④不動産相続

不動産の相続税評価額の計算方法は?減額できるケースも解説

不動産を相続する際は、相続税の計算基準である「相続税評価額」を理解することが大切です。

この記事では、相続税評価額の基本的な計算方法や、評価額を減額できるケースを解説します。

これから不動産の相続を考えている方や、すでに相続した不動産の評価額を見直したい方は、ぜひ参考にしてください。

不動産の相続税評価額とは?

相続税評価額は、相続税の計算における基準です。ここでは、3つの評価基準を解説します。

  • 路線価方式
  • 倍率方式
  • 固定資産税評価額

それぞれ見ていきましょう。

路線価方式

路面価方式とは、土地が面する道路に設定された価格を基に評価する方法です。路線価は、国税庁から毎年発表される、土地の価値を道路単位で示す価格です。一般的に地価公示価格の約8割程度に設定されています。以下に計算式と計算例をまとめました。

計算方法路線価 × 土地面積 × 補正率
計算例路線価:50万円土地面積:100㎡補正率:0.9相続税評価額:50万円 × 100㎡ × 0.9=4,500万円

補正率は、土地の形状や奥行きなどに応じて異なるため、国税庁の路線価図で確認が必要です。詳細は、国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」に掲載されています。

参考|国税庁「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」

倍率方式

倍率方式は、路線価が設定されていない土地に適用される評価方法です。固定資産税評価額に特定の倍率を掛けて算出します。この倍率は、国税庁が毎年公表する倍率表で確認でき、地域によって異なります。以下に計算式と計算例をあげました。

計算方法固定資産税評価額 × 倍率
計算例固定資産税評価額:2,000万円倍率:1.1相続税評価額:2,000万円 × 1.1=2,200万円

この方法は、おもに市街化調整区域や郊外の土地に適用されます。

市街化調整区域とは、都市計画において市街化を抑制するために指定された区域です。郊外は住宅や農地が広がる地域のため、多くの場合、路線価が設定されていません。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、市区町村が総務大臣の基準に準じて決定される固定資産税の課税基準です。建物の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま使用するのが一般的です。納税通知書や課税明細書に記載されているので、チェックしましょう。

なお、この評価額は3年に1度見直されるため、最新の情報を基に正確な相続税評価額を算出することが重要です。詳細は、固定資産税評価証明書や名寄帳で確認可能です。

固定資産税評価証明書は土地や建物の評価額を証明する書類で、市区町村の窓口で取得できます。名寄帳は、所有者ごとに不動産の一覧をまとめたもので、どの不動産を所有しているかを確認できる台帳です。

相続した土地の評価の流れ

適切な手順を踏むことで、正確な土地の相続税評価額を算出可能です。これにより、相続税負担の対策を立てられます。ここでは、4つの手順を解説します。

  • ステップ①路線価地域と倍率地域のどちらに該当するか確認する
  • ステップ②評価減が可能か確認する
  • ステップ③賃貸されているかどうかを確認する
  • ステップ④小規模宅地等の特例を適用できるか確認する

順を追って見ていきましょう。

ステップ①路線価地域と倍率地域のどちらに該当するか確認する

相続した土地が路線価地域か倍率地域かを確認するには、国税庁のホームページを利用します。以下に確認手順をまとめました。

  1. 国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のページにアクセスする
  2. 該当する都道府県と市区町村を選択し、路線価図を検索する

路線価図に土地の所在地が記載されている場合、その土地は路線価地域に該当します。もし記載がない場合は、倍率地域となります。

ステップ②評価減が可能か確認する

土地の形状や立地条件によっては、評価減が適用されるケースがあります。以下に、評価減が適用される具体的な例をまとめました。

適用例詳細
奥行きが長すぎる土地土地の奥行きが過剰で、利用が制限される
不整形地土地の形がいびつで、正方形や長方形でない
前面道路が狭い道路幅が狭く、車の出入りが困難
地積規模が大きい土地広大な土地で、分割が難しい
利用価値が低下している土地周辺環境により利用が制限される

上記の確認手順は以下のとおりです。

  1. 土地の形状や立地条件を現地で確認する
  2. 国税庁の路線価図や評価倍率表を参照し、評価減の基準を確認する
  3. 各条件に該当するかをリストアップする
  4. 不明点や評価が難しい場合は、税理士や不動産の専門家に相談する
  5. 必要に応じて詳細な資料を用意し、専門家と一緒に評価減の適用を検討する

これらの手順を踏むことで、評価減の可能性が高まります。

ステップ③賃貸されているかどうかを確認する

賃貸されている土地は、所有者が自由に使用できないため、相続税評価額が減額される可能性があります。評価額は、借地権割合や賃貸割合を考慮して算出されます。

なお、賃貸されているかどうかは、以下の4つの方法で確認可能です。

方法詳細
契約書土地に関する賃貸契約書を確認する
不動産管理会社管理を委託している場合は、賃貸状況の詳細を問い合わせる
現地調査実際に土地を訪れ、使用状況や賃貸の看板・掲示物があるか目視する
登記情報法務局で登記情報を取得し、賃貸に関する記録がないか確認する

上記の手順により賃貸の有無を把握し、評価額を調整しましょう。

ステップ④小規模宅地等の特例を適用できるか確認する

小規模宅地等の特例は、被相続人が居住していた宅地や事業用の宅地を相続する際に適用され、評価額を最大80%減額することが可能です。

特例の適用には、一定の条件を満たす必要があり、条件により限度面積と減額割合が異なります。以下に適用例をまとめました。

  • 居住用宅地:被相続人が住んでいた宅地で、相続人がそのまま居住する
  • 事業用宅地:被相続人が個人事業主や法人として事業を行っていた宅地で、相続人が事業を継続する
  • 貸付用宅地:被相続人が賃貸アパートや駐車場に利用していた宅地で、相続人が賃貸事業を続ける

