが重要です。地域の不動産事情に詳しい仲介業者や専門家のサポートを受けると、交渉や手続きをスムーズに進められるでしょう。
ステップ⑦確定申告を行う
土地の売却が完了すると、譲渡所得が生じたかを計算し、利益があれば確定申告が必要となります。確定申告では「譲渡所得税」とともに「住民税」や「復興特別所得税」の計算も行われるため、売却時の書類一式(売買契約書・領収書・仲介手数料の明細など)を忘れずに保管しましょう。
取得費が不明な場合は概算取得費として売却額の5%しか認められず、課税対象額が大きくなる点に注意が必要です。納税にかかる資金計画を立てたうえで、期限内に申告と納付を済ませれば、一連の相続手続きが完了します。
相続した土地の売却時に利用できる特例・節税方法
相続した土地を売却するときは、税負担を軽減するために活用できる特例や節税策があります。以下5つを理解しておくと、納税時の負担を抑えながら売却をスムーズに進めやすくなるでしょう。
- 相続税の優遇措置
- 取得費加算に対する特例
- 相続により取得した空き家の譲渡に対する特別控除
- 平成21年および平成22年に取得した土地に対する特別控除
- ふるさと納税を利用した節税
詳しく解説します。
相続税の優遇措置
相続税には、さまざまな優遇措置が設けられています。たとえば、基礎控除や配偶者控除、小規模宅地等の特例などが代表的です。とくに小規模宅地等の特例は、被相続人の居住用や事業用として使われていた土地に適用され、評価額を最大80%まで減額できます。これにより、相続税そのものを大幅に減らせることが期待できるため、相続後の売却を考える前に、まずは相続税の優遇措置を十分に確認することが大切です。
ただし、それぞれ適用条件が厳密に決まっており、要件を満たさない場合は利用できません。要件の詳細は国税庁の資料や専門家に相談して確認するとよいでしょう。
取得費加算に対する特例
取得費加算の特例とは、相続税を納めた場合に、支払った相続税の一部を後の譲渡所得の計算において取得費に加算できる制度です。これが適用されると譲渡所得が小さくなるため、譲渡所得税や住民税などが軽減されます。
ただし、この特例は相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に限り適用されます。申告の際には相続税の計算明細書など書類の準備が必要です。適用を検討する際は相続税の申告書類をきちんと保管し、必要書類をそろえて税務署に確定申告を行うことを忘れないようにしましょう。
相続により取得した空き家の譲渡に対する特別控除
相続した空き家を売却する際、一定要件を満たせば3,000万円の特別控除が受けられます。おもな要件は、以下のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された被相続人の居住用家屋であること
- 区分所有建物でないこと
- 相続開始から3年以内に売却すること
- 相続から売却まで使用されていないこと
- 売却時に耐震基準を満たすこと
- 売却代金が1億円以下であること
この特例は令和9年末まで適用可能で、譲渡所得を大幅に減らせる重要な節税策です。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、相続する土地の評価額を減額することで相続税の負担を軽減できる特例です。以下に、対象となる土地と減額割合をまとめました。大幅な節税効果が期待できるため、特例を適用する場合は税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
| 土地の種類 | 適用限度枠 | 減額割合 |
| 生活していた土地 (特定居住用宅地等) | 限度面積330㎡ | 減額割合80% |
| 事業用途の土地 (特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等) | 限度面積400㎡ | 減額割合80% |
| 他人へ貸していた土地 (貸付事業用宅地等) | 限度面積200㎡ | 減額割合50% |
この特例を活用すれば、相続税の負担を大幅に軽減できますが、適用には要件がありますので、詳しくは専門家と相談し、適切な手続きを行うことが重要です。
平成21年および平成22年に取得した土地に対する特別控除
