②不動産売却

不動産売却の流れは?必要書類やかかる費用を解説

所有している不動産の売却を考え始めたものの、何から手をつければ良いのか、どのような手続きが必要で、費用は一体いくらかかるのか、多くの疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

不動産売却は、人生でそう何度も経験することではないため、分からないことが多いのは当然です。しかし、売却全体の流れや必要書類、かかる費用について事前に正しい知識を身につけておくことで、焦らず、スムーズに、そして納得のいく価格で売却を進めることが可能になります。

この記事では、不動産売却の基本的な流れを7つのステップに沿って丁寧に解説し、売却時に必要となる書類や費用の一覧、さらには売却を成功させるためのポイントやよくある質問まで、網羅的にご紹介します。

監修者
宮原海斗

宮原海斗株式会社Gen’Z 代表取締役

宅地建物取引士/相談診断士

横田大樹

横田大樹株式会社Gen’Z 専務執行役

宅地建物取引士/相談診断士

不動産売却の流れ

不動産の売却は、専門的な知識も必要となるため、信頼できる不動産会社をパートナーとして見つけることが成功の鍵となります。一般的に、相談から売却、そして引き渡し完了までは、早くても3ヶ月、長い場合は1年以上かかることもあります。全体の流れを把握し、計画的に進めていきましょう。

STEP 1.売却の準備を行う

まず最初に行うべきは、売却に向けた準備です。最初に、売却したい不動産がどのくらいの価格で売れそうか、相場を自分なりに調べてみましょう。国土交通省が運営する「不動産取引価格情報検索」や、不動産情報サイト(SUUMO、HOME’Sなど)で、所在地や築年数、広さなどが似ている物件の売出価格や成約価格を調べることで、おおよその目安を把握できます。

次に、住宅ローンが残っている場合は、金融機関に連絡して残債額を確認します。売却価格でローンを完済できるかどうかが、売却計画の重要なポイントになります。

そして、売却に必要な書類を準備し始めましょう。特に「登記済権利証」または「登記識別情報通知書」は再発行ができない非常に重要な書類なので、どこに保管してあるか必ず確認しておきましょう。

STEP 2.不動産会社へ査定を依頼する

売却の意思が固まったら、不動産会社に物件の査定を依頼します。査定とは、その不動産がいくらで売れそうか、専門家に見積もってもらうことです。

査定方法には、物件の情報をもとに概算価格を算出する「机上査定(簡易査定)」と、不動産会社の担当者が実際に現地を訪れて、建物の状態や周辺環境などを細かく確認して価格を算出する「訪問査定」の2種類があります。より正確な売却価格を知るためには、訪問査定を依頼しましょう。

このとき、1社だけでなく、複数の不動産会社に査定を依頼する「相見積もり」が重要です。複数の会社の査定価格やその根拠、売却活動の方針などを比較検討することで、より良い条件で売却でき、信頼できる担当者を見つけることにも繋がります。

STEP 3.不動産会社が物件の調査を行う

訪問査定の依頼を受けると、不動産会社の担当者は、より正確な査定価格を算出するために詳細な物件調査を行います。

具体的には、法務局で登記情報を確認して所有者や権利関係を調査したり、役所で都市計画法や建築基準法などの法的な制限がないかを確認したりします。また、実際に物件を訪問し、部屋の日当たりや風通し、内装や設備の劣化状況、眺望などをチェックします。

さらに、周辺の類似物件の取引事例や市場の動向なども分析し、これらの情報を総合的に評価して、専門的な根拠に基づいた査定価格を算出します。この調査が、後の売却活動の基礎となる非常に重要なプロセスです。

STEP 4.不動産会社と媒介契約を結ぶ

査定結果や売却方針に納得でき、売却を任せたい不動産会社が決まったら、その会社と「媒介契約」を締結します。媒介契約とは、不動産の売却活動を不動産会社に正式に依頼するための契約です。

媒介契約には、以下の3つの種類があり、それぞれに特徴があります。

専属専任媒介契約

1社にのみ仲介を依頼する契約。自分で買主を見つけること(自己発見取引)はできません。不動産会社は、5日以内に物件情報を指定流通機構(レインズ)に登録し、1週間に1回以上の頻度で売主へ業務報告を行う義務があります。

専任媒介契約

1社にのみ仲介を依頼する契約ですが、自己発見取引は可能です。不動産会社は、7日以内にレインズへ登録し、2週間に1回以上の頻度で業務報告を行う義務があります。

一般媒介契約

複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる契約。自己発見取引も可能です。不動産会社側のレインズへの登録義務や業務報告の義務はありません。

