②不動産売却

自宅売却の流れを7つのステップで解説

住み替えやライフステージの変化に伴い、大切に住んできた自宅の売却を考え始めたとき、何から手をつければ良いのか分からず、不安を感じる方は少なくありません。売却価格はいくらになるのか、手続きは複雑ではないか、費用はどのくらいかかるのかなど、疑問は次々と湧いてくることでしょう。

自宅の売却は、多くの方にとって初めての経験であり、そのプロセスは専門的な知識を要する場面も多いため、戸惑うのは当然です。しかし、事前に売却の全体像、つまり「流れ」を把握しておくことで、一つひとつのステップに落ち着いて対応でき、納得のいく取引を実現することができます。

本記事では、自宅の売却の流れを7つのステップに分け、初心者の方にも分かりやすく解説します。さらに、売却にかかる費用や必要書類、そして失敗しないための重要な注意点まで、自宅売却に関する情報を網羅的にお届けします。

監修者
宮原海斗

宮原海斗株式会社Gen’Z 代表取締役

宅地建物取引士/相談診断士

横田大樹

横田大樹株式会社Gen’Z 専務執行役

宅地建物取引士/相談診断士

自宅を売却する際の方法

自宅を売却するには、主に「仲介」「買取」「個人間売買」の3つの方法があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況や希望に合った方法を選ぶことが大切です。

仲介

「仲介」は、不動産会社に売主と買主の間に入ってもらい、買主を探してもらう最も一般的な売却方法です。不動産会社は、物件の広告活動や購入希望者の募集、内見の対応、契約条件の交渉、契約書の作成といった専門的な業務を代行してくれます。

メリットは、市場価格に近い、なるべく高い価格での売却を目指せる点です。デメリットとしては、買主が見つかるまでに時間がかかる可能性があり、売却期間が不確定であること、そして売買契約が成立した際には不動産会社に仲介手数料を支払う必要がある点が挙げられます。時間をかけてでも、少しでも高く売りたいと考えている方に適した方法です。

買取

「買取」は、不動産会社に直接、自宅を買い取ってもらう方法です。不動産会社が買主となるため、広告活動などを行って一般の購入希望者を探す必要がありません。

最大のメリットは、売却までのスピードが非常に速いことです。「すぐに現金化したい」「近所に知られずに売りたい」といった場合に適しています。また、買主がプロであるため、売却後の契約不適合責任(後から見つかった欠陥に対する責任)が免除されるケースが多いのも利点です。一方で、買取価格は市場価格の7割~8割程度になるのが一般的で、仲介に比べて売却価格が安くなるというデメリットがあります。

個人間売買

「個人間売買」は、不動産会社を介さずに、知人や親族などと直接売買契約を結ぶ方法です。最大のメリットは、仲介手数料がかからない点です。

しかし、この方法は専門家が間に入らないため、非常に大きなリスクを伴います。適正な売買価格の設定が難しいほか、契約書の作成や住宅ローンの手続き、登記手続きなどを全て自分たちで行わなければなりません。特に、物件に後から欠陥が見つかった場合の責任の所在などで、深刻なトラブルに発展する可能性が非常に高いです。よほど不動産取引に精通している場合を除き、避けるのが賢明な方法と言えるでしょう。

自宅を売却する際の流れ

ここでは、最も一般的な売却方法である「仲介」を前提に、自宅売却の具体的な流れを7つのステップで解説します。

相談から引き渡し完了までの期間は、一般的に3ヶ月から半年程度が目安ですが、物件によっては1年以上かかることもあります。

①売却する自宅の相場を調べる

売却活動を始める前に、まずは自分の家がどのくらいの価格で売れそうか、おおよその相場を把握することが重要です。相場を知ることで、今後の資金計画が立てやすくなるだけでなく、不動産会社が提示する査定価格が妥当かどうかを判断する基準にもなります。

相場の調査方法としては、SUUMOやLIFULL HOME’Sといった不動産ポータルサイトで、自宅と似た条件(エリア、広さ、築年数、間取りなど)の物件がいくらで売りに出されているかを調べるのが手軽です。より実態に近い成約価格を知りたい場合は、国土交通省が運営する「不動産取引価格情報検索」や、不動産流通機構が運営する「レインズ・マーケット・インフォメーション」といったサイトで、過去の取引事例を調べることもできます。