平成21年(2009年)および平成22年(2010年)に購入により取得した土地を、一定期間経過後に売却した場合、1,000万円の特別控除が認められる制度があります。これはリーマンショック後の経済対策として創設された措置で、当時土地を購入した個人の負担軽減が目的です。
ただし、この特例は相続や贈与で取得した土地には適用されません。適用条件は、平成21年取得分は平成27年(2015年)以降、平成22年取得分は平成28年(2016年)以降に売却することや、特別な関係者(親族など)から取得した土地でないことなどです。この制度の適用を検討する場合は、国税庁のガイドラインや専門家に確認するとよいでしょう。
3,000万円の特別控除
一定の条件を満たすと、売却益から最大3,000万円を差し引ける「居住用財産の3,000万円特別控除」を利用することができます。
この特別控除は、被相続人が居住していた家屋と敷地を相続し、相続人がそのまま売却した場合に適用可能です。例えば、譲渡益が2,800万円の場合でも、この控除を使えば課税対象はゼロとなります。
ただし、この特別控除を適用するには複数の条件を満たす必要があり、条件をクリアするのはやや難しいため、事前に確認しておくことが大切です。
また、相続人が3人以上いる場合、控除額が2,000万円に減額される点に注意が必要です。
「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用条件について詳しく知りたい方は、国税庁の公式HPを参照してください。また、適用条件に不明点がある場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
ふるさと納税を利用した節税
ふるさと納税を活用すると、所得税や住民税の一部を希望する自治体に寄付でき、寄附額から2,000円を引いた額について控除が受けられます。譲渡所得がある場合でも総所得金額等に含めて控除限度額が計算されますが、分離課税の性質上、通常の所得と比べて控除効果が限定的な場合があります。
確定申告不要な給与所得者で寄附先が5団体以内なら、「ワンストップ特例制度」が利用可能です。控除上限額は所得などで異なるため、総務省のシミュレーションで事前に確認するとよいでしょう。
5年以内の売却での短期譲渡所得と税金の計算シミュレーション
ここでは、短期譲渡所得と長期譲渡所得の税負担の違いを、5年を超えて売却した場合との比較を通じて確認します。
【仮の条件】
- 購入価格(取得費):3,000万円
- 売却価格(譲渡価額):5,000万円
- 売却時の諸費用(仲介手数料、登記費用など):200万円
- 特別控除なし
- ここでは、取得費の計算における減価償却などは考慮しません。
譲渡所得の計算
譲渡所得は以下のように計算されます。
譲渡所得 = 売却価格 – (購入価格 + 売却時の諸費用)
譲渡所得 = 5,000万円 – (3,000万円 + 200万円)
譲渡所得 = 5,000万円 – 3,200万円
譲渡所得 = 1,800万円
この1,800万円が課税対象となる譲渡所得です。
短期譲渡所得(所有期間5年以下)の場合
短期譲渡所得における税率は39.63%(所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63%)です。
したがって、納税額は次のように計算されます。
1,800万円 × 39.63% = 7,133,400円(約713万円)
長期譲渡所得(所有期間5年超)の場合
長期譲渡所得における税率は20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)です。
したがって、納税額は次のように計算されます。
1,800万円 × 20.315% = 3,656,700円(約366万円)
短期譲渡所得と長期譲渡所得の比較
| 所有期間 | 税率 | 税額 |
| 5年以下(短期) | 39.63% | 約713万円 |
| 5年超(長期) | 20.32% | 約366万円 |
結果の考察
同じ物件を売却しても、5年を超えて売却することで税負担が半分程度に抑えられることがわかります。もし売却のタイミングを調整できるのであれば、5年を超えてから売ることで、手元に残る利益を増やせる可能性が高まります。
注意点
