②不動産売却

不動産売却にかかる税金のすべて|計算方法・節税対策・確定申告の流れを解説

不動産を売却したときに思ったよりも手元に残るお金が少なかった、という話を耳にしたことはないでしょうか。その大きな要因となるのが「税金」です。

譲渡所得税や消費税など、売却時には複数の種類の税金が発生する可能性があります。
しかし、それらの仕組みを理解して適切な対策を行うことで、税負担を抑えることもできます。

本記事では、不動産売却に関わる税金の種類や計算方法、さらに節税につながる特例や確定申告の手続きなどを詳しく解説します。はじめて不動産を売却する方はもちろん、これから売却を検討している方にも役立つ内容です。ぜひ参考にして、余計な負担を避けながらスムーズな売却を進めてみてください。

監修者
宮原海斗

宮原海斗株式会社Gen’Z 代表取締役

宅地建物取引士/相談診断士

横田大樹

横田大樹株式会社Gen’Z 専務執行役

宅地建物取引士/相談診断士

不動産売却にかかる税金とは?

まずは不動産売却時のかかる税金について解説していきます。

不動産売却時に発生する主な税金

不動産売却を行うと、売却益(譲渡所得)が生じた場合に譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は「所得税」と「住民税」をあわせたものを指し、さらに場合によっては「復興特別所得税」も加算されます。

また、業務として不動産を売却するなど一部の状況では、売却代金に対して消費税が発生することもあります。
基本的には、個人が自宅や投資用マンションを売却して利益を得た場合に課されるのは譲渡所得税・住民税・復興特別所得税です。

これらの税率や計算方法は所有期間や売却価格によって異なるため、個々のケースに応じて正確に算出する必要があります。

どんな場合に税金が発生する?

税金が発生するのは、不動産を売却した結果「譲渡益」が出たときです。具体的には、「売却価格」から「取得費」や「譲渡費用」などを引いた残りの金額(=譲渡所得)がプラスになった場合に課税対象となります。

一方、損失が出た(売却価格が取得費などより低い)場合は、譲渡所得がゼロまたはマイナスのため、基本的には税金はかかりません。

ただし、損失が出たケースでも一定の特例を活用すれば他の所得から控除できる場合があるため、最終的な納税額は状況によって変化します。この点を見落とさないよう注意が必要です。

譲渡所得税の計算方法とポイント

不動産売却時の譲渡所得税は、譲渡所得に税率を掛け合わせて計算します。ここでは計算式や主な留意点を紹介します。

譲渡所得の基本計算式

譲渡所得は以下の式で算出します。

譲渡所得=譲渡価格−(取得費+譲渡費用)

譲渡価格とは売却代金のことで、取得費と譲渡費用を差し引いた残りがプラスなら課税対象になります。
この譲渡所得に対して、所有期間に応じた税率(所得税+住民税+復興特別所得税)が適用されます。

取得費とは?

取得費は、不動産を購入したときの購入代金や仲介手数料、登録免許税、不動産取得税などを合わせた金額です。リフォーム費用など資本的支出に該当するものも取得費に加算できます。

ただし、減価償却が可能な建物の場合は、経過年数に応じて減価償却額を差し引き、取得費を計算する点に注意が必要です。

譲渡費用とは?

譲渡費用は、不動産を売却するときに直接かかった費用を指します。具体的には仲介手数料や印紙税、測量費、建物の解体費用、立退料などが該当します。

宣伝広告費用も場合によっては含まれますが、売却に直結するものに限られる点を理解しておきましょう。

所有期間による税率の違い

所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」と、5年を超える「長期譲渡所得」では税率が大きく異なります。

  • 短期譲渡所得:所得税30%+住民税9%+復興特別所得税(上記所得税額の2.1%)
  • 長期譲渡所得:所得税15%+住民税5%+復興特別所得税(上記所得税額の2.1%)

このように、長期譲渡所得のほうが税率が低いため、可能であれば所有期間が5年を超えてから売却を検討するほうが税負担が軽くなる傾向にあります。所有期間は売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで判断されることもポイントです。