②不動産会社に査定を依頼する

おおよその相場を把握したら、次に不動産会社に物件の査定を依頼します。査定とは、不動産のプロが専門的な知見から、より正確な売却見込み価格を算出してくれる作業です。

査定には、物件情報をもとに算出する「机上査定(簡易査定)」と、実際に現地を訪問して物件の状態を確認する「訪問査定」があります。本格的に売却を検討するなら、より精度の高い訪問査定を依頼しましょう。

このとき、1社だけでなく、必ず複数の不動産会社(3社~6社が目安)に査定を依頼することが成功の鍵です。複数の査定結果を比較することで、より客観的に自宅の価値を判断できますし、査定価格の根拠や担当者の対応、販売戦略などを比較し、信頼できるパートナーを見つけることができます。インターネットの「不動産一括査定サイト」を利用すると、一度の入力で複数の会社にまとめて依頼できるため効率的です。

③不動産会社と媒介契約を結ぶ

査定結果や担当者の提案内容などを比較検討し、売却を任せたい不動産会社が決まったら、その会社と「媒介契約」を結びます。これは、売却活動を正式に依頼するための契約です。

媒介契約には、「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があります。

  • 専属専任媒介: 1社にのみ依頼。自分で買主を見つけること(自己発見取引)も不可。不動産会社の報告義務が最も手厚い。
  • 専任媒介: 1社にのみ依頼。自己発見取引は可能。
  • 一般媒介: 複数の会社に同時に依頼できる。

どの契約を選ぶかは、売却戦略に大きく関わります。1社に集中して手厚いサポートを受けたいなら専任系、多くの会社にアプローチして広く買主を探したいなら一般媒介、といったように、それぞれのメリット・デメリットを理解して選びましょう。

④売却活動を始める

媒介契約を締結すると、不動産会社による本格的な売却活動がスタートします。不動産ポータルサイトへの掲載、チラシの配布、指定流通機構(レインズ)への登録などを通じて、購入希望者を探します。

売主が主に行うことは、購入希望者からの内見希望に対応することです。内見は、買主が購入を最終判断する非常に重要な機会です。良い印象を持ってもらうために、事前に室内をきれいに掃除・整理整頓しておくことが大切です。

特に、水回り(キッチン、浴室、トイレ)や玄関は清潔感が重視されます。当日は、室内の照明をすべて点灯し、カーテンを開けて明るい空間を演出しましょう。

⑤買主と売買契約を結ぶ

購入希望者が見つかり、価格や引き渡し時期などの条件がまとまったら、買主と「不動産売買契約」を締結します。
契約に先立ち、宅地建物取引士から物件に関する重要な情報を説明する「重要事項説明」が行われます。その後、売買契約書の内容をお互いに確認し、署名・捺印します。この際、買主から手付金(売買価格の5~10%程度)を受け取ります。

売買契約が成立すると、契約内容に法的な拘束力が生じます。これ以降、正当な理由なく契約を解除する場合には、手付金を返還したり、違約金を支払ったりする必要があるため、契約内容は十分に確認し、納得した上で臨むことが重要です。

⑥自宅の引き渡しと決済を行う

売買契約後、買主は住宅ローンの本審査などを進めます。契約時に定めた引き渡し日(通常は契約から1~2ヶ月後)が来たら、残代金の決済と物件の引き渡しを行います。

当日は、買主、売主、不動産会社、司法書士が金融機関などに集まります。買主から売買価格から手付金を差し引いた残代金を受け取り、同時に、司法書士が所有権移転登記の手続きを行います。住宅ローンが残っている場合は、この売却代金で一括返済し、抵当権の抹消登記も行います。

全ての手続きが完了したら、買主に自宅の鍵を渡し、取引は完了です。

⑦確定申告を行う

自宅を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年に確定申告を行い、所得税・住民税を納める必要があります。

ただし、マイホームの売却には「3,000万円の特別控除」をはじめとする税金の特例が多数用意されています。これらの特例を適用することで、税金の負担がゼロになるケースも少なくありません。特例の適用を受けるためには、利益が出ていなくても確定申告が必要ですので注意しましょう。また、売却によって損失が出た場合でも、確定申告をすることで税金の還付を受けられる場合があります。

自宅を売却する際にかかる主な費用

自宅を売却する際には、売却代金から差し引かれる様々な費用がかかります。主な費用を把握し、資金計画を立てておきましょう。

仲介手数料

不動産会社に支払う成功報酬で、費用の中で最も大きな割合を占めます。法律で上限が定められており、速算式「(売買価格 × 3% + 6万円)+ 消費税」で計算されるのが一般的です。