ただし、税負担を抑えるために5年を待つことが常に最適とは限りません。市場価格の変動や維持コストなどの要素も考慮する必要があります。不動産価格が下落傾向にある場合、税負担を抑えるために待つよりも、早めに売却する方が得をする場合もあります。
不動産売却で知っておきたい5年間の価値下落率
不動産を売却する際、築年数による価値の変動は非常に重要な要素となります。築年数が経過することで、物件の価値は一般的に下落していきますが、その下落率は物件の種類によって異なります。
ここでは、マンション、一戸建て、土地の3種類について、それぞれの価格下落率の傾向を紹介します。
マンションの場合
マンションは築年数が経過するにつれて価値が下落する傾向がありますが、立地や管理状態によってその下落率は大きく異なります。特に、新築マンションでは「新築プレミアム」と呼ばれる上乗せ価格が付加されるため、築5年以内の下落率が大きくなるのが特徴です。
以下は、築年数ごとのマンションの成約価格と価格指数(築0~5年を100とした場合)のデータを示しています。
築年数別のマンション価格変動
| 築年数 | 成約価格(万円)(参考値) |
| 築0~5年 | 7,077 |
| 築6~10年 | 6,655 |
| 築11~15年 | 5,932 |
| 築16~20年 | 5,509 |
| 築21~25年 | 4,887 |
| 築26~30年 | 3,344 |
| 築31~35年 | 2,303 |
| 築36~40年 | 2,672 |
| 築41年以上 | 2,260 |
▼参照元:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)|公益財団法人東日本不動産流通機構
築5年以内のマンションは、価格が比較的安定していますが、築6~10年で約6%、築11~15年で約10%の下落が見られます。その後も、築年数が経過するごとに下落率が高まり、築26年を超えると価格が急激に下落する傾向にあります。
特に、マンションの管理状態や大規模修繕の実施状況が価格に大きく影響するため、売却時にはこれらの維持管理の実績を強調することが重要です。適切に管理されている物件は、築年数に関係なく価値を保ちやすく、売却時の価格にもプラスの影響を与えることがあります。
一戸建ての場合
一戸建ては、建物と土地の両方の価値が影響します。特に建物部分は築年数が経過することで価値が下がりやすく、木造住宅の法定耐用年数(22年)を超えると、建物の価値はほぼゼロとみなされることが一般的です。一方で、土地の価値は市場の需要や立地により変動し、築年数が経過しても資産価値を維持できる場合もあります。
以下は、公的データを基にした、中古戸建住宅の成約状況(首都圏・2023年1~12月)のデータです。
中古戸建住宅成約状況(首都圏・2023年1~12月)
| 築年数 | 平均成約価格(万円) |
| ~築5年 | 5,021 |
| 築6~10年 | 4,733 |
| 築11~15年 | 4,573 |
| 築16~20年 | 4,271 |
| 築21~25年 | 3,919 |
| 築26~30年 | 3,496 |
| 築40年超 | 2,071 |
▼参照元:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2023年)|公益財団法人東日本不動産流通機構
築5年以内の一戸建ては価格の下落が比較的緩やかですが、築10年を超えると建物価値の減少により価格が下がりやすくなります。特に、築20年以上経過すると、建物の評価がほぼなくなり、土地の価値が売却価格の主な要素となります。
一戸建てを高く売却するためには、適切なメンテナンスやリフォームの実施が重要です。売却時に建物の状態が良いことを示すことで、価格の下落を抑えることができます。
土地の場合
土地は建物とは異なり、時間が経過しただけで価格が大きく変動することはありません。しかし、土地の価値は周辺環境や市場の需要によって影響を受けるため、必ずしも安定しているわけではありません。
例えば、都市部の開発が進むエリアでは地価が上昇することがありますが、人口減少が進む地方では地価が下落する場合もあります。また、土地の形状や接道条件も価格に影響を与えます。整形地で広い道路に接している土地は需要が高く、価格が安定しやすいですが、狭小地や旗竿地は需要が限られ、売却価格が低くなる傾向があります。