どの契約形態を選ぶかによって売却活動の進め方が変わるため、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自身の状況に合った契約を選びましょう。

STEP 5.物件の売却活動を行う

媒介契約を締結すると、いよいよ本格的な売却活動がスタートします。不動産会社は、自社のウェブサイトや不動産ポータルサイトへの物件情報掲載、新聞折り込みチラシの配布、既存顧客への紹介など、様々な方法で買主を探します。

売主としては、購入希望者からの「内見(物件見学)」の申し込みに備えることが重要です。内見は、購入希望者が物件を直接見て購入を判断する大切な機会です。良い印象を持ってもらうために、事前に室内をきれいに掃除・整理整頓し、照明を点けて明るい空間を演出するなどの準備を心がけましょう。

内見当日は、不動産会社の担当者が案内や説明を行ってくれますが、売主として住み心地や周辺環境の魅力などを直接伝えることも、購入の後押しに繋がります。

STEP 6.売買契約を結ぶ

売却活動の結果、購入希望者が見つかり、価格や引き渡し時期などの条件交渉がまとまると、買主と「不動産売買契約」を締結します。

契約当日は、不動産会社の事務所などに関係者が集まり、まず宅地建物取引士から買主へ「重要事項説明」が行われます。その後、売買契約書の内容を売主・買主双方で確認し、署名・捺印を行います。

この際、買主から物件価格の一部として「手付金」(相場は売買価格の5~10%)を現金で受け取るのが一般的です。

契約が成立すると、以降は契約書の内容に基づいて権利と義務が発生します。自己都合で契約を解除する場合は、違約金が発生することになるため、慎重に手続きを進める必要があります。

STEP 7.物件の引き渡しを行う

売買契約を結んだ後、約1ヶ月~2ヶ月後に、残代金の決済と物件の引き渡しを行います。

決済日当日、買主、売主、不動産会社、司法書士が金融機関などに集まります。買主は売買価格から手付金を差し引いた残代金を売主の口座に振り込みます。住宅ローンが残っている場合は、この売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消する手続きを司法書士に依頼します。

着金が確認できたら、物件の鍵や関連書類(建築確認済証、設備の取扱説明書など)を買主に渡し、物件の所有権が買主に移転します。同時に、司法書士が法務局で所有権移転登記の申請を行います。以上をもって、不動産売却のすべての手続きが完了となります。

不動産を売却する際の必要書類

不動産の売却では、様々なタイミングで多くの書類が必要となります。事前に準備しておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。以下に主な必要書類をまとめました。

必要なタイミング書類名取得場所・備考
査定依頼・媒介契約時登記済権利証または登記識別情報通知書法務局(紛失時は司法書士に相談)
固定資産税納税通知書・課税明細書毎年4月~6月頃に市区町村から郵送
建築確認済証・検査済証自宅で保管(紛失時は役所で確認)
物件の図面(間取り図など)自宅で保管
本人確認書類(運転免許証など)
売買契約時印鑑証明書市区町村役場(発行後3ヶ月以内のもの)
実印
住民票市区町村役場(発行後3ヶ月以内のもの)
銀行口座情報
引き渡し時(決済時)登記済権利証または登記識別情報通知書
印鑑証明書市区町村役場(発行後3ヶ月以内のもの)
実印
物件の鍵
各種設備の取扱説明書・保証書自宅で保管

不動産売却を行う際にかかる費用

不動産売却では、売却代金がそのまま手元に残るわけではなく、税金や手数料などの費用がかかります。主な費用は以下の通りです。

費用の種類費用の目安支払うタイミング
仲介手数料(売買価格 × 3% + 6万円)+ 消費税 ※速算式売買契約時と引き渡し時に半金ずつ
印紙税売買価格により1,000円~6万円売買契約時
登記費用数万円~(抵当権抹消登記など)引き渡し時
譲渡所得税・住民税譲渡所得 × 税率(所有期間による)売却の翌年
その他引っ越し費用、ハウスクリーニング費用など適宜

特に仲介手数料は最も大きな支出となります。また、売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に確定申告を行い、譲渡所得税・住民税を納める必要があります。

売却の期間を短くする方法

不動産をできるだけ早く売却したい場合、いくつかの工夫が考えられます。

適正価格で売却する

売却期間が長引く最も大きな原因の一つが、相場とかけ離れた高すぎる売出価格です。早く売りたいのであれば、不動産会社の査定価格や周辺の取引事例を参考に、購入希望者が魅力を感じる「適正価格」で売り出すことが非常に重要です。少し欲張った価格設定が、結果的に売却を長期化させ、値下げを繰り返す悪循環に陥る可能性があります。