実際の税金シミュレーション

たとえば、所有期間5年超の不動産を3,000万円で売却し、取得費が2,000万円、譲渡費用が50万円だとします。

譲渡所得 = 3,000万円 -(2,000万円 + 50万円)= 950万円
長期譲渡所得に対しては、所得税15%・住民税5%・復興特別所得税(所得税の2.1%)が課税されます。

たとえば、譲渡所得が950万円の場合、税額は以下のように計算されます。

  • 所得税:950万円 × 15% = 142.5万円
  • 復興特別所得税:142.5万円 × 2.1% ≒ 2.99万円
  • 住民税:950万円 × 5% = 47.5万円

以上より、合計の税額は約193万円となります(概算)。

なお、3,000万円の特別控除などの特例を利用できるケースもあり、そういった場合は実際の納税額がさらに少なくなる可能性があります。

不動産売却時に活用できる節税対策

税額を抑えるための特例や控除制度がいくつか存在します。
これらを適切に活用することで、大幅に税負担を軽減できるケースもあります。ただし、各特例には適用要件があるため、条件を満たさないと利用できない点に注意しましょう。

3,000万円特別控除の特例

マイホーム(居住用財産)を売却したとき、譲渡所得から最大3,000万円まで控除が受けられる制度です。

所有期間の制限はありませんが、売却した年の1月1日で居住用物件であること、過去2年間に同特例を使っていないなどの要件が設けられています。

これにより、大半のケースで課税対象となる譲渡所得を大きく減らせます。

10年超所有の軽減税率の特例

居住用不動産を10年以上所有している場合、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について、さらに低い税率が適用される特例です。

長期譲渡所得の税率(所得税15%、住民税5%)よりも軽減されるため、大幅な節税が期待できます。ただし、3,000万円特別控除と併用する場合は計算ルールが複雑になるため、注意が必要です。

空き家売却時の特例

一定の要件を満たす空き家を売却した場合、3,000万円の特別控除が適用されます
具体的には、昭和56年5月31日以前に建築された戸建住宅であることや耐震基準を満たすことなどが要件として挙げられます。

空き家問題を解消するために設けられた特例で、該当する場合は大幅な減税を見込めます。

関連記事:空き家の売却方法とは?売却する際の注意点も解説

買い替え特例の活用

居住用財産を売却して新たに買い替えを行う場合、買い替え特例の適用により譲渡所得税の支払いを繰り延べられる制度があります。しかし、買い替え先の金額が売却額より小さいときの扱いや、一定年数以内に新居を取得しなければいけないなど、細かな条件があるため、要件をよく確認する必要があります。

譲渡損失が出た場合の特例

売却価格が取得費や譲渡費用を下回り、譲渡損失となる場合も特例が用意されています。たとえば住宅ローンが残っている居住用不動産を売却して損失が出た場合、ほかの所得と損益通算し、その年で控除しきれなかった損失を翌年以降に繰り越すことが可能です。これにより、将来的に所得税や住民税の節税が見込めるケースがあります。