不動産を売却する際には、築年数による価格の変動だけでなく、市場動向や土地の形状、接道条件も考慮することが重要です。特に、5年以内の売却を検討している場合、税金面の影響や適切な売却タイミングを見極めることが求められます。
現在の市場価値を知りたい場合は、不動産査定を活用し、具体的な価格を確認することをおすすめします。これにより、売却時の適正価格を把握し、最適なタイミングでの取引が可能になります。
相続した土地を売却した後の確定申告のタイミング
相続した土地を売却して利益が出た場合、その年の翌年の確定申告で譲渡所得を申告し、税金を納める必要があります。普段、サラリーマンなどで確定申告の義務がない方でも、不動産を売却した年には原則として確定申告が必要となります。
確定申告を怠ると、延滞税や加算税が課されるおそれがあるため、注意が必要です。確定申告の提出期間は、毎年2月16日から3月15日までとなっており、土日祝日が期間内に含まれる場合は、翌営業日が提出期限となります。
例えば、2025年に土地を売却した場合、確定申告は2026年の2月16日〜3月15日の間に行うことになりますので、売却後の申告期間をしっかりと確認し、遅れないように手続きを進めましょう。
相続した土地の確定申告で用意しておいた方がいい資料
確定申告の準備では、土地の取得から売却までの経緯を証明できる書類をできるだけ多くそろえておくことが非常に重要です。特に相続によって取得した土地の場合、被相続人がその不動産をいつ、いくらで取得したかを示す資料が不完全なことも多いため、できるだけ早めに調査を始めるとスムーズに進められます。
具体的には、以下のような資料が申告時に役立ちます。
【申告に必要な書類】
1.売買契約書(売却時)および領収書
2.登記簿謄本(全部事項証明書)
3.固定資産税評価証明書
4.不動産業者への仲介手数料の明細書
5.測量費・解体費などの支出に関する請求書や領収書
6.被相続人の取得費を示す資料
・過去の売買契約書
・登記情報
・贈与契約書など
もし取得費がわからない場合、「概算取得費(5%ルール)」を利用して申告することも可能ですが、この方法を使うと税額が高くなる傾向があります。また、相続税を支払っていた場合は、「取得費加算の特例」を適用できることがあり、その際は相続税申告書や納税額の明細も必要になります。
資料に不備や誤記があると、申告ミスにつながりやすいため、不明点があれば早めに税理士などの専門家に確認しながら進めることをおすすめします。適切な資料を整え、正確な申告を行うことで、税負担の軽減や納税のトラブルを防ぐことができます。
相続した土地の取得費はどう計算すればいい?「5%ルール」って何?
相続した土地を売却した場合、その利益には譲渡所得税がかかりますが、その税額を大きく左右するのが「取得費」の金額です。取得費とは、もともとその不動産を取得するためにかかった金額を指し、これをいくらで計算するかによって課税対象額が変わります。
相続不動産の場合、この取得費の扱いが少し特殊です。取得費が不明確であることが多いため、正しい申告を行うためにはまず基本的なルールを理解することが重要です。
通常、相続した土地では「被相続人の取得費」を引き継ぐ
相続によって取得した土地を売却する場合、譲渡所得の計算に使用する取得費は、被相続人がその土地を取得したときの金額を引き継ぐのが原則です。以下に、実際の計算例を示します。
【前提条件】
- 被相続人(例:父)が生前に土地を1,000万円で購入していた
- 相続人(例:子)は相続後にその土地を3,000万円で売却
- 売却にかかる仲介手数料などの売却費用は100万円
- 取得費は、被相続人が取得した金額(1,000万円)を使用
【計算例】
譲渡所得の計算式は次の通りです。
譲渡所得=売却価格ー(所得費+譲渡費用)
=3,000万円ー(1,000万円+100万円)
=3,000万円ー1,100万円
=1,900万円
この1,900万円に対して、長期譲渡所得として**税率約20.315%**が適用される場合、税額は次のように計算できます。
1,900万円×20.315%=約386万円
したがって、このケースでは譲渡所得税が約386万円となります。
注意点
- 取得費は、被相続人が取得した金額を基に計算します。
- 売却にかかる譲渡費用(仲介手数料など)は、譲渡所得から差し引けます。