印紙税

不動産売買契約書に貼付する収入印紙代です。契約金額によって税額が異なり、例えば1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円です(2027年3月31日までの軽減措置適用後)。

譲渡所得税

売却によって利益(譲渡所得)が出た場合に課される所得税・住民税です。税率は家の所有期間によって異なり、5年を超えると税率が約半分になります。

抵当権抹消費用

住宅ローンが残っている場合に、抵当権を抹消するための登記費用です。登録免許税(不動産1個につき1,000円)と、手続きを依頼する司法書士への報酬(数万円程度)がかかります。

その他の費用

上記以外にも、状況に応じて引っ越し費用、ハウスクリーニング費用、残置物の処分費用、隣地との境界を確定させるための測量費用などが必要になる場合があります。

自宅を売却する際に必要な書類

自宅の売却では、各ステップで様々な書類が必要になります。事前に準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。

査定を依頼する際に必要な書類

より正確な査定をしてもらうために、以下の書類があると便利です。

  • 登記済権利証 または 登記識別情報通知書
  • 固定資産税納税通知書
  • 間取り図、測量図
  • 建築確認済証、検査済証

自宅を引き渡す際に必要な書類

引き渡し(決済)時には、本人確認と所有権移転のために以下の書類が必須です。

  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 実印
  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 住民票(発行後3ヶ月以内のもの)
  • 登記済権利証 または 登記識別情報通知書

自宅を売却する際の注意点

最後に、自宅売却で後悔しないために押さえておくべき重要な注意点を4つご紹介します。

注意点①依頼する不動産業者を査定価格だけで判断しない

複数の不動産会社に査定を依頼すると、各社から異なる査定価格が提示されます。しかし、最も高い査定額を提示した会社が、必ずしも最も良い会社とは限りません。中には、媒介契約を結びたいがために、意図的に相場より高い査定額を提示する会社も存在します。

重要なのは、「なぜその査定価格なのか」という根拠を明確に説明してくれるかどうかです。査定額の根拠、担当者の知識や人柄、販売戦略などを総合的に比較し、信頼して売却を任せられるパートナーを見極めましょう。

注意点②適正価格で売り出す

少しでも高く売りたいという気持ちから、相場よりも高すぎる価格で売り出してしまうと、購入希望者から敬遠され、内見の申し込みすら入らない「売れ残り物件」になってしまうリスクがあります。売れ残りが長期化すると、何度も値下げを繰り返すことになり、最終的に相場より安い価格でしか売れなくなるという悪循環に陥りかねません。

不動産会社の査定価格や周辺の相場を参考に、適正な価格で売り出すことが早期売却・高値売却の鍵です。

注意点③設備の不具合は修理する

給湯器やエアコン、雨漏りなど、家に不具合がある場合は、事前に不動産会社に正直に伝えましょう。不具合を隠して売却し、引き渡し後に発覚した場合、買主から契約解除や損害賠償を請求される「契約不適合責任」を問われる可能性があります。

可能であれば売却前に修理しておくのが理想ですが、費用がかかる場合は、不具合があることを買主に告知し、その分価格交渉に応じるなどの対応が必要です。誠実な対応が、後のトラブルを防ぎます。

注意点④住宅ローンが完済できるかどうかを確認する

住宅ローンが残っている自宅を売却する場合、引き渡し時までにローンを全額返済する必要があります。売却価格がローン残高を上回る「アンダーローン」であれば問題ありませんが、下回る「オーバーローン」の場合は、差額を自己資金で用意しなければなりません。自己資金で補填できない場合は、原則として売却することができません。まずはローン残高を正確に把握し、査定価格と照らし合わせて完済できるかを確認することが、売却の前提条件となります。

自宅売却の流れを把握し公開のない売却を

自宅の売却は、相場調査から始まり、不動産会社への査定依頼、媒介契約、売却活動、売買契約、引き渡し、そして確定申告という7つのステップで進んでいきます。この一連の流れを事前に理解しておくことで、各段階で何をすべきかが明確になり、落ち着いて手続きを進めることができるでしょう。

また、売却には仲介手数料や税金などの費用がかかること、様々な書類が必要になることも念頭に置き、計画的に準備を進めることが大切です。そして、最も重要なのは、査定価格の高さだけで判断するのではなく、親身になって相談に乗ってくれる、信頼できる不動産会社をパートナーに選ぶことです。

この記事で解説した流れと注意点を参考に、情報収集と比較検討をしっかりと行い、あなたの大切な自宅の売却を成功させてください。

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