相続した不動産の売却と税金

相続により取得した不動産を売却する場合も、基本的には通常の譲渡所得税がかかります。しかし、相続独自の特例や注意点があります。

関連記事:土地相続をしたくない!相続放棄の方法を紹介

相続税の取得費加算の特例

相続により不動産を取得した場合、「相続税の取得費加算の特例」を利用できる可能性があります。

これは、相続時に支払った相続税の一部を取得費に加算できる制度です。譲渡所得を小さくする効果があり、結果的に納める税金を減らすことができます。

ただし、適用できるのは被相続人が亡くなった日から3年10か月以内に売却する場合などの条件があります。

関連記事:土地の相続に関する完全ガイド|手続き・費用・税金・注意点を徹底解説

相続した不動産の売却シミュレーション

たとえば、相続した土地を4,000万円で売却し、取得費や譲渡費用などの合計が3,000万円だとすると、譲渡所得は1,000万円です。

通常ならこの1,000万円に対して譲渡所得税がかかりますが、相続税の取得費加算が数百万円相当含まれると、実質的な譲渡所得が下がるため、納付税額を抑えられます。

特例は個別条件が多いため、専門家に相談して適用可能性を確認しましょう。

関連記事:相続した土地は3年以内に売却するべき?節税方法や売却の注意点を徹底解説

確定申告の流れと注意点

不動産を売却した年の翌年には、原則として確定申告を行い、譲渡所得にかかる税金を納める必要があります。ここでは大まかな流れを解説します。

確定申告が必要なケース

売却により譲渡所得が発生した場合(=利益が出た場合)は、確定申告が義務付けられています

一方、損失が出た場合でも特例を使うなら申告が必要です。
課税対象外となる場合(たとえばマイホームの3,000万円特別控除だけで全額が差し引かれ税額がゼロになるケース)でも、控除を受けるためには申告が必要となります。

申告手続きの流れ

申告手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 書類準備:売却した不動産の譲渡価格や取得費、譲渡費用などを証明する書類を集める。相続の場合は相続登記関連の書類も用意
  2. 申告書の作成:国税庁のサイトや税務署で入手した申告書に必要事項を記入。特例を受ける場合は別途書類が必要
  3. 提出・納付:原則として翌年2月16日~3月15日の期間に税務署へ提出。窓口持参、郵送、e-Taxなど方法は複数あり

関連記事:不動産を売却する際に必要な書類と準備するタイミングを解説

よくある失敗と対策

次の、確定申告におけるよくある失敗例とそれらへの対策を紹介します。

  • 取得費用の計上漏れ:リフォーム費や手数料など、本来は取得費に含められるコストを見逃すと、税額が不当に高くなる
  • 特例の誤適用:適用要件を満たさないのに3,000万円控除などを使ってしまうと、後で追徴課税のリスク
  • 申告期限の遅れ:期限を過ぎると加算税や延滞税がかかる。早めに準備を始めることが重要

【FAQ】不動産売却の税金に関するよくある質問

次に、不動産売却時の税金に関して寄せられることの多い質問と回答を紹介します。

不動産の売却に消費税はかかる?

個人が自宅や投資用物件を売却する場合、一般的には消費税は課されません。ただし、宅地造成や建築を行って不動産業として売却するケースなど、事業として認められる場合には課税対象となることがあります。

譲渡所得が年収に影響する?

譲渡所得は、給与など他の所得と合算されません。分離課税となり、独立した税率で課税されるため、年収による所得税率には直接影響しません。ただし、住民税の計算や各種控除の判定に影響が及ぶ可能性はあるため、詳細は税理士や自治体に確認すると良いでしょう。

確定申告しないとどうなる?

不動産売却で譲渡所得があるにもかかわらず確定申告を行わないと、後から税務署の調査などを受け、追徴課税や延滞税が課されるリスクがあります。また、本来受けられる特例(3,000万円控除など)を適用できず、結果的に損をするケースも多いです。

【まとめ】不動産売却にかかる税金

不動産売却には、譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別所得税)が主に関わり、所有期間や居住用の特例などによって税額が大きく変わります。

売却価格から取得費・譲渡費用を差し引いた額がプラスの場合に課税対象となりますが、3,000万円特別控除や10年超所有での軽減税率などの特例をうまく活用すれば、大幅に税負担を減らせる可能性があります。

また、相続した不動産を売却する場合にも、取得費加算などの特例が存在し、さらにお得になる場合があります。確定申告の時期や手続きは制度上厳格に定められており、申告漏れ・計上漏れ・特例の誤適用には注意が必要です。

スムーズかつ確実に手続きを進めるには、税理士や不動産会社などの専門家の力を借りるのが理想的です。とりわけ、大きな金額が動く不動産売却では、正確な情報を集めて計画を練り、適切なタイミングで申告や納税を行うことが欠かせません。

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