- 長期譲渡所得に適用される税率は、所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%で、合計約20.315%となります。
- 税額を軽減するためには、相続税の取得費加算の特例を適用することも可能ですが、その場合は追加の手続きが必要です。
このように、相続した土地の売却に際しては、正しい取得費を把握し、適切な申告を行うことが重要です。
「5%ルール」とは取得費が不明なときの暫定計算方法
相続した土地の取得費がどうしても分からない場合、税務上は「概算取得費」として売却価格の5%を取得費として計上することが認められています。これがいわゆる「5%ルール」です。
【前提条件】
被相続人の取得費に関する資料(売買契約書・領収書など)が一切ない
売却価格は2,000万円
【計算例】
1.概算取得費の計算:
概算取得費=2,000万円×5%=100万円
2.譲渡所得の計算式:
譲渡所得=2,000万円(売却価格)−100万円(取得費)−諸経費
このように、取得費を100万円とした場合、譲渡所得が大きく計上される結果となります。
重要なポイント
「5%ルール」は、取得費を全く証明できない場合のやむを得ない救済措置として提供されています。しかし、実際の取得費が高額だった場合と比べると、課税額が大きくなり、税負担が増えるリスクが高くなります。
そのため、安易に「5%ルール」に頼らず、可能な限り資料を探し出し、実額ベースの取得費を確認することが重要です。例えば、市役所や法務局で登記簿や評価証明書を取得して確認する方法もあります。これにより、より正確な取得費を計上し、税負担を軽減することができます。
取得費がわからない場合に認められる資料・代替方法
取得費が不明であっても、税務署は「まったく証拠がない」とはみなさず、間接的な資料でも一定の合理性が認められれば対応してくれる場合があります。具体的には、以下のような資料を活用することができます。
1.取得費を証明するための資料例
2.古い売買契約書の控え
3.固定資産税評価証明書
4.登記簿の記録
5.銀行振込の履歴
不動産会社が作成した当時の売買チラシや広告
また、法務局や市区町村で取得できる不動産関連の公的資料も非常に有効です。特に、古い不動産でも役所の保存年限を過ぎていなければ、評価額や所有者の履歴がわかる書類を入手できることがあります。
これらの資料を使って取得費をできる限り具体的に推定することで、5%ルールを使うよりも有利な税額になる可能性があります。
税務署への対応
実際、取得費の証明には不確実な情報に基づくことになるため、相続問題に詳しい税理士に相談するのが確実です。取得費の算定は税務上の根幹に関わる重要な部分ですので、判断に迷ったときは専門家の助言を仰ぐことを強くおすすめします。
相続した土地を5年以内に売却するときによくある質問
相続した土地の売却には、税金や手続きの複雑さがつきものです。特に5年以内に売却を検討している方からは、「どこまで経費にできるか?」や「特例はどれを使えるか?」といった疑問が多く寄せられます。
この章では、よくある質問に焦点を当て、丁寧に解説します。
譲渡費用には何を計上できる?
相続した土地を売却した際に、譲渡費用として計上できる主な費用は以下の通りです。
- 譲渡費用として計上できる主な費用
- 売却時の仲介手数料
- 土地の測量費
- 自身が負担した印紙税
- 建物の取り壊し費用
さらに、相続した土地でない場合は、違約金や名義書換料も譲渡費用として計上することができます。
注意点
相続登記費用や維持管理費などは譲渡費用として認められません。これらの費用は経費として計上できないため、注意が必要です。
適切に譲渡費用を計上することで、譲渡所得税の負担を軽減できるため、売却時にはこれらの費用を正確に把握しておきましょう。
特例・特別控除は併用できる?
一部の特例や控除は併用が可能ですが、すべての制度が同時に適用できるわけではありません。特例と特別控除を併用できる場合とできない場合では、課税額に大きな差が生じるため、原則として併用ができないように調整されています。
しかし、例外的に一部の特例と特別控除は併用が可能なケースも存在します。そのため、どの特例や控除を併用できるかを確認することが重要です。
併用の可否を調べる場合は、税理士などの専門家に相談し、正確な判断を仰ぐことをおすすめします。
相続税に適用できる控除・特例は?