この特例を利用することで、相続税の負担の大幅な軽減が可能です。詳細要件は国税庁の資料を参考にしてください。

参考|国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

相続した建物の評価の流れ

相続した建物の評価額を把握することで、正確に相続税を計算できます。ここでは、具体的な2つの確認手順を紹介します。

  • ステップ①固定資産税評価額を確認する
  • ステップ②賃貸されているかどうかを確認する

それぞれ見ていきましょう。

ステップ①固定資産税評価額を確認する

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額を基に決定されます。この評価額は、毎年4月頃に送付される固定資産税課税明細書に記載されています。

この書類を確認することで、建物の評価額の把握が可能です。もし課税明細書を紛失した場合は、市区町村の窓口で取得できます。

また、分譲マンションの評価方法が改正されている場合は、最新の情報を確認する必要があります。詳細は、地方自治体の主税局のホームページを参照するとよいでしょう。

参考|東京都主税局「固定資産税・都市計画税 課税明細書」

ステップ②賃貸されているかどうかを確認する

相続した建物が賃貸されているか否かは、評価額を調整するうえで重要です。賃貸されている場合、借家権割合や賃貸割合を考慮して評価額が減額されます。

借家権割合は、建物を賃借している人がもつ権利の割合で、一律30%です。賃貸割合は、建物の床面積に対する賃貸部分の割合を指します。

確認方法を以下にまとめました。

  1. 賃貸契約書を確認する
  2. 建物の管理会社に問い合わせる
  3. 現地調査を行う

上記の手順により賃貸状況を正確に知れるため、評価額の適切な調整が可能です。

相続税評価額を減額できるケース

特定の条件を満たすことで、評価額を抑えられます。ここでは、具体的な減額のケースをまとめました。

  • 借地権が設定されている
  • 貸家建付地である
  • 土地の面積が大きい
  • 土地の条件が悪い
  • 小規模宅地等の特例が利用できる

それぞれ見ていきましょう。

借地権が設定されている

借地権とは、他者が土地を借りてその上に建物を建てる権利です。借地権が設定されていると、所有者でも土地を自由に使用できません。借地権が設定されている土地は、相続税評価額が低くなる場合があります。

算出方法は以下のとおりです。

相続税評価額=自用地の価額 × (1 – 借地権割合)

借地権割合は地域によって異なり、国税庁の路線価図で確認できます。土地を借りている場合は賃貸契約書を確認し、借地権の設定状況を調べることが重要です。

貸家建付地である

貸家建付地とは第三者に貸すための自用地で、賃貸物件が建っている土地のことです。自由に売却したり更地にしたりできないため、相続税評価額が抑えられる傾向にあります。
計算方法は、以下のとおりです。

相続税評価額=自用地の価額 – (自用地の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

借地権割合や借家権割合は地域によって異なり、賃貸割合は賃貸部分の専有面積によって算出されます。賃貸契約書や不動産管理会社の情報を確認し、適切に評価額を調整しましょう。

土地の面積が大きい

広い土地を相続する場合、特定の条件を満たすことで相続税評価額が抑えられる場合があります。この条件を満たす土地を「地積規模の大きな宅地」と呼びます。

三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1000㎡以上の土地が対象です。ただし、市街化調整区域や工業専用地域は除外されるため、土地の場所や容積率の確認を要します。

地域の都市計画情報をチェックし、土地が条件に該当するかどうかを調べることが大切です。

土地の条件が悪い

形状がいびつであったり、間口が狭かったりする土地などが該当します。このような土地は利用が制限されるため、評価額が調整されます。評価額の計算式は以下のとおりです。

相続税評価額=自用地の価額 × 補正率

補正率は、土地の形状や間口の広さなどに基づいて決定されます。土地の形状や立地を現地で確認し、適切な補正率を適用することで、相続税評価額の正確な調整が可能です。国税庁の路線価図で補正率を把握し、計算に活用してください。

小規模宅地等の特例が利用できる

小規模宅地等の特例は、一定の条件を満たすことで相続税評価額を最大80%減額できる制度です。特例を利用するには、以下の手順で確認しましょう。

手順詳細
国税庁の資料を参照最新の適用条件を確認する
該当する宅地の種類を特定相続する宅地が「居住用」「事業用」「貸付用」のいずれに該当するかを特定する
条件の詳細を確認各宅地の種類に応じた詳細な条件を確認する(例)居住用宅地の場合、相続人が引き続き居住する必要があるなど
必要書類の準備登記事項証明書や住民票の写しなど
専門家への相談税理士などの専門家に相談する

上記の手順により、小規模宅地等の特例を利用し、相続税評価額を大幅に減額することが可能です。

参考|国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

まとめ

不動産の相続税評価額の計算方法を理解し正しく計算することで、相続税の負担を軽減できます。

相続した不動産を適切に評価するには、路線価や固定資産税評価額の確認や賃貸状況、特例の適用可否の調査が必要です。これらの手順を踏むことで、相続税の負担を最小限に抑えられます。

不動産の相続を検討中の方は、評価額の見直しや最適な対策を打つための参考にしてください。

>>株式会社Gen’Zに問い合わせる

TOP