一般媒介で売却する

媒介契約の種類のうち、「一般媒介契約」を選択するのも一つの方法です。一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却活動を依頼できるため、各社が競い合って買主を探してくれる可能性があります。より多くの購入希望者の目に触れる機会が増えることで、早期売却に繋がるケースがあります。ただし、不動産会社によっては専任媒介契約に比べて積極的な広告活動を行わない場合もあるため、依頼する会社の選定が重要になります。

引っ越しシーズンを狙う

不動産市場には、取引が活発になる時期があります。一般的に、新生活が始まる前の1月~3月は、転勤や進学に伴う住み替え需要が高まるため、購入希望者が増える傾向にあります。この「引っ越しシーズン」に合わせて売却活動を開始することで、多くの内見者を呼び込み、早期の成約に繋がる可能性が高まります。

不動産売却を行った年は確定申告が必要

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に、税務署で「確定申告」を行う必要があります。

譲渡所得は以下の計算式で算出されます。

譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)

  • 取得費: 物件の購入代金や購入時の仲介手数料などから、建物の減価償却費を差し引いたもの。
  • 譲渡費用: 売却時の仲介手数料や印紙税など。

この譲渡所得に対して、物件の所有期間に応じた税率で所得税・住民税が課税されます。

一方で、マイホームを売却した場合には、「3,000万円の特別控除」や「所有期間10年超の軽減税率の特例」など、税金の負担を大幅に軽減できる特例が用意されています。これらの特例を適用するためにも確定申告は必須です。たとえ売却によって損失が出た場合でも、確定申告をすることで税金の還付を受けられるケース(損益通算・繰越控除)があるため、必ず手続きを行いましょう。

不動産売却に関してよくある質問

ここでは、不動産売却を検討している方が抱きがちな、よくある質問にお答えします。

Q1.ローンが残っていても売却できる?

はい、住宅ローンが残っている状態でも不動産を売却することは可能です。ただし、「引き渡し時まで」にローンを全額返済し、金融機関が設定している「抵当権」を抹消する必要があります。

一般的には、物件の売却代金を受け取るのと同じタイミングで、そのお金を使ってローンを完済し、抵当権抹消手続きを行います。売却価格がローン残債を下回る「オーバーローン」の状態でも、自己資金で差額を補填できれば売却は可能です。まずは金融機関にローン残債がいくらあるかを確認することから始めましょう。

Q2.売却前のリフォームは必要?

必ずしもリフォームが必要というわけではありません。買主によっては、購入後に自分の好みに合わせてリフォームやリノベーションをしたいと考えているケースも多いため、多額の費用をかけてリフォームしても、その費用を売却価格に上乗せできるとは限りません。

ただし、壁紙の剥がれや水回りのひどい汚れなど、明らかに印象を悪くするような部分的な補修や、専門業者によるハウスクリーニングは、内見時の印象を良くし、早期売却に繋がる効果が期待できます。リフォームを行うかどうかは、費用対効果を考え、不動産会社と相談しながら慎重に判断しましょう。

Q3.売却活動は住みながらでもできる?

はい、多くの方が自宅に住みながら売却活動を行っています。空き家の状態で売却するのに比べて、住みながら売却するメリットとデメリットがあります。

メリットは、引っ越しのタイミングを売却が決まってから決められるため、仮住まいの費用や二重の家賃負担が発生しない点です。デメリットは、内見のたびに日程調整や室内の片付けが必要になることや、生活感があることで買主が購入後のイメージをしにくい場合がある点です。スケジュール管理やプライバシーの面で負担はありますが、不動産会社と協力しながら進めれば、十分に可能です。

不動産売却の7つの流れを理解して計画的に進めよう

本記事では、不動産売却の基本的な流れから、必要書類、費用、そして売却を成功させるためのポイントやよくある質問まで、幅広く解説しました。

不動産売却は、売却準備から始まり、不動産会社選び、媒介契約、売却活動、売買契約、そして引き渡しという7つのステップで進んでいきます。特に、信頼できる不動産会社をパートナーに選ぶことが、納得のいく売却を実現するための最も重要な要素と言えるでしょう。

また、売却には仲介手数料や税金などの費用がかかること、売却で利益が出た場合は翌年に確定申告が必要であることも、資金計画を立てる上で忘れてはならないポイントです。

これから不動産売却を始める方は、まずこの記事で解説した全体の流れを把握し、複数の不動産会社に査定を依頼することから始めてみてください。しっかりと準備をし、信頼できるパートナーと協力することで、きっと満足のいく不動産売却が実現できるはずです。

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