相続税には、複数の控除や特例が用意されており、要件を満たせば大幅な節税が可能です。これらの控除や特例を活用することで、相続税の負担を軽減することができます。
以下は、相続税に適用できる代表的な控除と特例のまとめです。
控除・特例の概要
| 控除・特例 | 概要 |
| 基礎控除 | ・すべての相続に適用される非課税枠 ・計算式:3,000万円 +(600万円×法定相続人の数) |
| 配偶者の税額軽減 | ・配偶者が相続する際に適用される ・1億6,000万円までの相続なら相続税がかからない |
| 小規模宅地等の特例 | ・対象となる宅地のみに適用される ・土地の評価額を最大80%下げられる |
| 未成年者控除 | ・20歳未満の相続人は年齢に応じて控除を受けられる |
| 障害者控除 | ・相続人が障害者の場合、年齢に応じて控除を受けられる |
代表的な控除・特例の詳細
・基礎控除(※1)
すべての相続に適用される非課税枠です。例えば、法定相続人が2人の場合、3,000万円 + 600万円 × 2 で、4,200万円までが非課税となります。
・配偶者の税額軽減(※2)
配偶者が相続する場合、1億6,000万円までの相続については相続税がかからないため、配偶者の相続分は大きく軽減されます。
・小規模宅地等の特例(※3)
被相続人の居住用地や事業用地について、評価額を最大80%減額することができる特例です。これにより、土地の評価額が大きく下がり、相続税の負担が軽減されます。
・未成年者控除(※4)
相続人が20歳未満の場合、その年齢に応じた控除を受けられます。これにより、未成年者が相続する場合の税負担が軽減されます。
・障害者控除(※5)
相続人が障害者である場合、その年齢や障害の程度に応じて控除が適用され、相続税の軽減が可能です。
注意点
適用には、居住状況や相続人の関係性など、厳格な条件があるため、要件をしっかりと満たすことが必要です。また、適用可能な控除や特例を見逃さないよう、事前に確認しておくことが重要です。
相続税に関する知識が不足している場合は、税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。専門家の助言を得ることで、最適な節税策を講じることができます。
▼参照元
・基礎控除:国税庁(相続税の計算)
・配偶者の税額軽減:国税庁(配偶者の税額の軽減)
・小規模宅地等の特例:国税庁(相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例)
・未成年者控除:国税庁(未成年者の税額控除)
・障害者控除:国税庁(障害者の税額控除)
金利の5年ルールは売却判断に関係ある?
住宅ローンの「5年ルール」とは、変動金利型ローンにおいて、最初の5年間は毎月の返済額が一定であることを指します。これは、金利が見直される前の期間に、返済額が予測しやすくなるための仕組みです。しかし、売却判断に直接的な影響を与えるものではありませんが、5年経過後に金利が上昇すると、ローン返済額が増える可能性があります。
売却時の注意点
売却を検討する際には、ローン残債と市場価格をしっかり確認し、オーバーローン(売却価格がローン残債を上回らない)にならないように注意が必要です。金利の上昇やローン返済額の増加に備え、売却前に十分な計画を立てることが重要です。
5年以内の売却における個人と法人の違いは?
個人が不動産を5年以内に売却すると、短期譲渡所得として扱われ、税率が**39.63%**と高くなります。これは、譲渡所得が短期間で得られた場合、その税負担が大きくなるためです。
一方、法人が不動産を売却する場合、譲渡所得ではなく法人税の課税対象となります。法人の実効税率は事業規模や所得金額によって異なりますが、通常、法人税の税率は個人の短期譲渡所得にかかる税率よりも低くなることが多いため、法人所有の不動産は5年以内に売却しても税負担が個人より軽減される場合があります。
そのため、法人で不動産を所有している場合、売却タイミングについて税負担の軽減を意識することが重要です。
まとめ
相続した土地の売却には、税金や手続きなど多くのポイントがあります。とくに、売却時期や所有期間によって税負担が大きく変わるため、事前に情報収集し、必要な準備を進めておくことが大切です。
また、特例や控除を活用することで、税金の負担を軽減できる場合もあります。自分の状況に合った方法を選び、専門家にも相談しながら、安心して土地の売却を進めていきましょう。
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